第18話 GO!FOR!VICTORY!!〜愛央の切実な願い〜

たく「やべ何時だ・・・」

あお「朝早いね」

たく「まだ3時かよ」

あお「でも不安だから起きたんでしょ?」

たく「やっぱバレるよなぁ」

あお「あかせなコンビが5時に来るからそれまでにメイク終わらせちゃおっ!」

たく「あのコンビ、くるんや」

あお「あいちゃんも今日は4時に起きるから、たっくんといまだけ2人だよ」

たく「着替えてメイクしてこい。最強のハーフアップ作ってやるから」

あお「うん!」


うちはそう言って着替えてメイクをした。だって体育祭だもん!


あお「じゃじゃーん!」

たく「さすがだな・・・」


最強のハーフアップを作ってもらって嬉しいと思う反面、今日だけ応援したくないと心の中で思っていた。例年通り、チア部35人で選手の応援をするんだけど、今年のたっくんはよく不機嫌になって、最終的に自己嫌悪になってしまうこともよくあったの。たっくんなりに無理してたんだと思う。我慢して、練習して、それでも結果が出なくて周りから言われ、先生にも怒られ、最終的に自己嫌悪に至って夜ご飯も作れなかったことがあった。だからうち、チアリーダーじゃなくて妹としてたっくんに寄り添いたい。今日だけはたっくんの横にいてあげたい。そう思っている。でも部活やってる以上は今年も選手の応援をしなきゃね。そしてうちは体育祭の前にたっくんへこう言った。


あお「たっくん」

たく「おう」

あお「帰ってきたら、チア封印する」

たく「はっ?」

あお「1日中応援しないから」

たく「どした」

あお「だってたっくん自己嫌悪起こすもん。ほぼ」

たく「やっぱり・・・」

あお「でもね」

たく「ん?」

あお「愛央がチアをやらないのは理由があるの。たっくんが自己嫌悪になったりする以外にも」

たく「ほう、それはあんだ?」

あお「妹として応援するのは当たり前。だけど・・・妹だったらもう少しお兄ちゃんに寄り添って、辛い時でも一緒にいてあげたい」

たく「だから封印か」

あお「うん」

あい「ねーねー・・・」

たく「おきてきたな」

あお「ぎゅーね。お着替えしよっ」

あい「きゅぴ!」


あいちゃんに服を着せるたっくんの目には、どこか不安なところがあった。うちはたっくんの横に行って、一緒に手伝った。


たく「さてと、靴下履いて・・・これでOKだね」

あい「あーちょ」

たく「どういたしまして」

あお「たっくん」

たく「あに」

あお「だいじょーぶ?」

たく「いや・・・大丈夫じゃねぇよ」

あお「無理しないでね」

たく「体育祭終えたらどうなるのか・・・」


不安のままあかせなも合流したあとに、学校へ行こうとしたたっくんは、バス停の前で立ち止まった。


せな「どうしたの?」

あか「もしかしてバス?」

たく「やべーの入ってる・・・」

あお「なになに?」

たく「いつもなら6時42分発方南高校行が大型なんだけど・・・今日は小型車」

あお「えっ!?」

せな「つまり!?」

たく「レア運用ひいた」

あお「乗る?」

たく「うん」


土曜日の小型車はうちらのおじさんが担当だから、勝手に引いたってことになるんだって!


学校に着くと、瀬奈はハーフツイン、明里はポニーテールを作って髪にリボンをつけた。うちは髪を整えて、笛とポンポンを持った。


せな「明里もあおっちも、何色のポンポン持ってきた?」

あか「私赤色!」

せな「あたしも赤色だよ!」

あお「うちら何持ってきたっけ?」

たく「わがんね。あさってみれば?」

あお「うちも赤色だった」

たく「いっしょじゃねぇか!」

あお「えへへ。でもこれ1番最強だもん!」

たく「ほーん」

あお「せーの!」

3人「たっくみ!がんばれーっ!」

あお「(´。>ω<)ぎゅー」

たく「いたたた。チア部の本気かぁ?」

あお「うん!」


体育祭の開会式が終わってから、うちらチア部35名全員で選手全員を応援する。うちの笛の合図で選手全員を応援したあと、うちらはたっくんのところに行った。


せな「どうでした?」

たく「なんかがんばれそう」

あお「もー、たっくんったら・・・」

たく「愛央あんた忘れてねぇか」

あお「うつ悪化してるのは気づいてるよ。だってそじゃなきゃうちチア封印しないもん」

たく「さすがだ。さてと、やりますか」

あお「最初の競技は?」

たく「【悲報】100m走」

あお「はっ!?」

たく「終わった」

あい「きゅぴ・・・」

せな「たくみんなら」

あお「あっ・・・」

あか「できるはず!」

あい「あい!」

あお「たっくん、がんばって」


久しぶりにうちはたっくんへキスした。勝利の願いと、不安を打ち消したいから。


そんなこんなで迎えた100mはたっくんが第1位!うちらもあいちゃんも大喜び!


あい「たったー!!」

あお「たっくん!!」

たく「おいおいどうしたぁ?」

あお「やったね!1位!!」

たく「おう。ありがとう」

あお「なにー。つめたいんですけどー」

たく「冷たくねぇよ。さてとー、次は・・・」

あか「たくみ兄さん!綱引きですよ!」

たく「うわすぐ出番やん」


たっくんはそう言ってたけど実は最後。心に余裕はあるって言ってた。


遡ること2日前の夜・・・。うちとたっくんはこう話してた。


たく「頑張れって言われても頑張れねーかもなー」

あお「大丈夫!たっくんなら行けるから!」

たく「前日本調子でないの知ってるだろお前」

あお「だからだよ!」


うちはこの話を思い出した。少ししてから、両手にポンポンを持ったまま、あいちゃんをだっこしてたっくんのところへ行ったの。


あい「たーぁ」

あお「やっぱり、不安だね」

たく「おう」

あい「たったーでんちゃ」

たく「ほい」

あお「早っ!」

たく「常に持ってるからね」

あい「きゅぴー」

たく「さてと・・・行くか」

あお「たっくん!」

たく「あ?」

あお「・・・がんばっ」

たく「・・・うん」


うちはそう言ってたっくんを送り出した・・・けど、大丈夫かな。


あお「がんばって」


うちはそう呟くしかなかった。ほんとは大きい声出して応援したいのに、なぜかできなかった。でも、うちの思いはたっくんに伝わってる。一生懸命頑張る姿に、うちは応援したくなった。苦しくて辛いのに、あんなに頑張るたっくんが輝いてた。



全ての競技が終わり、うちのクラスは2位だった。うちは準優勝でよかったーって思っても、たっくんはダメ。1位以外は負けと同じだって言ってる。極真空手をやってた時から。


続く

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