File No.04:ゼッセイ巨乳美女ルリナとの出会い

 ――ここは、何処……?

 そうか、ここが英雄都市『ブレイドピア』なのね……


 西洋のような古風ながらも暖かな雰囲気を醸し出す街並み……中々良いじゃない。


 そして私は、誰……?

 異世界転生した花の美少女、石ケ谷ヒロミ。

 ――うん、問題なし。


 でも一つ問題なのが……


「お腹すいて、力出な~い!!」


 空腹のあまり倒れたまま動けなかったこと。

 これは開始早々大ピンチだよー! 腹が減っては戦もおっぱいも大きく出来やしない!!



 はぁ~……こんな事してる間にも、意識がまたしても遠退く。このままあたしは何も出来ずにまた死んじゃうのかな……?

 短い間『トクサツ転生少女ヒロミ!』を御愛読頂きありがとうございまし………



『ちょっと!? 大丈夫ですか!!?』


 ハッ!? あの声は、この世界の救世主のあたしを助けにきた救世主!! ……ややこしいな。

 おぉ女神か天使か、あたしの元へ大急ぎで駆け寄っていくぅ! 何やら買い物袋を両手で抱えている様子を見るに、お出掛け途中の様子であった。いやぁかたじけない……


 ――――ガッ!!


「きゃっ!!?」


 向かってくる女神が道端の窪みにつまずき、あたし目掛けて突っ込み倒れていく!



 ……あれ? 妙に顔と顔が急接近しているような……って、これはまさか!?



 ――ぷちゅ~っ★

 ――むにゅ~っ☆



 ………OH、何ということでしょう。


 あたしの口元に柔らかいカスタードプリンのような甘く切ない感触。

 そしてあたしの胸元に押し付けられているのは、優しく包み込むマシュマロ………


 もう、お分かり頂けただろうか。


 女神が仰向けで横たわるあたしに目掛けて、身体ごと倒れて込んだのだった。

 だがあたしは全然痛くはない。優しいキッスとパイコンタクトのおまけ付き。


 そして何より………幸せだぁ♡♡


「――――ハッ!? ごめんなさい!! 私としたことが転んじゃって……」

 彼女は赤面になりながら、恥じんであたしに謝罪をした。


「いやいや、だいじょびだいじょび。むしろあたしの方が貴方にラッキースケベのお礼を……」

「え??」


「いや!! その……初めて人に出逢えたから……

 ―――ねぇ、何か食べ物無い!? お腹すいて死にそうなの……」

「……あ、空腹だったんですか! お気の毒に、ちょっと待ってくださいね」


 彼女は買い物袋からガサガサと何かを取り出した。


「リンゴ!!」

「あの、これしか無いですけど、それで宜しければ――――」


 ――ガシッ!!!


 もうあたしにはイエスと言うほどの余裕は無かった。余りにも空腹で、リンゴを見るや否やガツガツとあっという間に食べきった。

 空腹は最高の調味料と言うけど、これほど極限状態で食べ物を頬張ったのは、記憶の限りではこれっきりであろう。


「ふわぁ~生き返った!! 助かったぁ~!!!」


 そしてこの時ほど、生きてるって素晴らしいと思った事は無かった!!


「ふふっ、良かったですわ。元気になれて!」


 彼女は嬉しそうに優しい笑顔をあたしに振り撒いた。

 彼女が居なかったら、あたしは本当に二度も終わっていたかもしれない。謂わば命の恩人なのだ。


 そこであたしもキリッと真剣な目で彼女にこう言った。


「助けてくれて本当にありがとう! この御恩は絶対に忘れないよ!! ――あの、貴方のお名前教えても良いですか……?」


「私はルリナ、ルリナ・グリーンリバーですわ」

「ルリナちゃんね! あたしは石ケ谷ヒロミ!! 縁があったらまた会いましょ!!」


「イシガヤヒロミ……えぇ、またお会いしましょう!」


 黒髪と緑のドレス姿に凛々しい笑顔、そしてたわわに実ったおっぱい……(咳払い)


 そんな『ゼッセイ巨乳美女』のルリナちゃんに、あたしはこの瞬間心にときめいたのだった。



「……ステキダナァ――☆☆」


 ☆★☆★☆★


 ――さて、元気になったは良いものの、これからどうしようか?


