チケットくれ 2

 -2-


 それにしても5000万件の応募で当たるなんてシゲルの奴は大した奴だ。


 あ、シゲルとは誰なのか説明しよう。


 タケシ「幼なじみだ!」


 テメ-が言うな。


 そう、幼なじみなのだ。

 小学生一年から現在の中学2年までずっと友達だ。同じZONEファンであり、タケシはMIYUファンで、シゲルはMAIKOファン。

 よく、「可愛いのはどっちだ?」と話し合いになり、お互いに譲らず死ぬ一歩手前まで殴り合ったものだ。

 格闘ゲ-ムで、ね。

 実際にやると痛いからだと本人達は言う。


 気がつけばシゲルの家の前だ。

 緊張するが、幼なじみのタケシの願いなら、もしかしたら聞いてくれるかもしれないと言う期待が尽きなかった。当選したのがシゲルで良かったとつくづく思った。


 タケシは自分に言い聞かせる。十分に可能性はあると。


 昔、おつかいの費用でZONEのCDを買い占め親に殺されかけたシゲルを助けたのもタケシだった。


 まあ、自分は塾の月謝をZONEのCDに注ぎ込み親に殺されそうになった所をシゲルに助けられたので、お互い似たようなものだが。


 しかし、諦めるわけにはいかない!!


 今までのライブも全て行っているのだ、伝説を残さなければ!!


 もしチケットを譲ってくれなければボコボコにしてやろう!!

 ――格闘ゲ-ムで。


 タケシはシゲルの家のベルを押した。

 数秒が経過するとシゲルが顔を出す。


 シゲル「お? タケシじゃないか」


 タケシ「シゲル、お前ZONEのチケット当選したんだって?」


 シゲルは微笑んだ


 シゲル「ああ、神様がくれたプレゼントさ」


 タケシ「おめでとう……」


 シゲル「ありがとう。で、タケシお前は?」


 タケシ「当たらなかったよ……」


 シゲルは残念そうな顔をした。


 シゲル「そうか……俺だけ悪いな、何かグッズ買ってくるよ」


 やはりシゲルは優しい奴だ、親友だ。言葉が心に染みた。

 だが引き返すわけにはいかない。

 タケシは重い口を開く。


 タケシ「――シゲル」


 シゲル「ん?」


 タケシ「実は頼みがあるんだ」


 シゲル「何だ? みずくさいな。俺達は親友じゃないか」


 タケシ「……シゲル」


 シゲル「お前の頼みなら何でも聞いてやるよ」


 タケシは思い切って言った


 タケシ「ZONEの!! チケットを譲ってくれ!!」


 シゲルは一瞬戸惑いを見せた。そしてすぐに笑顔を作る。


 シゲル「誰だ?お前?」


 タケシ「は?」


 シゲル「あなたの事は知りません」


 断れなかった。

 親友を裏切れなかった。

 でもZONEのチケットを譲れるはずはない!!

 だからこそ、シゲルの頭は親友を忘れる事を選んだのだ。


 タケシ「おい!! シゲル!! 何言ってるんだよ!!」


 シゲル「警察呼びますよ?」


 タケシ「シゲル頼む!」


 シゲル「救急車呼びますよ?」


 タケシ「なあ!! 一生のお願いだ!!」


 シゲル「冬美ちゃん呼びますよ?」


 タケシ「やったあ!!」


 シゲル「それじゃあ僕はこれで」


 シゲルは家へと入って行く。しかしタケシは諦めず叫ぶ。


 タケシ「肩叩くよ!! 3兆回!!」


 シゲル「殺す気か」


 タケシ「シゲル様と呼ぶよ!! 3兆回!!」


 シゲル「うざったい」


 玄関は閉じられた。


 タケシ「………」


 あいつは親友じゃない、きっと茜に取り憑かれているんだ。

 そうタケシは思った・・


 それに一応、チケットを譲りたくない気持ちはわかる。


 しかし諦めない、他を当たってみよう。


 タケシ「あ、あそこはどうだろう?」


 町にある道具屋。そこには様々なアイテムが揃っている。

 ZONEのチケットもあるかもしれない!


 タケシ「諦めないぜ」


 タケシは町の道具屋へと向かった。

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チケットくれ! ウニ軍艦 @meirieiji

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