誘惑に負けて精気を奪われたら幼馴染みが消滅する

 突然の事に剣司は何をされたのか、はじめは分からなかった。

 だが、目の前にある舞の顔と、唇の感触でようやくキスをされていることに気が付いた。 その事実に狼狽するが、侵入してきた舌に口の中を舐られ、その気持ちよさに剣司は溺れて貪り始めた。


「ぷはっ」


 満足したのか、飽きたのか、兎姫がキスを終え離れたとき、剣司は名残惜しいと思った。


「どうじゃ? なかなか良いじゃろう」

「あ、ああ」


 気持ちよかったのと激しい疲労で頭の回転が鈍っていた剣司は、惰性で頷いた。


「ほほほっ、そなたの精気はなかなか良いのう」


 兎姫の言葉で自分が精気を吸われた事に剣司は気が付いた。

 鍛錬や妖魔退治で精気を使いすぎたときのように、妙に身体が重く、力が入らない。

 お役目を果たさなくてはならない身なのに妖魔に吸われたことを剣司は恥じた。

 対照的に兎姫は、美食を得たような笑みを浮かべて喜ぶ。


「気に入ったぞ。いつでも精気を吸えるよう、其方をこのまま連れて行くとしよう。しかし、その前に名残惜しいがこの身体を捨てねばのう」


 黒光りするピッチリしたスーツと、ロンググローブ、ロングブーツを愛おしそうに兎姫は見つめた。

 指先で艶美な曲線を描く身体を覆い、妖しい照り返しを放つスーツの表面を撫でながら兎姫は残念そうに言う。


「な、何故だ」


 怪しくも不穏な兎姫の声に不安を感じた剣司は恐る恐る尋ねると、兎姫は答えた。


「この巫女の身体が妾の力を抑える封印を残しておるので妾は元の絶大な力を出すことが出来ぬ。この麗しい身体を捨てるのは惜しいが、力を取り戻すためには、やむを得まい」

「舞はどうなるんだ」

「妾を縛る身体じゃ。バラバラに引き裂かれるじゃろう」


 兎姫の言葉に剣司は血の気が引いた。


「や、やめろ!」


 舞がバラバラになると聞いて、剣司は止めるように兎姫に大声で言う。


「嫌じゃ」


 だが、あっさりと兎姫は、はね除けた。


「妾を縛り付けるものなど、全て壊してくれよう。そのためにも、そなたには、その膨大な精気を貰うとするかのう」

「断る!」

「ほほほっ、その強情がいつまで続くかのう?」


 妖艶な笑みを浮かべて兎姫が顔を剣司にぐいっと迫ると、剣司はその美しさに息をのんだ。

 長いマツゲに、切れ長の瞳、小さな唇は妖しい笑みを浮かべ蠱惑的だ。


「!」


 兎姫に乗っ取られた舞の身体が剣司に触れると剣司の身体に電流が走った。

 先ほどは慌てて気が付かなかったが、破れた禰宜の衣装から、はだけた肌に触れる部分が刺激的すぎる。

 兎姫の身体に張り付く黒光りする布の表面がツルツルしていて触るだけでも気持ち良いのに、布越しに伝わってくる身体の熱と柔らかい感触が剣司の身体を興奮させる。

 大きく開いた胸の部分から深い谷間の奥から蒸れて香り出す舞の身体の甘い香りに剣司の鼻がくすぐられ、頭が靄がかかったようにクラクラする。


「これでも手を出さぬか。ならばこれでどうじゃ?」


 兎姫は一度舞の身体を起こして剣司から離れた。

 剣司は誘惑してくる身体が離れたことに安堵すると共に、名残惜しくも思う。

 だが、安堵出来たのは一瞬だった。


「あうっ」


 新たな箇所、剣司にとって非常にセンシティブな部分が舞のセンシティブな部分に触れた。

 離れた舞の身体の感触を思い出し敏感になっていた剣司の身体は過剰に反応し、甘美な刺激が流れ剣司に声を上げさせた。


「ほほう、気持ちよさそうじゃのう」

「そ、そんな、ことはない! あうっ」

「言葉で否定していても、気持ちの良さそうな声を出しておるがのう」


 柔らかい丸みが剣司の男の象徴を摩ると、甘い電撃が走り、剣司に声を上げさせた。


「ち、違う!」


 興奮すると自分の精気が増えてしまい兎姫に吸われて舞の身体を食い破られてしまう。


「俺は興奮なんてしないぞ! うぐっ!」


 剣司は必死に自分の興奮を抑えようとした。


「ほほほ、これだけ触れても声を我慢するとは大した精神力じゃ。じゃが、身体は正直じゃのう」


