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 指を差している方向を見て、しまったと叫びそうになった。

 彼らが見た方向、それはヒュウガの隣に座り込んでいた少年の存在。

 彼らの反応を見て思い出したが、あの"ウワサ"があった少年だった。

 ヒュウガは彼らほど気にもしてなかったため、時間が経つと共にすっかり忘れていたが、それが仇となってしまった。

 まずい。非常にまずい。


「ヒュウガ、オマエっ! そんなヤツを匿っていたのかよ!」

「あの"ウワサ"のこと、話しただろっ! そんなヤツといたら、面倒なことになるぞ!」


 早く報告しろ、匿っていたことがバレるとオマエまで連行されかねないぞ、などと、青ざめたままわーわー騒いでいた。

 やはり、面倒なことが起きたか。

 騒いでいるヤツを見ると、かえって冷静になるらしい。少しずつ頭が冷えていくのを感じながら、二人をじっと見据えた。

 あの時、信じてない言い方をしてなかったか? 他の死神と大差がないと笑っていなかったか?

 あれらは全て、内心酷く怖がっていたのを誤魔化すための嘘だったのか。

 そう思った途端、冷えていった頭が沸騰しそうなほど、血が上っていく感覚があった。

 それが頂点に達した時、気づけば、「オマエらッ!」と怒鳴っていた。


「"ウワサ"だが何だか知らねーが、言っていいことと悪いことがあるだろうーが! テメェなんて、他の連中と大差がねーって、笑っていやがったじゃねーが! なんだよ、内心ビビっていたのかよ!」

「べ、べつにビビってなんか·····」

「はぁ? 声がちっせーわ! オマエらに何言われようが、オレはコイツとはダチなんだ。どんなことがあっても、コイツのことを信用してやるし、助けてやるんだっ」


 一気に捲し立てたものだから、その場の勢いで言ってしまったところがあるが、この際どうでもいい。目の前にいる二人が黙ってくれれば。

 しかし、怒ると体力は使う。肩で息をしているのだから。

 まだ何か言おうとしている友人らを無言で睨みつけると、怯んで一歩も動けずにいる友人らに舌打ちをし、震え上がっている少年の腕を掴むと、共に家へと入って行った。

 入った直後、手を離すと、やっとの足取りでその少年はさっさと部屋へと入って行くのを、ただ見ていた。

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