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「この絵は仄ちゃんが描いたの?」素直はいう。

「うん。そう」と仄はいう。

「すごいね」と仄を見て、素直はいう。(素直の自分を見るきらきらと輝く大きな目を見て、仄はまた、少しだけその白い頬を赤く染めた)

 それから少しだけ二人は無言になった。(その間、二人はベットの上に座ったままで、部屋の壁一面に描かれている仄の描いた奇妙な魚たちの絵を眺めていた)

「手を握ってもいい?」

 と、唐突に顔を赤くしながら(下を向いて)仄は素直に言った。

「うん。いいよ」素直は言う。

 すると仄は、そっとその自分の手のすぐそばにあった素直の手の上に自分の手を重ねた。

「……あったかい」仄はいう。

「仄ちゃんの手は冷たいね。ひんやりしていて、気持ちいい」と素直は言った。

 薄暗い部屋の隅っこのほうにある闇の中で三毛猫が『ふん!』と言った。その声を聞いて素直はその声が聞こえた闇に向かって目を向ける。

「猫が鳴いている」

 仄がいう。

 どうやら素直にはちゃんと猫が人間の言葉を喋っているように聞こえるのだけど、仄には(ほかの人間たちと同じように)猫が「にゃー」と鳴いているようにしか、聞こえていないようだった。

「少し『お話』をしてもいいですか?」

 と、仄が言った。

「うん。もちろん」と素直は言った。

 でも、お話をする、と言ったあとも、しばらくの間、仄はなにもしゃべらなかった。(その間、素直はじっと仄がしゃべり始めるのを待っていた)

 それから唐突に、仄は素直に向かってお話を始めた。

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