第10話 男女のマッチング作戦

 呂青は一計を案じた。


 若手とされる人材を客人として招く。

 その様子を呂蓮にこっそり観察させるのだ。


 話のネタに身の上話を混ぜておいた。

 呂蓮でも相手の人となりが分かるだろう。


「叔父殿の様子はどうですか?」

「最近は特に元気ですよ。若い者には負けてられないと張り切っております」


 今話しているのは王淩おうりょうである。

 王允の甥っ子であり、将来は大臣になることが期待されている。


「久しぶりに并州へ帰ったそうですね」

「ええ、親戚の冠婚葬祭です。あまり滞在することなく帰ってきましたが。太原も以前より活気が戻ってきました」

「そうですか。私も并州に帰りたいのは山々ですが、今年は難しそうです」

「呂青殿は特に忙しいですからね」

「はああ……」


 王淩が帰っていった。

 呂青は隣の部屋をのぞき、どうだった? と問いかける。


「王淩殿は優秀な方だとお見受けしました」

「そうだろう。并州の若手の中では出世頭と目されている」

「ですが、生真面目なところが気になります。妥協を許さない性格に思えます。仕事ができる反面、押し付けがましい部分があるでしょう」

「ふむ……」


 呂蓮の指摘は、たぶん正しい。


 王允と王淩は少し似ている。

 頭でっかちな部分とか。


「もっと物腰の柔らかい方がいいです。私と話しても王淩殿は退屈されるでしょう」

「分かった。次の客人を招待してくる」


 呂青はリストをめくる。

 次の名前は郭淮かくわいだった。

 これも并州人である。


 郭淮は王淩より若い。

 官界に出てきたばかりで特筆すべき実績もない。


「郭淮殿はどういうお方でしょうか?」

「実は俺もよく知らない。軽く挨拶したことしかない」


 呂蓮がリストの一点を気にする。


「并州人なのですね。なら期待できます」

「そんなことを言ったら王淩殿だって并州人だ」

「違います! 王淩殿は并州人らしくなかったのです!」


 手をブンブンさせる呂蓮。


「何か不満な点があったのか?」

「王淩殿は并州の田舎っぷりを笑っていました。そして并州を称える言葉は一度も聞かれませんでした。そういう人は外でも身内の悪口を言うでしょう。いずれ人間関係で大失敗します」

「へぇ〜、蓮には人を見抜く目があるかもしれない」


 さすが呂布と英姫の娘だな、と感心する呂青であった。

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