 宿屋に止まるにしてもその場しのぎ、食べ物もこの先供給しなければいけない。

 この先行動していかないと八方塞がりになるばかりだ。


 ――あれ? ズボンのポッケを探ってみると、キューブの結晶が。これは……トクサツール! そっか!!


 このトクサツールを使って、自分で家を造れば良いんだ!!


 何かこの街並みで空き家は無いかな……


 ――あった。萎びているけど立派なポツンと空き家。見つけないと話が進まないもん。


「トクサツール!!」


 あたしがツールを天に投げると、瞬時に便利な道具へと変化した!!


「『トクサツール・主人公にぴったりな家を改築する工具セット』!!」


 ………まんまじゃん。しかしただの工具セットと舐めちゃいけない。


 その工具セットの箱を開けたとたん……


 ――バララララ!!

 ――トンテン、カンテン、トンテンカン!!


 あたしが作業しようとする間もなく、ひとりでに工具達が自動で作業をし初めて……


「すごーい! 出来たーーー!!」


 煉瓦で構築されたレトロモダンな2階建ての一軒家にあっという間に改築していった! 何でもありってホントに便利よね~!


 家の中を覗いてみると……


「……うわぁ、広い厨房! それにテーブルもいっぱい、飲食店でも出来そうね」

 自動設定とはいえ、ここまで優雅で広い空間に仕上げるとは思ってもみなんだ。


 そこで、あたしはピーン☆と閃いた。


「そうだ! この家を使ってを開こう!!」


 実はあたしは紅茶とかコーヒーとか、喫茶店に必要なノウハウは何故か最初から頭に入っていた。

 だから素人でもそれなりにコーヒーは淹れられるし、お菓子も本格的にクッキングが出来る。


 あたし、炊事洗濯出来ないドジっ子設定じゃなくて良かったぁ……!


「さて、店の名前はどうしようか……?」


 なんて呑気に考えてた、その矢先――!


 ――バタンッ!!


「助けて下さいッッ!!!」

「!?」


 いきなし何だ!? って、あーー!!


「あれ、ルリナちゃん!?」

「え……あ、ヒロミさん!!」


 驚いた! あたしの店の最初のお客さんはルリナちゃんだ!! ……まだオープンしてないけど。

 でも彼女の様子が少しおかしい。


「どうしたの? そんなに慌てて……」

「………すみません、ここに匿わせて下さい! 悪いやつに追われてるんです!!」


 ルリナちゃんの心境からみて、かなりヤバイと睨んだ私は直ぐに承諾した。


「……分かったわ。取り敢えず2階で隠れてて、あたしが誤魔化しとくから」

「はい!!」


 ルリナちゃんは急いで2階に隠れさせた。

 さて、悪いやつってのはどんなのだろうか……? あたしは玄関前で無知を装い構える。


 ――バタンッッ!!


 ……来た!!


「ニィィィィ!!」


 ………嘘ん。

 入ってきたのは覆面と全身黒タイツの

 テレビの特撮でしか見た事無かったけど、生戦闘員は初めて見たわ!!



「オイ貴様! ここに女が来なかったか?」


 来た来た、単純な脅迫。


「……あたし花の二十歳だから分かんなぁい☆☆」


「嘘つけ! こんなちんちくりんが二十歳な訳無いだろ、精々16くらいだ!」


 ……何でJKと同じ扱いされてんだろ。それは誉めてんの、貶してんの、どっちなの??


「怪しいな、オイ! 2階を調べろ!!」


 ――ヤバいッッ!!

 あたしは必死に止めようとしたけど、戦闘員達はドカドカと2階へ強引に上がっていく。そして……


「見つけたぞ! 小娘が!!」

「イヤァァ!! 離して!!!」


 戦闘員達はルリナちゃんを引きずり下ろしながら強引に連れていこうとする。何て乱暴な奴等なの!!


