空き家探検

 結局もう荷物を持てないという事で地上へと帰った。戻るには戻り玉というものを使うという事。地面に向かって投げたら緑色の煙が出て一瞬で戻れた。これ権利的に平気?

 まだまだ日が高い。結構あっさり戻って来ちゃったな。


「はい、素材等をお引き取りいたしましてー、金貨10枚ですねー」


「ありがとうございます」


 そのまま酒場へ行き、持ってきた素材を引き取ってもらう。ここまで戦って10万円か……って思ったけど俺ほぼ何もやってねぇや。


 ここで次の日。またダンジョンに行くのも無駄になりそうだったのでクエストへ行こうという事でまた酒場へ。

 掲示板の前には今日も人が群がっており、活気がある。


「今日もそんな良いの無いですねぇ」


「スライムとかゴブリンの討伐ばっかだなぁ」


 討伐クエストはいつも同じメンツ。ここら辺そんなのしかいねぇもんな。行ったとしてもロクに金を稼げるものでは無い。やっぱダンジョンの方が良いのかね?


「2人とも、こんなのあったぞ」


 ステラが手を振って呼び寄せる。呼ばれた箇所は討伐クエストでは無く調査クエストの貼ってある場所。


「調査クエスト?不倫の調査とか犬探しとかそんなんばっかじゃないの?」


「ふっふっふ、それはどうかな?」


 ステラが指し示している所には1つの貼り紙。何々?空き家の調査、報酬は金貨15枚……


「割りが良すぎない?」


 内容は詳しく見ていないけども、空き家の調査だけで金貨15枚っていうのが高すぎないか?

 近くではシーニャがめちゃくちゃ頷きまくっている。行くのは決定だとして。


「依頼主が3番町の町内会長なんだ。結構困っているみたいでな」


「内容は?」


「大きい空き家から異音がして困っている。誰かが無断で住んでいるかも知れないから見てほしい。との事だ」


 調査クエストだと人目につかないし少し高めに設定したとかそんな事なのだろうか?


「行きましょう!絶対に行った方が良いですよこれ!」


「それもそうだな。じゃあこれにしようか」


 実際行かない手は無いような内容だ。不審者くらいなら倒せるだろう。多分。


「何か良いのあった?」


 背が小さいリリカは掲示板の内容が見えない。酒場エリアの円卓で1人、パフェを食べながら待っていた。お前いっつもパフェ食ってんな。


「3番町の空き家からする異音の調査。金貨15枚」


「えっ、それおばけとかじゃないの!?」


 リリカがめちゃくちゃ嫌そうな顔をする。なんかこれカタツムリの時にも似たような光景見たな。


「リリカ!」


 シーニャが隣に座り、リリカの手を取る。


「な、何よ……」


「おばけより、お金の方が大事です」


 なんかもう生き生きとしてんなシーニャ。


「わかったわよ……」


 まあこの状態のシーニャ何言っても聞かねぇからなぁ......


***


「んで、ここがその家ですか」


「はい、夜な夜な物音がしてくるんで困ってるんです……」


 時間は夜20時。横にいるのは町内会長。ヒゲを生やして、少々お太り遊ばせていらっしゃるこちらの方はハンケチーフで汗を拭っていらっしゃいますわ。今そんな暑くないのですが。

 ……コンプラに気を使ったらお嬢様になっちまった。


「昼間に行くかと思ったら夜じゃないの!」


 ガタガタ震え、ガタガタ言ってるリリカはシーニャによしよしと頭を撫でられて慰められている。


「これが鍵です。よろしくお願いしますね」


 震えるリリカと慰めるシーニャ、喋らないステラを放っておいて鍵を受け取る。


 うーん、見た感じはレンガ作りで2階建ての普通の家なんだが。ステラの家よりまあまあデカイくらい。マーガレットさんのお店の前例があるからあまり当てにはならないけど。


 鍵を開ける。少し錆が出ているのか、入りにくい。何回か突っ込んでやっと入った。


「おじゃましまーす……」


 返事は無い、ただの空き家のようだ。


「あんた達ほんとに行くの!」


「怖いならここで待ってても良いんだよー」


 前を向きながら無味に言う。


「こ、怖くなんか無いんだからね!!」


 後ろを小走りでついてきて、シーニャの腕に抱きつく。まあこうなるよな。


***


 先頭は俺、シーニャ&リリカ、ステラの順に廊下を歩く。リリカが真ん中じゃないと嫌だと言うのでしょうがなくこの順。ステラはおばけなんて科学的じゃないとか言って全く怖がってないから良いんだけど。


「ねぇ、今のところ何も無くない?」


「そうですねぇ」


「もう何もないっていうことで帰らない?」


「そういう訳にもいかないんじゃないですかー?」


 放置されていた空き家にも関わらず、物が多いとか、ゴミ屋敷であるとかそういう事は無い。


 扉を開けて入ったリビングにも何も異常は無い。大きい4人がけのダイニングテーブルが置かれているだけだ。あれ?でもこの家の見た目だともっと奥行きがあるような?


「私の見る限り、リリカの言う通り何も無いようだな」


「まあそうだけど、原因解明しないと報酬出ないんじゃないか?」


「そうなんです!だから絶対に解明しないとダメなんです!」


 言うと思った。


「……?あれ?いま上から音しなかった?」


「えっ!!もしかしておばけとか!?」


「そんなの居ないですよー」


 おばけかどうかは別として、まあとりあえず2階に行ってみますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る