第4話 サキのスキルは?

 久々によく眠れた。元の世界のサキと接したお陰かも知れない。


「リック様、おはよう御座います」

「おはよう、リナ。彼女、起きてる?」


「まだの様です」


疲れているか、仕方ないよね。


「じゃ、もう少し経ったら起こして僕の所へ来させて」


「かしこまりました」


暫くするとサキが来た。


「おはよう」

「おはよう、疲れたかい?」


「まあね」


「そこは申しわけ無いが、父上に会いに行ってから食事にしよう」


「ああ、分かった」


ーー


「父上、おはよう御座います」


「うむ、リックか。勇者殿、落ち着かれましたかな?」


「はい、リックのお陰で」

「これ!様を付けなさい」


「ちっ、うっせぇな、このババア」


ああ、もう、冷や汗が出るな。


「サリーヌ、勇者様の世界では名に様は付けない様です」


「そうで御座いますか。しかし、これからはお願い致します」


「徐々に教えますので、ではこれで失礼します」


「面倒くさいな」

「そう言うなよ、江戸時代と思えば良いよ」


「なるほど、でもリック、……リック様はそんな事をよく知っているな」


「この国は、勇者召喚をたくさんしているからね」


「ふ~ん」

「食事したらサキの能力について話そうか」


「分かった」



どれ、スキル鑑定を使ってサキを見る。


属性は水と土だ。魔力量も多いな、運動神経はかなり高い。


剣技、身体強化、気配察知、認識阻害、アイテムBOXのスキルが有る。


後はユニークスキルだ、対象物転移。何だろう?


「どうだ?」

「ステータスオープンって言ってみて」


大体、これでOKなはずだ。


「言えば良いのか?ステータスオープン」


「何か見えない?」

「前にテレビ画面みたいな物が見える」


「それじゃ、対象物転移って触ってみて」


「うん、触った。下に文字が出て来た。条件、目視出来る事・魔力量が有る事って書いてある」


ん~、対象物って言うのだから、自分ではなく物を転移させるのか?


「サキ、あの花瓶を自分の手元に来るように強く考えてごらん」


「分かった、んん~ん」


花瓶が消え瞬時にサキの手元に来た。サキの魔力量が少し減っている、そう言う事か。


「うわっ、何よこれ」


「サキのユニークスキルだよ。これが上手く使えればケンカに負けないよ」


「お、おう」


「いつかはバレると思うけど、人に言ってはダメだよ。この城で聞かれたら使い方が判らないって言った方が良いかも」


「分かった、そうする」

「後、サキが得意なのは水と土の魔法だよ」


「私、魔法が使えるのか?」

「うん、でも勉強しないと」


「うへぇ、……仕方ないか」



一週間後、サキのスキル鑑定が行われたが、ユニークスキルの対象物転移については過去に同じものは無く神官も困った様だ。


サキは俺に言われた通り「判らない」と答えたので取り合えず様子を見るらしい。


サキは先ず、ダンジョンで戦える様に剣術の訓練をやるそうで俺とは別々に鍛練する事になり、会うのは食事の時か寝る前くらいになった。


2ヶ月が経った時、俺がマリーナ先生に魔法を教わっている部屋にサキが来た。


「サキ、どうしたの?」


「バンタムの奴が、今日からリック様と一緒に魔法を勉強しろってさ」


バンタム親衛隊長が?……それだけサキが剣術の才能が有るって事か。


「そうか良かった、嬉しいよ」


「あら、新しい生徒さん」

「サキです、よろしく」


「ちょうどこれから攻撃魔法を習う所だったんだ、サキには向いてるだろう」


「サキ様は、魔法は初めてなのね?」

「はい、そうなんです」


「では、リック様はちょっとお休みね」

「ええ、見てる方が楽しそうです」


「体内の魔力を感じる所からね」

「はい、お願いします」



ーーーー



「バンタム先生、サキはどんな感じです」

「剣術に関しては才能の塊ですね」


「やっぱりそうでしたか」


「もうすぐダンジョンに、行くかもしれません」


「ダンジョンに?」

「彼女なら大丈夫ですよ」


「そうですね」


そうは言ったが心配ではある。大丈夫かね?




「スキル使いこなせてる?」

「ええ、色々な事を考えてる」


「それと1つ言っておく事がある」

「何よ、改まって」


「この世界は人の命が軽いんだ」

「それって?」


「先ずは、身分制度、そして奴隷がいて盗賊がいる。あ、魔物もね」


「江戸時代より酷くない」


「かもしれないね。だから相手によっては殺さなければならない」


「ああ、それか」

「どう?出来る」


「う~ん、ピンと来ないなぁ」

「まだ、それで良いか」




サキがダンジョンに行く日が来た、そんなに大きく無いし、バンタム先生も兵士達も行くので、問題無いだろう。


移動に1日かかるので5日間の日程になっている、サキは元気に出発して行った。


俺の方も順調に進んでいる、行動範囲も空いた時間に内緒でスキルを利用し、城の外に出て魔物を狩ってレベルを上げている。



いつもの様に、城下町ベリーズ北東にあるサダンの森に虫に乗ってやって来たが、森の気配がおかしい。


静かすぎる、ザコであるゴブリンに全く会わないのだ、考えられる理由は何だ?


偵察に飛ばしている虫、ドロデアが何か見つけたようだ、俺の頭の中にイメージが現れる、オーガの群れだ山から降りて来たのか、別の虫からのイメージを見る、オーガファイターだ結構な数だ。


嫌な予感がする。バンタム親衛隊長は今いないし、どうしよう。


この際、虫の力試しをして見るには、いい機会かもしれない。


異世界のGと言うべき悪食の虫、ジャバネを10頭アイテムBOXから出す、それを巨大化させる。


〔ギ、ギギィギ〕〔ギィギィ〕


おお、怖っ。俺の従魔と判っていてもゾッとする。


素早さ・防御力・攻撃力を補助魔法をかけ上げておく。


さあ、お前達、オーガ達を喰らい、殲滅してこい。


俺はここからどうなるか虫達の戦いを観る事にしよう。


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