ダンジョン攻略②

 1階降りて、第2階層。ここから魔物が現れ始めるようだ。

 階段を降りた先には、幅も高さも5メートル程度の通路が続いている。奥には行き止まりが見えるが、そこから横方向に道があるように思える。さすがにいきなり行き止まりではないとは思うから別れ道なんだろう……地図があるんだからわかるんだけどさ。


「そこの突き当たりを右側に曲がるとスライムの群れがいるようだ」


「倒しましょう!少しでも稼ぐのですよ!行きますよ皆さん!」


 地図を持ったステラが言うと、意気揚々と張り切ったシーニャに続いてそちらへ向かう。まあ罠もここには無いみたいだし先頭は譲るけどさ。


 曲がるとそこには10匹程度のスライム。そう広くもない通路にみっちりと詰まっている様子は、見ていてそう気持ち良くはない。


「よーし!じゃあ良いところ見せちゃいますよ!」


「ウインド」


 シーニャが一歩踏み出そうとした瞬間に、リリカが後ろから魔法を撃つ。ただの初級魔法だが、スライムは全員吹き飛ぶ。


「やっぱりレベルが上がると威力も違うわね。雑魚相手ならこっちの方が早いわ」


 悔しそうに後ろを振り返るシーニャ。

 いやめっちゃ悔しそうだな。顔赤くなってるぞ。この前そんなに活躍出来なかったからか?


「な、何よその顔。雑魚も倒すなら効率重視でしょ?」


「そうですけどー……」


 肩を落とし、残されたスライムの素材をカバンに入れる。気持ちはわかるけどさ。

 どうやらダンジョン内の敵は倒した後、素材を残して消えるらしい。まあ死体ばっか残っても管理人が大変だろう。そんなのいないだろうけど。


「ほら、あそこに宝箱あるぞ」


「宝箱!」


 聞いた途端に走っていく。猫じゃなくて犬かお前は。

 まあ中身もわかってんだけど。


「布の服……」


 町でも銀貨1枚で売ってるやつ。


「でも!一応売れますからね!」


 と、カバンの中に畳んで入れる。うーん、お金大好き。


 続いて3階層、というか4階層5階層も省略。スライムばっかりだったからね。


 問題は6階層。


「アッハハハハハハハ!!銀貨が10枚!これで金貨1枚です!!まだまだ!!」


 シーニャが笑いながら拳を振るっている。その様子を俺達は少し離れたところから眺めている。


 何があったかというと、まずこの階層で初めて出てきたのは『自動魔導人形』いわゆるゴーレムだ。今の俺の親戚みたいなもんだろうけど、形は大きく違っていた。

 一般的に考えるような石で出来たゴツい見た目では無く、結構細身の見た目。ゴーレムっていうよりマネキン人形?というような感じ。

 5階層から降りた俺たちを待ち受けていたのはそんな魔物。


 事前に地図もあったし、もちろんゴーレムが出てくるのは知っていたけど、どういう風に出てくるかはもちろんわからなかった。まあゴーレムって硬いんだろうなとはみんなと話してた。


 階段を降りた時、真っ暗だった。この時の時点でシーニャとリリカはただ怖がっていた。


『標的確認。機動起動。殲滅開始』


 一斉に奴らの目が光り、その後バッとダンジョンも明るくなる。そこにいたのは30体以上の人形。


 瞬間に響き渡る2人の悲鳴。お前らさっきまで少し争ってたじゃねぇか。いやまあ確かに怖かったけどさ。ブラック企業の先輩の方が怖いやい。


 そんで最初に斬りかかったのは俺。まあメイン盾だしな。意気揚々と斬りかかりましたよ。


 ガッキィン!


 弾かれた。めっちゃ硬てえ。え、材料俺と違います?見る限り石っぽいんだけど、土固めたら石になるんじゃないの?


 チラっと見たステラはビビって声も出なかった様子。迫り来る人形。さーて、どうしましょうかこれ。


 先に動いたのはリリカ。ハイウインドでまとめて吹き飛ばす。しかし、それは通じずカクカクとした動きで立ち上がる。怖い。


 次にシーニャが駆け出し、立ち上がった人形の胸にある黄色い魔核を思いっきり殴った。


「魔核を壊さないとゴーレムはいくらでも立ち上がります!範囲の広い魔法よりこっちの方が速いですよ!」


 おお、流石に元受付嬢。魔物の弱点とかは詳しい。まあ言われてそれもそうだと思い出した俺も俺だけど。


 さっきのお返しだろうか、特定の誰かさんに向けて言葉を発した後、続けてそのまま他の周りの人形も壊しまくる。


 ……それでさっきのセリフに戻ります。


「ハハハハハハ!!まだまだー!!」


 めっちゃ笑ってる。あれ?シーニャの職業って戦士じゃなくて狂戦士だっけ?俺たち狂戦士をヒーラーとして雇っちゃったんだっけ?

 魔核を拳で破壊しまくりながら前進するシーニャは、まだ銀貨の枚数を数えてる。どうやら2体倒したら銀貨1枚分らしい。

 その後ろを素材を拾いながら付いていく。


「ねぇ、あいつどうかしちゃったの?」


「仲間をそんな風に言うなよ。まだ正気だよ多分」


 正気には見えねぇな。


「噂に聞いたけど獣人族は戦闘狂が多いらしい。どうやら彼女もそうだったようだな」


 顎に手を当てたステラが噛み締めるように呟く。要するに、戦闘狂+良いところ見せたい+お金目的=最高に「ハイ!」ってやつだ?


 硬いもの殴ってんだし大丈夫か?って思ったら、自分の拳に水魔法でオートヒールをかけてた。人の回復も出来るかもだけど、本来の使い方はもしかしてそっち?


「金貨3枚!これで終わりです!!」


 最後の1体を壊し終わったシーニャ。さっきまでスポーツをやっていましたみたいな爽やかな笑顔で振り向く。輝く汗は美しいけど。


「う、うん。凄かったけど随分キャラ違いますねー……」


「はっ!またやってしまいました私……」


正気に帰ったシーニャは顔を隠ししゃがみこむ。


「獣人族特有のやつかい?」


「そうです……ついスイッチが入るとこうなってしまって……」


「あんたそれ人の回復とか頭回るの?」


「努力して意識します……」


それってつまり今回ってないって事じゃん。


「まあ、そうだな。とりあえず少しでも意識してもらえれば良いよ。前衛の俺はステラがいれば死なないし、声に反応してくれれば多分平気だと思う」


 種族的なものはしょうがない気もするしな。


「すみません!意識します!」


 うんうん。せっかく揃ったメンバーだ。1人ももう欠けさせたくは無い。


 と、思って階段を降りた次の7階。


「アッハハハハハハハ!!!」


 8階。


「アッハハハハハハハ!!!」


 ……9階。


「アッハハハハハハハ!!!」


 コピペかよ。

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