「ちょっと待ちなさいよ! 何でルリナちゃんを連れてこうとするのよ!?」


 あたしは戦闘員に思い切って言い放ってやったわ。でも返ってきたのは、予想通りの悪役台詞だった。


「決まっている! 我々『ジャックス』に必要の無い人間だからだ!! 例え女であろうと、我々の邪魔をする奴は殺す!!!」


「離して!! 助けてェ!!!」


 ……そうか。あの連中にこの世界が支配されて、今もこうして人々を泣かせてきているのね……!!

 そしてあたしの恩人であるルリナちゃんも泣かせた!! あたしの怒りは爆発寸前!!



「おのれェ………ゆ゛る゛ざん゛ッッ!!!!!」



 怒りを込めてぶち当たるように、トクサツールが天を舞う!!


「トクサツールッッ、レー◯ーブレード!!」


 瞬時に変化したのは剣、あたしはそれを手に取り、切っ先を撫でると同時に青白く刃が光った!


 そして戦闘員達に――――ぶった斬る!!



「ヒロミちゃん・ダイナミック!!」


「ニィィィィィィィィィィ!!!」


 戦闘員達を一掃、一刀両断!! トクサツールの力思いしったか!!!


 あたしはトクサツールを元のキューブに戻した。


 それを茫然と見ていたルリナちゃんは目を丸くしながらあたしに話しかけた。


「ヒロミさん……貴方は一体――!?」


 いくら女神でも異世界の力を見せ付けたこの状況は理解し難い。よーし、思い切って言ってやろう!!



「あたしはこの世界を守るために英雄の力を持つ特撮……んにゃ。―――『トクサツ少女』石ケ谷ヒロミよ!!」


「トクサツ少女――!!」


 その時、ルリナちゃんは目を輝かせてあたしの手を握った。


「ヒロミさん! 私もお供させて下さい!!」

「………ふぇ!?」


「私は確信しました! 貴方こそこの英雄世界を救う救世主だって!!

 私、ヒロミさんの力になりたい! そのためなら命だって掛けますわ!!」


「うーん………」


 私は困惑した。

 いくら命の恩人とは言えども当人に命は掛けてほしくはない。当たり前よ!


「あの、私……実はこんなものをさっきの組織から奪ってきたんです」

「マイクロチップ――?」


「これにはこの英雄を封印した鍵のデータが埋め込まれています。恐らくこのチップを解読出来れば……」


「この世界の英雄を解放出来る……!!」


 何という急展開だ! この世界を救うキーアイテムがルリナちゃんの元にあるなんて!!

 だったら尚更……ルリナちゃんを守るしかないじゃない!!!



「……分かったわ! 二人で一緒にこの世界を救いましょう!!」

「はい、ヒロミさん!!」


 ――かくして、トクサツ少女とゼッセイ美女の黄金コンビが、ここに誕生したのだった!!


「それと……お供する理由はもう一つ」

「??」


 あれ、顔が急接近してない? ルリナちゃん!?


「………あのキスの味を知ってから、ヒロミさんが好きになっちゃって――♡」


 ――チュッ☆


 フォォォォオオオオオオオッッ!!!!

 まさかの相思相愛だとぉぉぉぉぉぉ!!!!?



 ……ってな事で、あたし達女同士で愛し合うコンビになりました。

 そしてこの件に因んで、喫茶店の名前も……



 の意味を込めて『リリィ』に決めた話である。



 ☆★☆★☆★


「―――というのが、あたし達の回想!」

「随分長かったですね、2話連続で」

「余計な事言わないの」


 ――でもお客さんは少ないものの、お陰さまで喫茶店の売り上げと、後から立ち上げた探偵稼業もあって何とか二人で食べていけてます。転生当初はお騒がせしました!


 ……あ、もう一つ解決しなきゃいけないことがあったんだった。


「それよりも、ルリナちゃんのマイクロチップ、早く解読しなくちゃね……」

「そうですね、『W.I.N.D』の人にでも頼みましょうか?」

「タケルんとこに? 大丈夫かな……」



 ところがあたし達の心配を他所に、悪の組織側は次なる作戦を企てていた!



 ――――不吉なコウモリの牙が、貴方の後ろから襲いかかる!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る