航海第二十三日目 師

(平成11年10月2日〔土〕晴れ)

 私の背中に冷や汗が滝のように流れる。いつかは当たる時が来るとは思っていたものの、こんなにも早く角川師つのかわしと戦うことになるとは。

 しかも、勝負の方法はダメさ加減。どう考えても私に勝ち目はない。


 いや、そんな弱気なことではいけない。何のために今まで努力を重ねてきたのだ。すべては角川師を超えるためではないのか。

 私は脳みその皺を伸ばして気合を入れる。


 ゴングが鳴り、勝負が始まった。

 まずは、角川師が動いた。あの構えは、昔懐かしい鶴の舞いではないか。

 私は強いショックを受けた。まさか今時、こんな技で勝負を挑んでくるとは……。やはり、我が師だけのことはある。並のダメ人間ではない。


 しかし、こちらも負けてはいられない。

 私は酒を飲み、酔拳を舞った。しかも、酔八仙のうちの笛吹きとタルを持つ大男、年増女の3パターンしか覚えていない。


 どうだ、さすがのつのもこれには参っただろう。

 だが、彼は全く動じていない。 


(二十四日目につづく)


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