不帰

炒飯を食べさせた筈なのに。

彼女は帰らなかった。

「あのー、困りますよ。

帰ってもらわないと。もうお腹は満たされましたよね?」


「んー、まぁね。とても美味しかったわ。

評判通りね」


「じゃあ、帰ってください」


「え、いやよ。空腹は満たされて、つまり食欲は満たされたけどね。睡眠欲は満たされて

ないわけだから。泊まるわよここに」


「はぁ?」


「ベッドはひとつしかありません!!」


俺はそう吐き捨て、彼女の腕を掴んで帰らせようとした。しかし、俺よか情けない話、

彼女のほうが力が強くて簡単に俺は突き飛ばされた。


「バカね。

わたしの方が強いのよ?

一応、昔、空手やってたからね」


「へ、へぇー」


「取り敢えず、ベッドはひとつで十分。

シャワー借りるわよ?

あ、そうそう。あのね、下の着替えはいらないからね。下着はさっきコンビニで買ったやつがあるの。でも、上着はいるわ。

用意してちょうだい」


「はぁ?用意って言ったって、、

箪笥のなかにあるのは、ジャージとかしかないですけど」


「それでいいからさ」

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