第1話「ヒーローの目覚め」

 Side 輝木 ミライ


 ミライは家では妹のミクに嫌われている。

 曰く、「クソダサい兄なんて兄とは思わない」だそうだ。


 父親も母親もそんな妹に手を焼いている。


 反抗期とかではなく、悪役令嬢か何かみたいになってしまっていた。 

 とにかく体面や人目を気にして金遣いも荒いだけでなく部屋を勝手に出入りする。


 学校では問題児に囲まれる毎日。


 どうして人を傷つける事を平然と出来るのだろう。


 どうしてそれを楽しむのだろう。


 どうしてそれを笑うのだろう。


 理解出来ずに今日も学校に行く。



 学校では基本一人ぼっち。


 何時ものこと。


 剛田と新島の不良コンビに絡まれた。


 クラスの上位グループ達が昨日のミライへの嘘告白動画で盛り上がったりしていた。


 ミライはなにが「そんなに楽しいのか」と言えなかった。


 言ってもどうせ無茶苦茶な理論と数の暴力で押し切られるからだ。


 それが学園社会のルールである。


「おい、ミライ。最近調子に乗ってるだろ?」


「はあ?」


 クラスの上位グループの纏め役、恐らく昨日の嘘告白動画の企画主、「上原 アユム」。

 茶髪で顔立ちも整っている男子――が絡んできた。

 

 それはそうと普通に生きているだけでも調子に乗っていることになるらしい。

 何という価値観の持ち主だろう。


「大体俺の女に色目を使う奴はお仕置きしなきゃな」


「やめ――」


 などと言ってぶん殴ろうとする。

 思わず突き飛ばしてしまう。


(やっぱりキングスセイバーに変身した影響で体に変化が出てる)

 

 生身での身体能力が向上している。

 単純な身体能力だけでなく、動体視力や反射神経も。

 剛田を退けられたのもこの影響だ。


 だがその前に――


(この状況どうしよう――)


 ミライの眼前には椅子と机、複数巻き込んでゴロゴロと倒れ込む上原の姿があった。



 結果はケンカ両成敗の放課後で居残りの反省文作成だ。


 ミライが重めで上原が軽めだが、上原は「俺の分もお前が書け」と言って立ち去っていった。


 ミライはヒーローに憧れてるが、ヒーロー=聖人君子ではないと思い、無視してその場を立ち去ろうとすると――

 

(この邪悪な気配は――!?)


 リベリアスが襲来した時に感じた気配。

 そして何処からともなくキングスブレスレットが飛んできて腕に装着される。

 

「変身!!」


 そしてミライは赤いヒーローに変身した。


 二本角。

 赤いツインアイ。

 胴体のKのマーク。

 肩のプロテクターにグローブにブーツ。

 バックルベルト、左側にカードケース。

 左手首にKのロゴが入ったブレスレット。

 白いマント。


 昭和のヒーロー感が漂い、ダサいとか言われるデザイン。


 小柄な体格もヒーローらしい体格に変わっている。


 それが今の、キングスセイバーとしてのミライの姿である。


 眼前に大きなゲートが出現し、そこにミライは飛び込む。



 ゲートの先は高層ビル群が建ち並ぶ都会。

 地上では逃げ惑う人々。


 更にその先にはリベリアスの兵士達がいた。


 母艦である円盤も幾つか確認出来る。


 輝木 ミライはキングブレードとキングブラスターを両手に持ち、戦いの中に飛び込んでいく。

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