たいへんへんたいです()

たてごと♪

たいへんへんたいです()

「大変だ!」


「なにごとだ?」


「勇者が、決闘いどんだ魔王に負けちまった!」


「な、なんだって!」


「んでもってそのまま、魔王が負かした勇者を寝室に連れ込んじまったって!」


「なにぃぃいっ!? 勇者様って女じゃねえか! めにされちまったって言うのかよ!」


「そうなんだよぉ!」


「ち、ちくしょう魔王め! 許すまじ!」


「しかも……しかもだ!」


「何っ、もっと悪い話があるのか!?」


「魔王も女だったんだ!」


「……。なんだってー」


「どうやら勇者に一目れだったみたいでな! 世界の半分やるから嫁になれって、戦闘中ずーっと熱烈に口説き続けてたらしいぞ!」


「敗因それでほだされたとかじゃねえだろうなおい」


「あとその魔王、実は被虐趣味どえむ受け専門ばりねこだったらしくてなァ!」


「いやそれ勇者が魔王をめにするやつだろ。つかそれ楽勝で倒せるだろ」


「勇者もそれどころじゃあなかったみたいでな! なんでもお姫様抱っこで運ばれてる間じゅう、自分に魔王を満足させることができるのか? いややるんだ! って神妙にしゃぶるいしてたとか!」


「いややるんだ、じゃねえよ。ふるい立つとこ完全に間違えてっぞ。神妙って言葉にあやまれ」


「でもほらやっぱり勇者って、真面目で誠実な人柄だし!」


「真面目と誠実にもあやまれぇ! ただのポンコツだ!」


くして決闘でゅえるふぃーるど褥の上べっどすてぇぢへと移りえくすちぇんじ、その熱戦あっはんうっふんは一昼夜にまでも及んだのでございます」


「突然のおかしな語り口調やめろ! あと長々がんりすぎやろ!」


「それでほんかい果たせた魔王も、これで勇者は私のモノになったのね、って涙したそうだ! いい話だよな!」


「逆だし! よくもねえよ! つかそもそも、妙に話が詳しすぎねえか?」


「結婚式ひらくことになったからって、王様に招待状届いたんだよ! んでそこに、め全部書いてあったって!」


「早急に結ばれずぎやろ! ……って、いやそれ待て、ふつうに魔王のわなだろこれ」


「それが勇者の直筆だったって! 筆に乱れはないから確実に自分の意思で書いたって! 鑑定士はいい仕事をした!」


「鑑定士そんな仕事すんな! そして勇者仕事しろ!」


「ちなみにそれ持ってきた魔王の使者、困惑でガチ泣きだった!」


おれも困惑でガチ泣きしてえ!」


「だからおれは、か……彼女の、慰めを買って出た! 慰安あっはんうっふんは一昼夜に及んだっ!」


「何で一昼夜すぐ出すんだよ! てめえでたらめな事ばっか言いやがって、かしいんじゃねえぞ!」


かしじゃねえよ! ……でもごめん、ちょっとうそついた」


「ほら見ろ!」


「実は彼女じゃなくて彼なんだ、てへっ」


「ウホォォオッ! おっ、おれにはそういうはっ……」


「ははっ何言ってんだ、おれも彼と結婚すんのに浮気なんかしねえよ」


「あっはい」


「そういや招待状の内容、そりゃあもう官能小説のごとしだったってさ! そのまま出版しようって話も持ち上がっててなあ!」


「何書いてんだ勇者。あとだれだそんなこと言い出した


おう様だよ! 尊すぎるってマジ泣きしてたし、きっと大売れだぜ! ちなみにタイトルは『聖戦、愛の果てに』で決まりだと!」


性戦タイトル詐欺! バトルロマンス期待して子供が読んだらどうすんだおう様!」


「でもなんか王様だけ妙にカリカリしてな? らん騒ぎしてる場合かとかなんとか、よくわかんねえこと怒鳴り散らしてさあ」


「よくわかんねえ、じゃねえよ! やっとともなの出てきたよ! 王様万歳!」


「だからおう様それで激怒しちゃってさあ。王様ひんいて縛り上げて、むちひゃくたたきに」


おうじゃなくて女王だったァ!」


「でも何でか、王様それで幸せそうな顔しちゃってな? これじゃあオシオキにならないわぁ、とかおう様嘆いてたんだけどあれ、どういう事だったんだろうな?」


「オシオキ誘っただけかよ王様! 万歳返せ! この国もう故郷おうちへ帰る!」


「ま、待て待て待て! お前には頼みがあって来たんだよ!」


「このに及んでおれにどうしろと!?」


「魔王の使者って二人だったんだよ。その片方が慰められてなくてだな」


「ふざけんなよ! おれはそんな魔族に加担するような事しねえぞ! つかそんなの他のだれにだってできるだろ、おれじゃなくていいだろうがよ!」


「そうは言っても難易度高くてよう。だれも手が出せねんだ」


「難易度?」


「だって吸精魔さきゅばすなんだぜ? 幼女型がちろりの。社会的にちょっと……」


「任せろ。おれしんだ」


「貴君のとうとい犠牲は末代に至るまで語り継がれるであろう! 真の勇者に、っ敬礼!!」



 ──『聖戦、愛の果てに・外伝 ゠人知れず散ったもう一人の勇者゠』第255版より

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