第8話 オリエンテーション


放送を聞いた一樺たちは大広間に集まっていた。大広間では「何するんだろ?」や「なんか緊張するね」といった声が聞こえてきた。一樺と紗理那はキョロキョロと見渡したあと少しスペースが出来ている端の方へ行きその様子を見ていた。暫くすると先程の寮監がカツカツと靴の音を鳴らしながら歩いてきて生徒たちの前で止まった。そして一言。「これよりオリエンテーションを始める。全員静かに」と告げた。その声で周りの生徒は口を閉じ寮監をじっと見ていた。



「……よろしい。ではオリエンテーションを始める。まずはこの寮について。起床時間は6時半。着替えを済ませたものから食堂で食事を取り校舎へ。そして消灯時間は22時。施設の利用は消灯時間の30分前まで使えるようになっている」

寮監は淡々と寮の説明をした。生徒たちの数名が「起床6時半って早くない……?」「移動魔法使えばすぐなのに……」と呟けばその声に反応した寮監は「そして。寮での魔法の使用は緊急時以外禁止となっている。破ったものは反省文があるから心しておくように」と告げた。その言葉を聞いていた一樺は『……まぁ魔力の強さとかで魔法の強さも変わるから仕方ないよね……』と考えていた。



こうして30分程の寮説明が終わり解散を促された。一樺と紗理那は部屋へと戻ろうと踵を返せば生徒の1人が「なんなのよこの寮!規則規則って……移動魔法使っちゃいけないとかなんなの?」とぼやいていた。紗理那は小さく「……バカみたい」と呟いたあと「一樺早く部屋に行こ。話しかけられたら面倒だし」と一樺に告げて足早に去ろうとした。するとぼやいていた生徒が一樺たちを見つけ、「ねぇ!貴女たちもそう思わない?起床6時半だなんて早すぎだって!」と話しかけてきた。一樺は苦笑いを浮かべていれば紗理那はくるりと振り向き「そうね。規則は沢山あるから厳しいと思う。でも文句があるなら辞めれば?」とその生徒を睨みつけながら言った。一樺は瞬きしたあと「さ……紗理那言い過ぎだって。ほら行こ?」と窘めたあと紗理那の肩を押しながら自分たちの部屋に戻る途中その生徒の方へ振り向き『ごめんね』と口パクで伝えた。

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