5_それだって、結局のところ日常である。


「皆に戻るの遅れた事情説明しないとねえ」

「あー、そう言えばそっすねえ」


 いつも通りの口調で、千蔭さんが言う。それを考慮するのをすっかり忘れていた。向こうから電話が来ていない辺り、特別トラブルなんかは起きていないはずだから大丈夫だろう。


「あと、今回の件報告書作んないとだね」

「うす、書類は俺作っときますね」

「お、じゃあお願いしちゃおうかな」


 するりと、トラブルから日常に戻っていく。俺たち警察官にとっては、こうしたことだって日常茶飯事だ。ふうと息を吐いて、何の気なしに空を見上げた。今日の空は晴天だ。けれど、日常の中に潜む日の当たらない場所で、犯罪は今も起こっている。


「さて、早く戻ってお仕事頑張んないとね」

「……うす」


 ああ、そうだ。これが、俺たちの仕事だ。内心で呟いてから、いつも通り短く返した。

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