第7話  猫族の女の子と盗賊の罠

 よし、ブブセル王国には近づきたく無いので西に行こう。


「サキ、ブブセルとは反対方向に行こう」


「そうだね、そうしよう。でもこの街道を進んで行くとテレストラ王国に着いちゃうよ」


「そこは任せてよ、取り合えずあの森まで歩こう」


「分かった」


「この辺でいいかな」

「こんな所で何をするのさ」


「これだよ」

「ただの虫じゃない」


「まあ、見てて。巨大化!」このぐらいで良いか。


「ちょ、何、えっ」


作って置いた座席を付けて、出来上がり。


「さあ乗って」〔ギギッ〕


「ギギって言ってる、喰われ無いよな?」

「大丈夫だよ、乗ったらベルト締めてね」


「用意はいい?出発するよ」

「うん」


「西へ向けて出発」

「ひゃあ、凄い」


「テレストラ越えて、ガウルスト王国に入ったら街で降りて見よう」


「うん、しかしとんでもないスキルだな」


「ズルその①さ」

「自分で言うな」


「あの山越えると多分ガウルストだと思う」

「空の旅は順調ね、景色も良いし最高」


「そうでも無くなったよ、ほら」

「なに?鳥」

「ワイバーンだよ」


「どうする気?降りるの」

「まさか、迎撃するさ。素材はあきらめるけどね」


2匹の虫を空中に投げ巨大化させる、この虫の名はボルケノン、空中戦のテスト開始だ。


2匹の虫、いや2頭のボルケノンは火球を連弾でワイバーンに向かって放つ、翼は辛うじて貫通し穴を開けたが胴に当たった火球は弾かれてしまった。


「う~ん、火力は低いか、レベルが上がれば大丈夫そうだが、初めは魔道具の補助が必要だな」


「ずいぶん冷静に分析するわね。大人みたいな言い方よ」


すいません、中身は45才バツイチ、娘が1人です。


「そうかな、普通だよ」


「まあいいわ。でも、このままでは負けそうじゃない」


「大丈夫だよ、大体、翼と羽では飛び方が違うからね。ワイバーンは魔力を揚力に変えて飛ぶが、虫はそれに加え羽だけでも翔べるんだ」


「どう言うこと?」


「簡単に言うと機敏に動く事が出来る。だからワイバーンの攻撃は当たらない。ほら」


ワイバーンもファイアボールを撃つが全然当たらない。


「それに火球が弾かれても効かない訳じゃ無いよ」


ボルケノンの火球連弾がワイバーンの頭にヒット、脳が揺れふらふら飛んでいる、もう1頭も連弾を撃つ、これも頭に直撃だ、勝負ありだワイバーンは森に墜落した。


村も街も無いから大丈夫でしょう。


「良くやった、お前達。戻れ」


もとに戻しアイテムBOXに入れる。


「大した物ね」

「空中戦の1発目だから上出来だよ」


「街が見えて来た、直接降りる訳には行かないからこの辺から歩こう」


「OK。あっ、OKって、了解と言う意味よ」


「分かった、これからもサキの世界の言葉を教えてよ」


「うん、良いよ」



街に着いたのは夕方だった、門番に水晶による犯罪歴の確認をされ、銀貨60枚を払って中に入った。


「ねえ、リック。みんな頭に耳が生えてる」


「ああ、ここは獣人の国だからね」

「さすが異世界ね、何でもありって事か」


「でも可愛いでしょ?僕、猫好きだから最高」

「確かに。あのもふもふ感は、たまらないわね」


「その通り。じゃ、宿を決めたら食事にしよう」

「うん、お腹空いた」


オープンテラスの有るお洒落なお店に入る事にした。


「これからどうするの?」


「冒険者の登録をする」

「冒険者になるの?」


「人に左右される人生は嫌だからね、1つの手段としてさ」


そう、下らない奴のせいで、人生をダメにされたく無い。


「その気持ち解るわ」


「サキは元の世界に戻るのが望み何だろう?」


「最初はそう思っていたけど、今は前ほどじゃ無い。帰っても家族がいる訳じゃ無いし」


そうだったのか……


「うん、それじゃ、こう考えるのはどう。いざと言う時の為に選択肢はたくさんあった方がいい。帰る方法は知っていて損は無いし、サキの目標の1つとして帰る方法を探す、と言うのは?」



「そうだね、帰れる方法が判っていれば安心だし、これからの張り合いになる」


「よし、僕も協力する。邪魔する奴や、なめてる奴はぶっ飛ばそうぜ」


「よっしゃ!」


「召喚魔法は、テレストラ王国だけが出来ると聞いていたけど、城の書庫で読んだ古書にはダンジョンで手に入れた魔道具を使って、不思議な体験をした人の話しが載ってたんだ」


「不思議な体験て?」


「その魔道具を使ったら、見た事も無い建物が並んだ所に転移したらしい。慌てて戻ったら魔道具は壊れてたんだって」


「一度しか使えない?」

「多分」


「そのダンジョンはどこに有るの?」


「場所は書いて無かった。でも入口に12の魔物の像があったらしい」


「そのダンジョンを探せばいいのね」


「もう1つは魔法大国ジェルロームでも召喚魔法を研究している」



「分かった、先ずはダンジョン探しね」

「そうだね、やること決まったし宿に戻ろうか」


「OK」



翌日、冒険者ギルドに行って2人で登録をした。


登録する時はサキの素性がバレないか心配したがギルドの魔道具では一般的なスキルしか判らないらしい、2人ともFランクからのスタートだ。


本屋でこの世界に有るダンジョンが載っている地図を買って調べたら、この国に2つあった、ここから西と南だ。



「南のダンジョンに行って西に行こうか」


「そう言う事はリックに任せる。頼りにしているよ」


「OK、じゃ馬車乗り場へ行こう」

「了解、ふふ」


南のダンジョンが有る街、ガレイラには馬車で2日かかる、馬車には俺達の他に猫族の女の子が乗る事になった。


Bクラスの冒険者だが、スキルも含めて実力はもっと上だ。1人なのも自信が有るからだろう。


「湿地のダンジョンに行くの?」


女の子から話しかけてきた。


「はい、まだ初心者ですが」


「そうでも無いと思うわ、いい雰囲気が出ているもの。2人なら大丈夫と思うけど、私の追っている盗賊がそこにいると言う情報が有るので、気をつけて下ね」


敵討ちか賞金稼ぎか?


「ありがとう御座います。気をつけます」



ガレイラの街に着き宿を探したが、どこも空きは無く、街の外れまで来た所でようやく2つ部屋を見つけて部屋に入る時、さっきの女の子がやって来た。



「すいません、どこも空いて無いの。相部屋お願い出来ないかな?」


「う~ん、じゃ、私の所に来る」

「ありがとう」


サキは気さくで優しいな。スケ番は仮の姿かな。


ーー


「兄貴、あの女ですぜ」


「しつこい女だ、だがここで終わりだ。まさかこの宿が俺達のアジトとは思っていまい」


「あいつらはどうします?仲間かも」

「あいつら全員分、明日の朝飯に痺れ薬を入れろ」


「へい」


ーー


いよいよ自由になってから最初のダンジョンだ、人の目を気にせずに出来る、別にクリアするのが目的ではないが楽しみだ。


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