第25話 食後はまったり
「そうだルナ。この後少し出掛けない?」
二人で遅めの夕食を食べていると遥は思い出したようにそう言った。
夕食が遅くなったのはもちろん二人でイチャイチャ――主に遥からのスキンシップによるものなので説明は不要だろうが、そんな日常が一段落してからのこの台詞にルナは首を傾げた。
「いいけど……でも夜の森は危ないって前に遥言ってなかった?」
「まあね。夜だと夜行性の魔物が厄介だからあんまり出歩きたくないんだけど……まあ、俺と一緒ならルナに危険はないから大丈夫だよ」
魔物にも時間帯によって活性化する魔物がいるのだが、夜行性の魔物は昼間仕止めるのは楽だが夜になると相当厄介なレベルまで強くなるので本来なら夜は特に危険だったりする。
まあ、遥からすれば昼だろうと夜だろうと魔物の強さが桁違いだろうと変わらずに瞬殺できるのであまり問題はないのだ。
本来はルナの安全のために夜出歩くのは控えているが今夜に関してはどうしてもルナを連れ出したいので誘ってみたのだが……
「まあ。遥がいいなら私も行くけど……」
ルナとしても遥と出掛けられるのは嬉しいので、遥が大丈夫だというのなら特に反対することもないのでそう返事をする。
そんなルナの返事に遥は笑顔を浮かべた。
「よかった。じゃあ、食休みしてからゆっくり行こうか」
「うん……じゃあ、お茶をいれてくるね」
自然にそう言って台所に向かうルナの後ろ姿に、つい先日まで箱入りの貴族令嬢だったとは思えないほどの自然さを感じる遥。
嫁度が上がってきたことになんとなく嬉しさを感じつつも、素直に頷いてくれたことに関して若干ホッとした気持ちになる。もちろんルナが断るとは思ってなかったが……それでもやっぱりこれから行うことに対する緊張も若干あったので、心底よかったと思った。
(今夜は雲もなさそうだし……大丈夫かな?)
この世界にも四季はちゃんとあって、夏は暑いし、冬は寒い。
春、秋は過ごしやすいが、今の時期は春と言ってもいいくらいの時期で、天候も変わりやすいので少し心配ではあったが、窓から見える空には雲は見当たらないし、尚且つ短時間で済む用件なのでそこまで心配する必要はないだろうと安心する。
(結婚式までの日程を考えると今日がギリギリのラインだしな)
サプライズ結婚式を秘密裏に進めていながらも遥は本日のためにそれなりに準備をしていたので天候のみが不安だったが、まあ、最悪雨雲があれば消し飛ばすくらいはしようかと思っていたので、余計な手間が増えずにすむのは助かるのだ。
とはいえ、別に雨雲を消し飛ばすことくらいなら遥からすればそこまで難しくはないが……あまり自然に手を加えることはしたくないので、晴れてくれてよかったと思った遥だった。
「お待たせ遥」
そんなことを考えているとルナがお茶を持ってきてくれたので、そこで思考を切り替える。
「ありがとうルナ」
「うん」
遥の目の前にお茶を置いてから自分の席の前にお茶を置いて座ろうとするルナ。
そんなルナを見て遥は手招きしながら言った。
「ルナ。こっちに座りなよ」
「えっ……?べ、別にここでいいよ」
恥ずかしそうにそう答えるルナ。
とはいえこの反応は別に恥ずかしいから嫌なのではなく――反射的にそう言ってしまっただけで、遥の側にいられるのは嬉しいという照れ隠しが遥には手に取るように分かるので少し強引にでも誘うのが互いのためなのだ。
「いいから。ほら――」
そう言って遥はルナの手をひくとルナを自分の隣……ではなく、膝の間に案内して座らせた。
「は、遥……!」
「ダメだった?」
そう聞くとルナは恥ずかしそうに俯いて言った。
「だ、ダメじゃないけど……なんで膝の上なの?」
「そりゃあ、ルナを抱き締めやすいようにしたかったからね」
「で、でも……その、私重くない……?」
「全然。むしろ軽すぎて飛ばされないか不安だからね。こうして――」
そう言って遥は少し強めにルナを抱き締めて言った。
「どこにも行かないように俺がルナを捕まえておくんだよ」
「――――!?お、お茶飲めないし……」
その台詞にかなりドキリとしつつも最後の抵抗とばかりにそう口にするルナに、遥は笑顔で言った。
「大丈夫だよ。俺が飲ませてあげるし。なんなら口移しでもいいけど、どうする?」
その言葉にルナはしばらく顔を赤くして視線をさ迷わせてから……ポツリと言った。
「の……飲ませてください……」
「口移し?」
「普通で……お願いします。口移しはその……別の時に……」
口移し事態は嫌ではないというような葛藤が見えてますます可愛い反応をするルナに、かなりの萌えを感じつつも遥はあまりいじめすぎないように笑顔で頷いた。
「わかった。じゃあしばらくこのまま抱き締めてもいいよね?」
そう聞かれてルナはしばらく黙ってから……静かに頷いて遥の方に身を任せるようにした。
それがOKだという返事だとわかった遥は痛くないように優しく膝の上に座るルナを抱き締めて――その心地よさを味わった。
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