7/11〜7/20

11日


休憩が必要だ。僕はすぐに、そう判断した。

進むスピードをどんどん緩めていき、疾走から、早歩き。早歩きから、徒歩。

やがて辿り着く、僕の休憩所。

そこはいい所だ。ただ太陽の光を、邪魔だと遮るんじゃない。木々の隙間から、僕に光をもたらす。

ここは、なーんでも受け入れてくれる場所。


「休憩所」

Day11「緑陰」




12日


深緑と黒のコントラスト。目に強い色だ。見ていて、思わずクラクラしてしまう。そんな果物……いや、これは野菜だったか。とにかくそれを、君が持ち帰ってきた。近所の人から貰ったそうだ。このご時世、近所付き合いが残るのは、人柄のいい君らしい。

何とか包丁で切り分ける。中の赤もだいぶ煩い。


「コントラスト」

Day12「すいか」




13日


アレを探していた。たかが数十円のアレである。だがアレがないと、君に届かない。

仕方ない。買いに行くか。そう思い始めたところで、ようやく見つかった。舐めて、貼って、手紙の完成。


向かったのは、黒い石の箱。その前に置いて、手を合わせる。

貼らなくてもいいのに、なんて君が笑った気がした。


「僕は律儀なんだ」

Day13「切手」




14日


こんなに暗く、一人ぼっちの夜は、泣きたい心地がした。

外に出たかったわけじゃない。家にいたくなかったんだ。パパとママは僕を心配してるかな?

その時後ろから、ひた、と音がした。おばけかな?読んだ本を思い出して、震え上がっちゃうけど……でも、誰もいないより、ずっとマシだった。


「ひとりよりふたり」

Day14「幽暗」




15日


私の中のコップは、もう表面張力が掛かるくらい満杯でした。

コップには、私の感情がたんまりと詰まっておりました。しかしそれを決して倒さぬよう、私は細心の注意を払っていたのです。

しかし貴方は、それを倒してしまわれました。貴方のせいです。満杯のコップも、私が感情を曝け出すのも、全て!!


「我慢の限界」

Day15「なみなみ」




16日


この体は、もう動かない。

限界なんだ。

手も足も、言うことを聞かない。貴方を前にして、何も出来ない。

ああ誰か、この体に油を差してください。貴方の所へ今すぐ駆け出さなくちゃ。

滑らかに動く心だけが先走る。

酷く固まってしまった体がそれを拒む。

油は自分で、用意できないから。どうか誰か。


「勇気」

Day16「錆び」




17日


それはとても忌々しい。どれだけ振り払いたくても振り払えない。そんな、呪い。

これがあるということだけで、一瞬で全て色を、意味を、失くす。

人生で初めて貰うプレゼントというのが、これか。吐き気がする。

それでも不思議だ。貴方が私を呼ぶだけで、それは呪いから宝物になってしまうのだから。


「貴方のくれた宝物」

Day17「その名前」




18日


青くなんてなかったよ。そんなに単純じゃない。俺たちの関係は……「青かった」なんて、そんな一言で説明できない。

もっと色んな色が混ざって、ぐちゃぐちゃで、汚いんだ。一色じゃない。様々な色が、織り合って。

それでもあの日を思い出すと、語ろうとすると、「青かった」と言ってしまうのだろう。


「色が織り合う青」

Day18「群青」




19日


カランカラン、と、入店を示すベルの音が響く。こっちだよ、と手をあげると、君は僕に気づいて駆け寄ってきた。

すかさず近寄ってきた店員に、君はアイスティーを注文。それを見守る僕。

アイスティーが運ばれると、君は髪を耳にかけて飲み始めて。


カランカラン。と、僕の飲み物の中で音がする。


「恋の始まりのベルが鳴る」

Day19「氷」




20日


脇目も振らず、歩き続ける。いつもより足早に。すれ違う人に、何も気づかれぬように。目頭が熱い。ふとした瞬間に涙が零れそうで、ぐっと力を入れて、堪えた。

顔を上げる。そこには大きな雲があった。青を覆う、白。夏といえば、という感じだ。ああでも、もうすぐ雨が来るのか。丁度いいや。


「全て覆い隠してしまえ」

Day20「入道雲」

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