 摩っている剣司の部分が徐々に堅くなるのを兎姫は感じた。

 堅く太く伸び上がり、脈動さえ感じ取れるほど興奮している。

 舞の身体の気持ちよさに剣司の身体は反応し快楽の信号が過電流となって駆け巡り、快楽の渦へ剣司を落とそうとしていた。


「ううっっっ」


 押し寄せる快楽の津波に呑み込まれようとする身体を剣司は精神力で押さえつけ必死に耐えた。

 甘い声を上げないよう歯を食いしばり、舞の身体を求めて暴れる本能を精神力で抑えようとする。


「ほほほ、耐えるのう」


 剣司が快楽に耐えようとして苦痛に歪む顔を見て兎姫は諧謔に満ちた笑みを浮かべると、身体を倒して顔を近づけた。

 再び豊満な胸が剣司の身体に当たる。

 ファーの毛先が肌を刺し敏感にするとツルツルとした肌触りの良い感触と包まれた柔らかな刺激をより明敏に意識してしまう。

 温かい体温がじんわりと剣司に伝わり、心臓の鼓動を早く強くしていく。


「ほれ、どうしたのじゃ? 気持ちよくはないのか?」


 耳元で囁く兎姫の甘い吐息が剣司の耳にかかり、悪魔的な響きが剣司の脳を揺さぶる。

 だが剣司は耐えた。

 ここで陥落したら、舞が消滅してしまう。

 愛しい舞の身体に溺れてはダメだと言い聞かせ、堪える。


「何も我慢する必要は、最早ないのじゃぞ」


 だが兎姫の誘惑は終わらない。

 兎姫は剣司の手を掴み、自分の、舞の胸を握らせた。


「長年好いていた女の身体。欲しくないのか?」

「だ、誰が、舞を操る、お前なんかに……くっ」


 剣司は手を放そうとしたが、意に反して指が柔らかい胸に沈んでいく。


「ほほほッ身体は正直じゃな」


 大きく張りのある胸の感触、柔らかくも適度な反発に剣司は驚いた。

 しかも胸元が大きく開き、乳房の下半分だけしか布で覆われていない。

 布で覆われていない上半分、指先の部分が柔らかい肉に埋まっていく。

 下半分も滑らかな布地に覆われ、布の向こうの柔らかい肉の感触がゴム鞠のような心地よい感触を何時まで握っていたい。


「ああん」


 しかも、握る力が強くなるごとに兎姫が甘い声を上げる。


「もっと、抱きしめておくれ」


 兎姫が囁くと剣司は自然と両腕を兎姫の、舞の身体の背後に回した。

 腰まで開かれた背中の艶やかな肌を撫でる。

 腰から下はスーツに包まれているが、その下の柔らかい肉質に指が吸い込まれる。

 思春期で少し太ったかと最近に気にしていた舞だが、出るところは出ていながらスレンダーな体型だし、肉付きも良い。


「もっと撫でておくれ」


 剣司は言われるがままに兎姫の、舞の身体を触った。

 スーツによって引き出された身体のラインは滑らかで触っていて気持ちよい。そしてその下の柔らかい肉質は剣司の好みで何時までも触っていたくなる。

 だから、滑らかな布地を持つグローブに包まれた細い指で顔を挟まれ、引き寄せられるのを振りほどく力は、骨抜きにされた剣司にはなかった。

 そのまま柔らかい唇が触れるとむしろ貪るように舞を、兎姫を求めた。

 兎姫は求めに応じ先ほどより濃厚に舌を絡め、剣司の中に踏み込み舐り、精気を吸い出していく。

 剣司の精気は吸い出され、兎姫の身体に入っていく。


(ああ、なんという美味で、力強い精気じゃ)


 自分の身体に入ってくる剣司の精気の熱さと力強さに兎姫も、虜となり夢中でを貪る。

 入り込んできた精気が身体の隅々にまで行き渡り力が湧き上がってくる。


(ああ、なんと素晴らしい)


 身体が熱くなり、漲る感覚に兎姫は酔いしれる。


(これならば、この封印せし身体を破ることも出来る)


 身体に満ちる力で解放される事に確信を持った兎姫。


「ま、舞」


 兎姫の誘惑を振り払おうとする剣司だが、長年の鬱憤が積み重なった欲望を止めることは出来ず、舞の身体を求め、名前を呟き、これまで抱いてきた感情を思い起こしながら強く抱き寄せた。

 これまで募っていた思いを解き放つように強く抱きしめ、舞の身体を剣司はなで回す。

 直後に兎姫の中で異変が起きた。


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