【PV10万達成】悪役令嬢に魅かれた男

山宗猫史

彼女に出会うまで

第1話 乙女ゲームの登場人物に魅かれた男

「お兄ちゃん!お願い!」


妹が顔の前に両手を合わせ、合わせた手からちらっと上目遣いで見てきてお願いをしてくる。

妹じゃなかったら可愛いと思ったかもしれない。


「一生のお願い!」


妹からの一生のお願い……

何度も聞いたことがあるぞ、妹よ。


断ると不機嫌になって、さらに妹を大好きな両親も混ざって面倒臭くなるから、仕方がない……

やってやるか……。


「わかった。」


妹にお願いされたのはよくある乙女ゲームの全シーンのイラスト回収作業。


王候貴族制があり、魔法がありレベルもあり、魔物がいる世界でヒロインが王族や公爵などの高位貴族子息や近衛騎士や王宮魔導師などの高い役職やらの子息の顔面偏差値が高い男達との恋愛し己を鍛えて世界を共に生き抜く恋愛シミュレーションRPG。


ゲームは好きだが、男を攻略するなんて、苦痛だ……。

男のはだけた胸板とか水に濡れた滴る男とか見たくない……。


全キャラ隠しキャラのハッピーエンドとバッドエンドを達成した後に解放される逆ハーレムのハッピーエンドにバッドエンド、さらにこれ?乙女ゲームじゃないだろとツッコミを入れたい誰とも恋愛しない最悪な女王エンドなんかもあった。


攻略対象というか国民全員が奴隷化だ。

なぜこんなルートを入れたのか?

ゴーサインを出したのか?を作製陣に聞きたい。


プレイ後は彼らに殺意が沸いた。


イベントシーンの回収を全て終わらせた。

プレイしてあるキャラクターに魅かれた。

一周目の登場から魅かれた。


二週目以降、腹いせで各キャラのバットエンディングを何度かやると妹に「早く終わらせて!」と怒られた。

渋々、渋々全てのシーンを終わらせた。


そして、毎回断罪イベントで号泣した。


「彼女を娼婦だと言ったな!」

「ええ、言いました。」

「彼女を侮辱するな!」

「私は『婚約者がいる殿方達に馴れ馴れしくしすぎではありませんか?娼婦のように見えますよ?あなた。』と言いました。」

「仲良くして何が悪いんだ!こんな心が狭い女だとは思わなかったぞ!」

「仲良く?私は婚約者ならまだしも、兄弟でも婚約者でもない殿方と手を握ったり腕を組んで歩くことや二人っきりで抱き合うことはやりすぎではないかと言いたいのです。」

「……」

「彼女を第二夫人、妾にするという報告も受けていませんし。」


浮気じゃんとツッコミが漏れた。


この令嬢は学力魔法上位三位に入るくらい頑張っているんだ。

頑張っている描写はないけど……。


見た目が好みというのも魅かれた理由の一つだ。


金髪のロングストレートヘアーは実際見たら輝いて見えるんだろうな。

少しつり目な赤い瞳は意思の強さを感じさせる。

すっと通る鼻筋、男装が似合う整った顔立ちは格好良い女性になるだろう。

背筋を伸ばし堂々と立っている姿も良い。


可哀想だなと思い、秘かに応援していたら、断罪イベントだ……。


二週目からはもうこの会話から号泣だ。

うん、令嬢は正しいことを言っているよ。

なんで、なんで誰も彼女の味方をしてくれないんだっ!


一度見た断罪イベントだからスキップすればいいのだが、それはしてはいけないと既読スキップを解除し、ぼやける視界で何度も袖で涙を拭きながらしっかりと見届けた。


何度も……

全てのハッピーエンドルートの断罪イベントを見届けた……


文字が一気に出る設定にし基本ボタン連打で読まないで進め、彼女の名前が出てきたり画像が出てきたらログを見て少し遡り、話を読んだ。

彼女が関わる話は全てスキップせずに読んだ……


最後の女王エンドは最悪だった……

コントローラーを投げつけたかったが、ぎりぎり、ぎりぎり我慢した。


彼女が……

クソッ!

思い出しだけで胸糞悪い……。

なぜっ?

彼女だけあんな目にっ!


最悪な気分のまま、全てイラストを回収し終わりゲーム器ごと妹に返した。

ありがとうのあの字の感謝もない。


気持ちが晴れないまま数日が経った。

時々彼女が脳裏に浮かぶ。ifストーリーでもなんでもいいから彼女の幸福を願った。


ある日、夢を見た。


魅かれた彼女が、最後まで涙を見せなかった彼女が涙を流しながら「助けてっ!」と手を伸ばす夢を見た。

その手を掴もうと俺は助けようと全力で手を伸ばした。


彼女の手に触れたところで夢から覚めた。

俺は手を天井に伸ばしていた。


ぼやける視界に映るのは可笑しいことに小さなぷっくりとした手。

意識して手をグーパーグーパーとするとその小さなぷっくりとした手も同じ動作をした。

また意識して左右に振ると、またその小さな手も同じ動作をした。


頬を摘まんだ。

痛くて感情が抑えられなくて泣き叫んだ。


「おぎゃあああ」と赤ちゃんのように。


そして、泣き続け、いつの間にか眠ってしまっていた。


ーーーーー

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いじゃん、続き早く上げろ。と思ったら☆☆☆、面白いなぁと思っても☆☆☆、少しでも気になるな。と思っても☆☆☆をつけていってくださいな!

冗談です。

前から☆☆☆、☆☆、☆をつけてください!

面白くなってきたら☆を足してくださいな!

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