第9話唯一の癒しな存在

宮間の隠れた正体が暴かれ、数日が経過した放課後。

下校していた俺は、背後から呼び止められる。

「柳葉せぇ〜んぱぁいぃっ!待ってくださぁ〜いっ」

呼び止める声が近付いてきて、俺は足を止め、振り返る。

「こんにちは。澪詩さん、どうしたの?」

駆けてきたセーラー服を身に纏う女子に挨拶をする俺。

「えっと、あのっ……こんにちは、柳葉先輩。偶然、柳葉先輩をお見かけして……あの、そのーぅ……一緒に帰りたいと思い、まして……その、先輩とご一緒しても宜しいですか?」

緊張した面持ちで返答する彼女。

「良いよ、澪詩さん。別に急いでることもないから。……じゃあ、帰ろっか」

「はいっ!……柳葉先輩の高校って楽しい、ですか?」

弾ませた返事をした彼女が歩き出し、当然の質問を訊いてきた。

俺は彼女の隣を歩きながら、返答した。

「それなりに……って感じかな。澪詩さんなら、どの高校に進学しても楽しくやれると思うよ」

「そうなんですね。柳葉先輩にそう言ってもらえるなんて嬉しいです」

「あはは……澪詩さんこそ、どうなの?」

苦笑を漏らして、彼女の近況を訊く俺。

「えっと、ですね……ちょっと友達とうまくいってないんです、今……」

彼女は、彼女らしからぬ冴えない表情で返答した。

小動物系な澪詩恵みおしけいの顔にかげが射したことに驚きを隠せない俺。

「澪詩さんでもそういうのってあるんだね。大変だね……」

「はい……」


中学の後輩で、俺に懐いている唯一の女子——小動物系な澪詩恵。俺にとって、彼女が唯一の癒しな存在である。

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