航海第十一日目 浮上

(平成11年9月20日〔月〕晴れ すずりん根性なし休み)

 角川師つのかわしとの再会を果たした翌日、私の足の小指はまだ痛んでいる。つのの方も同じらしく、鼻血を流しながらピクピクしている。しばらくすると、動かなくなった。


 どうやら第二の死を迎えたようだ。第二の死とは極めて珍しい現象で、千年に一度あるかないかというほどレアなものだ。

 しかし、角川師も机の角に小指をぶつけたくらいで第二の死を迎えるとは情けない。やはり、日ごろの体調管理は大切なのだな、そう痛感した。


 それはそうとして、私はまだ海底にいる。とりあえず、地上に戻りたいのだが、どうしたらいいだろう。そう思案していると、角川師の死体が地上へ向かって浮上し始めた。

 生きているうち(一回しか死んでいないうちを含む)は何の役にも立たなかったが、ついに彼も役に立つ時が来たのだ。私は角死体に捕まり、地上(海上?)へと辿り着いた。


 だが、そこにはまだ、魔王の中の魔王、サタンが待ち受けていたのだった。


(十二日目につづく)

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