第2話「ヒーローの資格とは」

 Side 輝木 ミライ


 初めてキングスセイバーに"変身しようと"した――その前にマジェスに言われた事がある。


 ――もしも君が変身したら世界は救われる。


 ――だけど君は人としての一生を捧げないといけない。


 ――そして選択を迫られる。


 ――その前に尋ねたい。君にとってこの世界は、救う価値があるのかないのか。


 ミライのその問いにこう答えた。


「救った後で考える」


 確かに人生イヤな事だらけだ。

 学校でも家でも居場所はない。

 何時も現実逃避しているような毎日。

 

 だけどキングスセイバーを託してくれた異世界の少女に出会ってもう少し見定めてみようと思った。 



 Side 婦警


 必死に婦警二人組は避難誘導していた。

 住民達は「落ち着いてください」と言っても落ち着ける筈もない。

 

 相手は本物の侵略者。


 軍隊だって敵わなかった連中。


 十発もない、当たるかどうかも分からないし、絶対倒せない拳銃で太刀打ち出来る筈がない。

 

 泣きそうだった。


 本当は自分達も逃げたい。


 そんな気持ちを押し殺してヒーローにバトンタッチしたかった。


「先輩!! どうして自衛隊はこないんでしょうか!?」


「自衛隊出動させたら政治生命終わりかと思ってんでしょ、きっと!!」


「そんなぁ・・・・・・」


「私だって泣きたいわよ!! とにかく避難終えたら私達も逃げるわよ」


「う、うん」

  

 そう先輩に叱咤されて避難誘導を行う。

 その時、親とはぐれたのか小さな女の子が彷徨っていた。

 急いで駆け寄る。


「大丈夫? お母さんとはぐれたの?」


「うぇええええええええええええん!!」


「よしよし泣かないで。今は安全な場所に――」


「リツ危ない!!」


「え?」


 先輩に名前で呼ばれ、一瞬なんの事か分からなかった。

 

『大丈夫ですか』


 そう言われて声のした方向を見る。

 そこにはキングスセイバー。

 世界を救ったヒーローがいた。

 両手に玩具のようなデザインの銃と剣を持っている。


 そのさらに前には世界中に侵略を行ったリベリアス帝国の兵士の姿があった。

 銀色の、まるで特撮物に出てきそうな戦闘員のような姿。

 だけどこいつらは飛び道具や刃物を持っている。


 状況を認識出来て婦警は尻餅をついた。


『ッ!! 動かないで!!』


「いやああああああああああ!?」


 思わず悲鳴を挙げた。

 敵が隊列を組んで光線武器を一斉発射してきたのだ。

 それを体を張って受け止めるキングスセイバー。


『ギぃ!?』


『ギー!?』


 お返しに左腕に持った銃で応射。

 敵が倒れふしていく。


『その子の事は任せていいですか?』


「は、はい」


 そう言って彼は駆け出していった。

 地面には弾痕が残っており、敵兵士が倒れている。

 先程までの出来事が現実であり、危うく死にかけた事も事実である。

 

 そこまで認識してこう言った。


「私――助けられたんだ」


 と。

 その後、すぐに先輩から「ボサッとしてないで避難するわよ!!」と檄を飛ばされたのであった。



 Side 輝木 ミライ


 何の戦闘経験もない、普通の高校生がリベリアス相手に無双していた。


 しかし――


(数が多い!!)


 数が多い。

 

 どんなに強くても所詮は一人。

 自衛隊の姿が見えない。


 他国とは大違いだ。


(仕方ない、ここは――) 


 そう言ってカードを取り出し、天にかがげる。

 そのカードには灰色の怪獣が描かれていた。

 二本角、特撮物に出て来る怪獣のような顔立ち、三本の大きな爪、巨大な尻尾、ドッシリとした二本足。


『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 そしてカードから抜け出すように50m超の怪獣が現れ、敵の円盤をパワーと口からの光線で破壊していく。


 守護機獣、キングスダイノ。

 いわゆるロボット怪獣である。

 

『ダイノ!! 周りに建造物に気をつけて戦って!!』


『ガオ!!』


 と、受け答えして暴れ回っていた。

 地上の方では――


『ギィギィ!!』


『ギギィ!!』


 リベリアス帝国の兵士、リベルトルパーの上位兵士、強そうな外見のリベルコマンダー達が現れた。

 いわゆる上位戦闘員であるが――


『ウィザードパワー!!』 

 

 バックルベルトにウィザードパワーのカードを装填。

 キングスセイバーは魔法使いのような外観になる。

 手には杖が握られていた。


『ブリザード!!』

  

『ギィ!?』


 地面もろともカチコチになり、そして今度は――


『マシンパワー!!』


 そして今度はマシンパワーのカードを装填。

 体中に継ぎ目や穴が出来る。


『全弾発射!!』


 そして体中の継ぎ目が開き、穴からもミサイルやらレーザーが飛び出して一気に氷漬けになった敵を粉々に吹き飛ばした。



 粗方倒し終えて家に帰宅する。

 キングスダイノも久しぶりに暴れられて満足しているようだった。

 他の守護機獣達が訴えかけてくるが――まあそれはおいおい考えよう。


 スマホもテレビもキングスセイバーの話題一色。

 キングスダイノも紹介されていた。


 テレビのコメンテーターだの国会だのは相変わらずだが。

  

 なんでも――


「一個人があれだけの戦闘力を持っているのは危険」


「すぐに探し出して捕獲するべきだ」


「リベリアス帝国よりもキングスセイバーの方が危険だ」


「逮捕する理由は幾らでもある」


「ただのヒーローごっこしている殺人鬼」


 とかなんとか。


 まるでキングスセイバーの方が悪いみたいな言い方だが、日本と言う国は昔からこんな感じだ。


 だが何も思わないワケではなかった。


「ヒーローって大変だな・・・・・・」


 などと思い、妹に荒らされたらしい部屋を見て「もうそろそろ妹にもキツく言っておいた方がいいかもしれない」と思いながら眠り付いた。




 Side 星奈 エミリ


 星奈 エミリ。

 

 人気アイドルグループ「プリンセス・スターズ」のメンバーである。

 

 長い金髪。

 童話のお姫様のような可愛らしい顔立ち。 

 華奢な体格。


 まだ十代半ばでありながらプロの世界で第一線として活動していた。

 

 そんな彼女はキングスセイバーの事を考えていた。

 

 今日のリベリアス帝国との戦いに巻き込まれて正直死にそうになった。


 そんな時、颯爽と助けてくれたのがキングスセイバーだ。


 だから彼女は事務所にもマネーシャーにも許可を取り、キングスセイバーへのお礼の言葉を述べた。


 色々と言いたい言葉はある。


 だが簡潔に事情を述べて「助けてくれてありがとう」と。


 ただそれだけを述べる。

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