航海第八日目 暗雲

(平成11年9月17日〔金〕曇りのち小雨)

 赤い海、紅い空、そして、異様な臭気。帆を風に棚引かせ、我が“気の抜けたサイダー号”は地獄の海を行く。こうして、ちゃんと航海しているなんて航海日誌をつけ始めて何日ぶりのことであろう。

 まあ、「電波少年的スワンの旅 in the world」でも途中でスワンボートを直すためにヒッチハイクで首都まで行ったりしていたので、構うほどの問題でもないのかもしれない。


 とはいえ、今日あったことは、ずっと船に乗っていたことくらいでほかには何もしていない。

 しまった。まだ日記を半ページしか書いていないうちにこんなことを書いてしまったのでは、このページを埋めることができない。

 そもそも、これは日記でもあるが物語でもある。できるだけストーリーを進めることが暗黙の了解だったはずだ。今回はそのお約束を破ってしまった。このことは、この航海日誌に大きな暗雲をもたらすことになるだろう。

 とかなんとか書いているうちにページが終わった。


(九日目につづく)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る