僕はこれに恋してる

アほリ

1#恋の季節

 春は、恋の季節である。

 野良猫達も恋の季節である。


 毎日、毎日、


 「うみゃーーーーー!!」


 「うみゃーーーーー!!」


 と鳴き交わしこの街を舞台に、恋する相手と惚れたはれたの大騒動劇を繰り広げるのだ。


 「はあ~~~・・・羨ましいなあ・・・」


 「なんだい?ブッチィー。タメ息なんかついちゃって。」


 「あーあ・・・俺だって、『たま』を取って無ければこの恋のゲームの真っ只中なのに・・・」


 「そっか。君は人間に1度捕まって『たま』を取られた地域猫だったんだね?」


 「俺があの時、スゲー致命的なドジをしなければ・・・うにゃー。」


 「そう嘆くなよ、ブッチィー。まあ、雌猫にゃ縁無かったってことで・・・」


 「んだと?!」「しゃーーーーーっ!!」



 うにゃーーっ!!うにゃーーっ!!うにゃーーっ!!うにゃーーっ!!うにゃーーっ!!うにゃーーっ!!


 ばきっ!ぼかっ!どすっ!がぶっ!しゅっ!ばきっ!ぼかっ!どすっ!がぶっ!しゅっ!



 「あー、またブッチィーとトラジの地域猫コンビが喧嘩してにゃ。」 


 「『たま』取られた地域猫だから、雌ネコに無縁だから気がたってるんでしょ?」


 他の猫達はそんな2匹に呆れ顔だ。


 「あ!あいつ!」


 「なんだよトラジ?!」


 「あいつが居るよ!!あいつが!!」


 「なんだよあいつって?!」


 「だよ!モテモテ王子の長毛の・・・何だっけ?」


 「ラグロール。」


 「そうそう、グラノーラだグラノーラ!!」


 「ちゃう!!どういう耳してるんだ?!」


 「地域猫だから片耳切りカキしてますがな。」「なめとんのか?」


 


 そんな2匹のやり取りを、他の猫達が覗き見して、「クスクスクスクス!!」「にゃはははは!!」「ぎゃははははは!!」と、一斉に腹を抱えて爆笑した。



 ピキピキピキピキ・・・


 「おみゃーら!!何覗き見してるんにゃーーーーー!!」


 激昂した2匹の地域猫は、野次馬している猫達を追いかけておっ払った。




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