第7話定例会②(side 伊織)

「……ごめん」

「……えっ?」

 僕はこの場にいるのが耐えきれなくなり、話しかけてきたクラスの子を振り切って、逃げるようにその定例会から抜け出した。もちろん、後ろで待機していた担任の先生にも保健室に行くと伝えてからその場を後にした。

 僕はその場から少しでも早く遠ざかるように走った。

 僕がクラスの子に引きずられるように連れて来られていることに、全く危機感が働かなかったのは、あの香りのせいだ。獅子堂が持つ、真紅のバラを瓶いっぱいに詰めたような強烈な香り。僕はその香りに誘われるように、あの場へ導かれてしまっていたんだ。

 あのまま定例会にいたら、やばかった。精神的にも、身体的にも、堕ちていた。

 あの香りをずっと吸い込んでしまうのは危険だと察知した瞬間、無我夢中で足を動かして走った。

 目には見えない香りから、どうやって逃げられるのかはわからないが、鼻が感じ取ってしまわなくなるまで、心臓の動機が治まるまで必死に走った。

 

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