元カレは骸骨

野棘かな

第1話

 ある夜、帰り道の橋を渡っていた時のことだ。

「まゆちゃん!」

名前を呼ばれあたりを見たが誰もいない。

気のせいかと歩き出すと

「あー、やっばり真由美じゃん、みーつけた 」

と、また声が聞こえる。

気持ち悪い。

急いで走って部屋に帰った。


翌日、渡らないと帰宅できないから仕方なく

橋を渡っていると

「真由美!俺だよ俺!」

声はすれど姿は見えない。

だが、声には聞き覚えがある。

もしや、あの不良だった聡君?

すると

「そう、不良だった聡君だよ」

カラカラと笑う声。


そんなことが続いたある日

覚悟を決めて聡君に話しかけた。

「なぜそこにいるの、どうして」


 聡は少し上流の河原で不良仲間と喧嘩して

刺されて流され、この橋のたもとに死体が引っかかっていたとか。

小さな記事だから知らなかった。


この辺りを彷徨っていた時、私をみつけ、他に知ってるヤツがいないからと懐かれたみたい。


「夜中0時頃にここにきてくれ」

懇願され、昔のよしみもあり

その夜、橋へ行くと

びっくり骸骨姿の聡君がいた。

真夜中なら実体がある、って骸骨か。


骸骨のくせに元気、減らず口を叩く。

それからしばらくは話し相手になっていたが

この先の未来はないし、昔付き合っていたけど、それほど好きでもなかった。


ちょうど探していた会社近くに部屋が見つかったので引っ越すことにした。


明日引っ越すからね

と思い切って言ったとたん

いつも帰りを待ってる

橋の欄干の上で

カラカラと笑い

ドンドンと跳ねて怒っている

骸骨は私の元カレ。

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元カレは骸骨 野棘かな @noibara

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