第4話〜新たなるヒーロー、登場〜


 シャロールの家の周りに、スライムの軍団が現れた。


「兄ちゃん……! 大変だよ……!」


 ルナが震えながらボクにしがみつく。


 スライムどもはひたすらシャロールの家に体当たりを続ける。家の中が揺れ、棚の中の食器がガチャガチャと音を立てている。

 ボクは窓を叩くスライムの表情をよく見てみたが、何かに追われているような、張り詰めた表情をしている。スライムどもからは、悪意は感じられなかった。

 耳を澄ませていたシャロールが言う。


「……スライムたち、悪い人に追い詰められて助けてって言ってる……私に、助けを求めてきたみたい……!」

「何だと⁉︎」


 スライムどもは悪いニンゲンに追われ、魔物と話が出来るシャロールのとこへ助けを求めてきやがったのか。


 窓の外——遠くに目をやると、1人のニンゲンの男がジッとこっちを見ていた。

 黒い鎧に身を包んだ、ガタイのいい男だ。片方の口角をあげ、ニヤニヤと笑みを浮かべながらこっちを見ている。間違いねえ、アイツがスライムたちを追い詰めた悪い奴だ。


「あ……あの人が……魔物を無差別に殺す団体〝マゴッツ〟のボス、クリス……」


 窓の外を見たシャロールが、そう呟いた。


 クリスという男の周りには、20体ほどのカエルのような形のロボットがガシャガシャと音を立てて飛び跳ねていた。ロボットの体のには1つ砲台がついていて、そいつらが飛び跳ねながらシャロールの家に迫ってくる。

 街のヒトたちが逃げ惑っている様子も見える。


「スライムどもめぃ、追い詰めたぞ。行け、フレイム・トードたちよ! その家ごと、火炎放射で焼き払えぃ!」


 クリスの声が、窓の外から響いてきた。飛び跳ねていたカエルのようなロボットが、砲台を一斉にこっちに向ける。震え上がるスライムたち。な……何てことしやがるんだ!

 勇者である、シャロールの旦那の佐藤とかいう奴は留守だし、ボクは転身の仕方を忘れちまったし、この場に戦える奴はいねえ。

 どーすんだ……このままだとボクらまで丸焦げにされちまう。


 ——そうだ! アイツを呼ぼう!


「ミランダ! 出てきてくれ‼︎」


 ミランダというのは——。

 前の冒険で出会った、風の精霊だ。行ったことのある場所ならどこでもワープできる〝ワープゲート〟を作り出せる、羽の生えたチビの女の子だ。


 かつてボクが共に戦った〝星猫ホシネコ戦隊コスモレンジャー〟の仲間たちを、ミランダの〝ワープゲート〟で、ここに呼び寄せるんだ。


『久しぶりじゃない! ゴマくん!』


 空中に黄金色の光が集まり、風の精霊ミランダが現れた。耳がとんがってて、羽が生えた妖精みたいな奴だ。緑色の薄手の服を着ている。

 ボクはすぐさま、ミランダに頼み込んだ。


「ミランダ、窓の外を見ろ。この状況だ。あと1分も経たねえうちに、あの変なカエルみてえなロボットの火炎放射でボクらは丸焦げにされちまう。星猫戦隊コスモレンジャーの誰でもいい。暇な奴を今すぐ呼んでくれ!」


『ゴマくん戦えばいいじゃない! 前みたいに最強になって!』


「ボク、転身の口上を忘れちまったんだ!」


『もー、ゴマくん、最強の勇者だったんだから、もっとしっかりしなきゃ! えっと……じゃあ、最近新しく入ってきたこの子はどうかしら! えいっ‼︎』


「ん? それは星猫戦隊コスモレンジャーに新入りが来たってことか? いつの間に⁉︎」


 床に、丸い形をした虹色の光が現れ、天井に向かって輝きを放ち始める。

 そこに、1匹のネコの影が見えた。

 光が薄らいでいくと——。


 白の空手着に黒帯をしめた、薄水色の体毛のネコが現れた。

 そいつは高速でひたすらパンチを繰り出していたが、ボクらに気づくと慌ててキョロキョロと周りを見る。


「な⁉︎ ここは何処だ⁉︎ オレはどうしちまったんだ⁉︎ シャドートレーニングの最中だったのに!」


 ミランダはウインクしながら、紹介した。


『星猫戦隊コスモレンジャーの熱血武闘家、ソアラくんよっ!』

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