起点-14

 屋垣が逮捕されたその夜、黒道は六本木ヒルズにあるオフィスで一人震えていた。

 優とは昨日から連絡が取れず、今日も屋垣に連絡を取ろうとするも連絡が付かなくなっていた。

 もしかして、逮捕されたのか。

 そうなると自分が逮捕されるかもしれないと思うと一日、震えが止まらなかった。

 そんな折、寅三郎と翔が訪ねてきた。

「どうも、黒道さん」

 寅三郎が挨拶する。

「俺を、逮捕しようっていうのか?」

「そうです。死体遺棄の容疑、凶器準備集合罪の容疑です」

 翔は、黒道に罪状を伝える。

“物語の佳境に出て来たナレーションば~い!

読者の皆さんに凶器準備集合罪について説明するわ。

凶器準備集合罪とはね、早い話が人に危害を加える為に、武器を用意した際に適用される法律ばい。

なんか適当で、ごめんちゃい。

つまりはね、優の武器を用意していたのは黒道やったという事やね。

では、本編どうぞぉ~”

「と言っても、今日はご挨拶。

後、総長だったら優に協力した人達に覚悟しとけよって伝えといておけよ。

じゃあ、行こうか」

「はい」

 そのまま踵を返すようにしてオフィスを去ろうとする二人。

 すると、机の引き出しからトカレフTT-33を取り出し二人に向ける黒道。

「死ねぇ~!!!」

 黒道が引き金を引くと同時に振り返った寅三郎はコルトM19 11 A1マークⅣの引き金を引く。

 黒道の撃った弾は、二人の間を掠めて壁にめり込む。

 寅三郎の鳥モチ弾は黒道の顔面一杯に広がり、椅子に崩れ落ちる。

「なあ、これって正当防衛だよな」寅三郎が翔に確認する。

「いいえ、過剰防衛です」

「そう。でもこれ、小説だし。ま、いっか」

 銃をガンホルダーにしまいながら翔に理解を求める。

「ですね」

 寅三郎と翔は黒道を連れて、ヒルズを後にした。


捜査7日目

「いやぁ~よくやったよ。新人にしては上出来」

 翔にサムズアップして褒め称える大藤課長。

「ありがとうございます。と言いたいことですが、一番の功労者は寅さんです」

 いつも通り、ソファーに座って珈琲を飲む寅三郎に翔は目を向ける。

「そうなのか。寅?」課長が寅三郎に話を振る。

「いやいや、課長さんの部下が優秀なだけです」寅三郎は謙遜する。

「そうか。あ、そうだ。寅、報酬の件だけどね」

 課長のその一言にピクリと反応し、ソファーから勢い良く立ち上がり課長のデスク前に立つ。

「課長、今回から報酬アップということでありがとうございます」

 お辞儀をし、お礼を言う寅三郎。

「それなんだけどね。鳴本君と話し合ってね。

前回の報酬カットの件を撤回!そんで、今回の報酬も支払うということで決まったから。

アップの件は立ち消えになったから宜しく」

「ええ、そんなぁ~俺の努力がぁ~」

 ショックのあまりゆっくりと課長のデスクにもたれかかる寅三郎であった。

 その後、加藤 一輝及びその両親殺害容疑で黒道、屋垣、優の他数名のイエローリボンのメンバーが送検され、現在、公判準備中だ。

 そして、加藤さんの遺骨は恋人の桂田 麻衣が引き取ることとなり、息子の魁君にも父親のことを話したらしい。

「真相を突きとめてくれて、ありがとうございました」

 遺骨引き取りの際、麻衣からその一言を聞けた翔は嬉しくなった。

 自分の刑事人生で一生忘れない言葉になるだろうと翔は思うのだった。

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