第7話 星猫編  雪姫、憑りつかれる①

「これが・・・不屈の雪・・・」


ソーマが、私の部屋にあるギルドフラグに目を奪われる。


「うん。ギルドの旗。スノープリンセスの魂の御旗だよ」


目をキラキラと輝かせ見ている。


「この御旗の元で、雪姫は金剛鬼や金剛鬼姫と勝ったんだよな」


「うん。世界を守り抜いた雪姫さん、素敵でした」


まぁ、悪い気はしないけどね。




「違うよ。私だけが素敵だったわけじゃないよ。ラムタの魔導士たち、剣士たち、魔人族、兵隊さんたち。世界が1つになり、世界で戦ったんだ。世界が1つに成れなかったら、私たちでも勝てなかったよ」


そう、世界で戦ったからこそ、私たちは勝てた。


「でもよ、海底世界で見た、雪姫とスノープリンセスは、ああ!言葉なんかに表せねーよ」


「うん。震えちゃったよね。この旗の元に集うスノーの人たち。真っ赤な燃える世界で、白く輝く雪姫マスターに」


えへへへ、良い子たちだ。


「リアちゃん、二人にお茶とお菓子ね」


リアちゃんは、は~いと言いながら部屋を出る。


「オヤジが言っていた。スノーは他のギルドとは違う。導火線は短いが、根は多分優しく、胸はないが、心は多分広いギルドマスターが、世界を守護しているってな」


なんだ?褒められたんだよな?バッカスは私を褒めてるんだよな?


「うん。お義父さんは、雪姫マスターの話をしてくれてました。『凍らせてやる』と口では言うけど、たまにしか凍らせないし、メディアでは強気でも、裏では一人膝を抱えて泣いている可愛さもあるって」


バッカス判決だ!3:7で凍らせてやる。




「マスター、お茶とお菓子です」


リアちゃんが戻る。


「お二人の登録が済みました」


そこにジェームス係長も来る。


「ごめんね。ジェームス係長に雑用頼んじゃって」


たまたま戻った時に居たジェームス係長が2人の登録をしてくれたが、仮にも幹部級の人に、庶務を頼むとは、私も心がやられていた証拠だ。


「いえいえ、記念すべきソーマ様とヘレン様の登録を担当出来て、光栄ですよ」


ジェームス係長は紳士だ。


「ではソーマ様、ヘレン様、ご確認を」


テーブルの上に書類を置いたジェームス係長は、1歩下がる。


行動そのものが紳士だ。


「おい・・雪姫・・これって」


「うん・・幹部候補って・・」


書類には『幹部候補』と書かれている。ギムは幹部と言ったが、一応研修期間を設け、幹部候補で採用とした。


「実力と、魂を持つ者の年齢は問わないよ。2人はさ、凄い魔法を持っている。そしてスノープリンセスを理解している。幹部候補で採用だよ」


ソーマはヘレンを、ヘレンはソーマを見る。


「マジかよ・・俺たちいきなり幹部候補」


「うん。お義父さん驚いちゃうよ」


喜び一杯の所悪いけど、一応書類にも書いてあることの説明ね。


「候補だからね。もしギルドの方針や、理念に反したら追い出されることもある。冒険者とは違う立場なのは理解しておいて」


「おお!わかってるぜ!」


「うん。スノーの事なら理解してるから大丈夫です」


まぁ言うほど楽なことではないと、知る時が来ると思うけど、今はお祝いだ。


「よし、じゃ2人の歓迎会だね」


と言う私にソーマが言う。


「あのさ、先によ、国王にお礼が言いたいんだけどな」


「うん。特例なんか認めてもらった、お礼を言わないと」


ほー若いのに礼儀正しいね。


「雪姫なら、王様に直接会えるんだよな?」


「お願いします。雪姫マスターから、私たちのお礼の気持ちを伝えてください」


私経由で?


「なら自分たちで伝えたら?」


驚く2人。


「どうやってだよ!」


「王様に謁見なんか、恐れ多くて出来ません」


いや連れてくよ。


「マスター、ゲート使いますか?」


「うん。ちょっと行ってくるね」


リアちゃんがゲート石で王宮と繋げてくれた。


「お、おい!王宮内はゲート禁止だぞ!」


「私は良いのさ」


「待ってください、心の準備が」


「準備は会ってからしよ」


「いってらっしゃい」


ジェームス係長が楽しそうに送り出してくれた。






「おお、雪姫か?」


「あら、いらっしゃい」


玉座の間では、ゴルノバ王とステラ女王がお茶をしていた。


「ぎ、ぎ、玉座の間だと!」


「ひぃぃ!首が飛んじゃう」


ひれ伏し、頬を絨毯にめり込ます2人。


「2人が王様にお礼が言いたいって言うから、連れてきました」


「ほー、それは礼儀正しくていいな」


「若いのに偉いですわね」


余り頭を下げると、絨毯に顔の形が残るから、上げようよ。


「あ、あの、夫の幹部候補のソーマです。この度のご配慮に感謝いたします」


「同じく妻のヘレンで、幹部候補でございます。一言お礼が言いたくて」


うん。固くなって、少しパニックってるけど、言う事を言うところが凄い。


「よい!頭を上げろ。顔が見えん」


「良いのですよ。そんなに緊張しなくても」


「はっはーぁーーー御意」


「はい!上げます!上げさせていただきます」


2人はゆっくりと面を上げた。


「雪姫、これが一般の反応だ。お前といると、自分が王なのか疑問になる時が有る」


「ですわ。なんか今は、王と王女だと実感できましたわ」


あれ?私が変なの?


「おい雪姫、王様は礼を求めていらっしゃるんだ」


「雪姫マスター、とりあえずひれ伏してください。首が飛んじゃいます」


飛ぶ前に凍らせるから大丈夫。


「わははははは!冗談だ冗談。こいつに礼など求めたら、凍らせられるからな」


「おほほほほ。ソーマさんとヘレンさんも、普通に接していただいて結構ですわよ」


唖然と口を開ける2人だった。






「雪姫、賠償金1万4千は、確かに受け取ったぞ」


「良く払えましたわ。ギムさんのお財布からですの?」


バレてるし。まぁ兵士の指南役の給金は半端ないはず。ギムは使わない男だと知ってるから、当然バレる。


「はい。マリアが気を利かせてくれて、貸してもらいました」


恥ずかしいことだが、隠すことではない。


「お前らしいな。正直者だ」


「そこは嘘でも『ギルドの資産からです』と言うべきですわね。信用にかかわりますわ」


アハハは・・バレてる上に嘘の上塗りは・・。


「さて、念願のスノーに入れた2人に、俺から記念すべき初のクエストを出してやろう」


お?流石はできすぎ王。


「ポーションの材料、100本分の薬草採取ですわ」


なるほど、手ごろだ。失敗はないが、難易度は中。初クエストには最適だ。


「その依頼、受けました」


私が受諾宣言した。


「ありがとうございます!ソーマ、一命に掛けクエストを遂行いたします」


「ご配慮に感謝いたします。直ちに任に付き、結果を出します」


基本真面目なんだな。この2人。




私たちは玉座の間から直接ダンジョンに向かう。


そして、魔物を倒しながらポーションの材料の薬草を採り、クエストを達成した。


「じゃ、もう一度王宮に行こうか?」


「おい、またゲートなのか?」


「今度こそ首が飛ぶかも」


飛ばねーよ。




私たちは玉座の間に戻った。

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