終話 そして、問題は続く

 帰り際、車の中で英知さんが話しかけてきた。


「まさか今の代議士を衆議院に留まらせて、秘書を参議院にいれようとは。大胆な策を取りましたね」

「後援会に英知さんがいるなら可能でしょう」

「資金面では困らないのですが」

「いえ、そういうことを言っているのではなくてですね、米国の政治広告会社との繋がりありますよね? 英知さん」

「……先生って本当に何者ですか?

「変わり者の牧師ですかね」

「なるほど、あなたが深淵教会に派遣された訳が少し分かりましたよ。少なくとも只者ではないのですね」

「いえいえ、僕自身は凡庸の輩ですよ」


 まだ英子さんの謎も解き明かせていないしね、と小声で呟いた。


「何か仰りましたか?」

「いえいえ、秘書の方が無事当選する様に祈っていただけですよ」


 それにしても自分には奇妙な巡り合わせがまわってくるものだ。


 さて、帰ったら何て英子さんに報告しようかな。


 そう思い教会に着くと美しい令嬢が敷地内にいた。


「ええと、どちら様ですか?」

「申し遅れました。私、今まで欠員教会員だった菊と申します。祖母がいつもお世話になっております」

「お祖母さん?」

「英子と言う名ですが」


 ああ、何となく納得した。物腰の優雅さが英子さんに似ている。


「これから宜しくお願い致します。婚約者として」

「はい?」

「祖母が決めてしまったんです。私を牧師先生に捧げるって」


 頭がクラクラしてきた。


 どうやら又問題が浮上した様子だ。


 この話は又後日にしよう。今日の問題はこれでお終いだ。


                ―了―

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探偵牧師物語 その弐 佐藤子冬 @satou-sitou

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