航海第十六日目 喪失

(平成11年9月25日〔土〕晴れ 記入日翌日)

 さて、またもや当日に日記の記入ができなかった。もちろん、怠けたのでも、忘れていたのでもない。拠所のない事情があったのだ。

 え~と、昨日は暑かった。だから、集金に行く気もしないで、だらだらと過ごしていたのだ。い、いや、何でもない。つい、本当のことを書いてしまった。違う、本当のことじゃない。う、うそを書いたんだ。


 記入日からは二日前のことになる。

 できもしない居合をやろうして敗北した私は昏睡状態に陥った。数分後、目を覚めましたのだが、その時の私は記憶を失っていた。

 何も思い出せない私は地獄を後にし、天国までたどり着いた。


 しかし、そこはあまり楽しい場所ではなく、人々はひらすらのんびりと過ごしている。みんなが一生懸命戦い続けている地獄とは正反対だ。

 確かに、あそこは苦しいところだが、生きているという実感があった。(死んでいるけど)

 

 とはいえ、最近は疲れ気味なので、天国で休むのも悪くない。


(十七日目につづく)

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