第13話/体育祭:中編・いっぱい入ったぁ♡

それから、綱引きやダンス対決で盛り上がり、一度昼休憩に入った。

 みんなが外や屋上で食べる中、俺と大河はあえて誰も居ない教室にやってきた。


「午後最初の種目ってなんだっけ」

「全学年女子だけの玉転がしかな? その次は二年生の棒倒しだったかな」

「んじゃ、俺達はしばらく応援だけか」

「うん! それより、怪我とかしてないの?」

「俺も詩音も大丈夫だった」

「よかった!」


話しながら食事をしていると、校内放送が流れ始めた。


「午前の部の合計ポイントを発表します。紅組、百八十ポイント。白組、百九十ポイントになります。みなさん、午後も頑張りましょう!」

「午前で百超えるって、最大何ポイントなんだろうな」

「決まってないんじゃない? なにかがキッカケで一発百ポイントとかあるかもよ!」

「それはそれで面白いな」

「借り物競走とか」

「やめろ!」

「あはは! ごめんごめん!」


こんな調子で雑談しながら昼ごはんを食べ終わり、そのタイミングで俺に二周連続を押し付けた生徒が教室にやってきた。


「居た居た! はい、約束のジュース!」

「おっ、ありがとう」


あれ本当だったのか。スポーツドリンク助かるな。





そんなこんなで午後の部も始まり、前半は先輩達が頑張り、やっと俺達の番がやってきた。


「男女混合! 玉入れ対決! 制限時間は五分! 怪我しない妨害ならあり! さぁ! スタートだ!!」

「詩音!」

「はい!」

「白組の陣地に行って、紅組陣地に白玉を投げまくれ!」

「かしこまりました」

「輝矢くん」

「鳴海も行ってくれ!」

「分かった!」


完璧な極悪作戦。実は昼休みに、こっそり考えていたんだ。


「紅組がとんでもない作戦に出た! だが、紅組の陣地に白玉が散乱している影響で、紅組ゴールに白玉が入っているぞ! これは最後までになんとかしないと減点だ!」

「はぁ!? 大河! 一回棒を倒すぞ!」

「うん!」

「棒を倒して白玉を取り出す作戦か! だが、棒を倒してしまったら最初からだぞ!」

「マジかよ! 詩音! 鳴海! 赤玉を白組のゴールに入れまくれ!」

「はい」

「任せて!」


これでお互い振り出しに戻った。


「輝矢の作戦のせいだからな!」

「ご、ごめん」

「仲良い人に指示してないで、手動かしてくれる?」

「は、はい」


他クラスにめっちゃ責めらた‥‥‥勝とうと思っただけなのに‥‥‥。


「桐嶋さん」

「どうした」

「見てください♡ 白いのが溢れ出てます♡」

「早くね!?」

「あぁ♡ また入ったぁ♡ また出てますぅ♡ 」

「うるせぇ! これで負けたら俺が責められるんだ! 頼む! 入れてくれ!」

「こ、こんなところで、そんな♡」

「‥‥‥」

「輝矢くん? 桜羽さん?」

「は、はい!」


鳴海が明らかに機嫌悪そうに玉を握ってやってきた。


「手、動かそうね?」

「まずは手でご奉仕ですね。ですが鳴海さん、そんなに強く握ったら痛いかと」

「桜羽さん」

「はい、失礼しました」


本当、二人の会話を聞いてると、根っから仲がいいわけじゃないって分かっちゃうな。

 とにかく頑張って玉を入れ続け、結果が分からないまま五分が経った。

 そして先生が一つ一つ数えていき、結果は‥‥‥。


「紅組の勝利!!」

「しゃ!!」

「桐嶋さん♡ 入れるのとても上手でした♡」

「鳴海が笑みを浮かべてる。ちょっと黙れ」


そんなことを言っていると、鳴海がスタスタと俺達の元へやってきた。


「ねぇ二人とも」

「な、なんだ?」

「ずっと気になってたんだけど、どうして二人から同じ柔軟剤の匂いがするのかな」

「‥‥‥」

「オクトパス」

「タコ?」


覚えたばかりの英語使って逃げ切ろうとしてる!!バカか!?バカなのか!?


「ユー、オクトパスフェイス」


ただの悪口になってる!!!!


「Shut up! Small tits」

「桐嶋さん、鳴海さんは今なんて言いました?」

「うるさい、小さなおっぱい」


次の瞬間、詩音は鳴海の頭目がけてハイキックをかまそうとしたが、鳴海はそれを両手で掴んでしまった。


「離してください」

「嫌」

「二人とも落ち着けって! 友達だろ? 仲良しだろ?」

「いいえ」

「全く」

「瀬奈ちゃん」

「美嘉ちゃん! どうしたの?」


何故か一触即発な輪の中に美嘉が入ってきた。


「詩音ちゃんには仮があるから、やめてあげてよ」

「う、うん! ごめんね?」


やっぱりか。鳴海は美嘉に罪悪感的なものを感じてる。詩音が俺の言うことを聞くように、鳴海は美嘉の言うことなら聞くんだ。やっぱり探偵美嘉ちゃんは使えるな。

 なんとかその場は美嘉のおかげで収まり、それからは一旦何事もなく競技をこなしていった。





「続いては騎馬戦だー!!」

「桐嶋さん」

「ん?」

「大丈夫ですか?」

「なにがだ?」

「男性は騎馬戦的な体位をすることが無いので、私が変わりましょうか?」

「お前もないだろ!!」

「枕で練習してます」

「だから高め固めにしたんじゃないだろうな」

「‥‥‥てへ♡」

「‥‥‥」


抱き枕の方がいいだろって思ってしまった自分を殴りたい。

 とにかく詩音を無視して、さっそく出番の俺は配置に移動し、同じチームのメンバーと合流した。とは言っても、なぜか俺だけクラスが違くて、全然話の輪に入れないけど。

 しかも上に乗るのが女子って、鳴海が怒らないといいけど‥‥‥いや、なんで詩音まで睨んでるの!?!?!?!?

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