第6話豹変したクラスメイトにたじろぐ

「あのぅ、柳葉くん……」

俺の表情を窺いながら、控えめな声で声を掛けてきたクラスメイトの女子。

「どうした、茜音あかね?」

「教室だとあれだから……私と、来て欲しいの」

宮間茜音は、周囲を窺いながら身体をもじもじさせて答える。

「ああ、別に構わないけど」

返答した俺は、椅子から腰を浮かせて教室を出ていく彼女の背中を追いかける。


彼女が扉の閉まった空き教室の前で脚を止め、振り返らずに扉を開けて教室に脚を踏み入れる。

「ちょっ……茜音っ!?」

彼女に続き空き教室に脚を踏み入れると、振り返った彼女が勢いよく俺の胸へと飛び込んできた。

「柳葉くんっ、私をメチャクチャにしてっ!」

「えっ!?ちょっ……なッ、なに口走ってんの!?茜音ッ、正気?聞き間違いじゃ……」

「私は、正気です。正常です、聞き間違いじゃありません。貴方なら……柳葉くんなら、私に快感を味わせてくれるって——」

頬を紅潮させ、瞳をギラつかせ、呼吸を乱した——変態さながらの狂気じみた様子の彼女に背筋に冷たい感覚がした俺だった。

「ちょちょッッ、と待ってッッ!そのギラギラさせた目、怖すぎるんだけどッッ!それに息が乱れすぎだし、どうしたッッ?本気マジで、ヤバいって……茜音、だよな?誰かに指示か——」

「私ですよ、宮間茜音です。私のどこがおかしいですか?ねぇー柳葉くぅ〜んぅっ、ねぇ〜どこがおかしいか言って——」

大人の女性のような色気を感じさせる吐息を含んだ声とリップ音を強調させた攻めの姿勢の彼女にたじろぐしかなかった俺。


普段の彼女からは、異性を堕としにかかろうなんて姿は想像出来ない。故に——現在いま状況こうけいが理解出来ずにいる俺なのだ。


だれかぁぁーーーッッ、助けてぇーーーッッ!



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