航海第十三日目 不祥事

(平成11年9月22日〔水〕雨 記入日翌日)

 さて、『航海日誌』始まって以来の不祥事が起こってしまった。当日に書くことができなかったのだ。これは由々しき事態である。

 これから、なぜこんなことになってしまった説明をせねばなるまい。実はのっぴきならない事情があるのだ。どうして、当日に書かなかったのか、それはうっかり忘れていたからである。げほっ、ぐふっ、ごぼっ。しまった。つい、本当のことを書いてしまった。い、いや、なんでもない、忘れてくれ。


 そもそも、事の起こりは台湾を襲った大地震である。

 私は地獄にいるのだが、そこは“この世”の影響を強く受ける。私が今いる場所は台湾との重なりのある地域なのだ。現世で台湾を大地震が襲ったように、私のいる場所でも大地震は起きた。

 そして、落石や山の崩壊、地割れにより地中深くに埋まってしまった。幸いにも、地中で右腕と再会した私は、彼とともに地上を目指す。とはいえ、地中では日記は書けない。


(十四日目につづく)

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