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「よし、じゃあいよいよ私の出番だな」

 と三毛猫は素直に言った。

「出番? 出番ってなに?」

 素直は言う。

「それはもちろん、ここから逃げ出すために私の力が必要になると言うことだ」と三毛猫は言った。

「ここから逃げ出すために君の力が必要になるって、どうゆうこと?」と素直は言った。

 そんな素直と三毛猫の会話を仄は素直の隣で黙ったまま聞いている。

「もたもたしている時間はないぞ。逃げると決まったからすぐに逃げる。考えるのは、あとでいい。この家をきちんと逃げ出したあとでな」と三毛猫は言った。

「うん。わかった」と素直は言った。

「なにがわかったの、素直くん」とぽかんとした顔をした仄は言った。

「この子が僕たちがこの家から逃げ出すのを手伝ってくれるって」と素直は言った。

「本当? 猫さん」と三毛猫を見ながら仄は言った。

「ああ、本当だ。もっとも、実際にこの家から逃げ出すことができるかどうかは、お前たち次第だと思うけどな」と三毛猫は言った。

 その三毛猫の言葉を素直は仄に伝えた。(もちろん、仄には三毛猫がなにをしゃべっているのか聞こえたりしていないからだ)

 すると仄はとても嬉しそうな顔をして「ありがとう猫さん。猫が嫌いだなんて言ってごめんなさい」と仄は三毛猫にそう言った。

 するとその仄の言葉を聞いて「ふん!」と三毛猫はそう言った。

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