我こそは

「カーッはっ、はっ、はっ、思い知ったか、人間共め」



バカァンッ、ガアアアンッ


「ぎゃあああ!」、「助けてくれぇ!!」


角のある鬼のような大きな男達が、手に持つ大きなこん棒を振り回し、彼らより一回り小さな、鎧を着た兵士達を吹き飛ばしていく。


巨人対小人の戦いのように、大きな男達がその強力な腕力を使い、小さな兵士達を圧倒していくのだ。




グレゴリア歴、637年。

オルデアン歴、321年。


圧倒的な武力を誇るガルダ帝国は、ヒト族の連合軍に対し、休戦協定を無視した奇襲攻撃をしかけてきた。


今から10年前、ヒト族はオーガ族のガルダ帝国に対抗する為、オーガ族が使えない魔法を武器に戦線を構築。

ガルダ帝国軍に拮抗する力で、戦線を維持し、膠着状態に持っていく事に成功する。

これにより、ガルダ帝国とヒト族連合国との間に、休戦協定が結ばれた。


こうしてつかの間の平和が訪れ、10年の月日が流れた。


だが、そのつかの間の平和も、長くは続かなかった。

世代交代した次代のオーガ族の王、ブラッキンがヒト族に奇襲攻撃を仕掛けてきたのだ。


奇襲の狙いはヒト族の守りの要、魔法使い達の村の襲撃だったのである。

そして襲撃は成功し、ヒト族達はガルダ帝国の武力に対抗しうる、貴重な戦力を失う事となる。


勝機を得たガルダ帝国は、一気に大攻勢を仕掛けてきた。

これによりヒト族連合軍は、最初から劣勢を強いられ、敗れるのは時間の問題となっていた。



「ガハハハ、もう諦めろ。魔法使いのいないお前らは、もう終わりだ!」


オーガの将軍ガルシアは、ヒト族連合軍の兵士達に向かって叫んだ。

オーガの中でも一際ひときわ大きく、圧倒的な力を持つガルシア。

強者主義のオーガ国家にあって将軍の役職にあるのは、かなりの実力者に他ならない。



「怯むな!、我らはヒト族の最後の希望、ここで負ける訳にはいかないのだ!皆の者!我に続け!ウオオオーッ」


「皆の者、カイル殿下に続け!行けーッ」


ウオオオーッ、オーッ


絶望的な状況の中、一際、気を吐いている部隊があった。

この主戦場の国、オルデアン王国軍とその国王、カイル二世である。


「ガッハッハッ、此処で潔く散るか、オルデアン王よ」

「抜かせ、ガルシア!これ以上の我が国の蹂躙は許さん!!」


ガキィィーンッ


ガルシアが剣を振り下ろすが、カイルがそれを受け止める。

「ほう?我が剣を止めるか。なかなかよの」


「はぁ、はぁ、はぁ、私は負けない!」

「くくっ、だが、それも、だがな」


「?!」


ブンッ

「ぐあああっ!?」、ドカアアーンッ


ガルシアは受けていた剣を、その強力な剛力で、カイルごと、すくい上げるように大きく振った。


「かはっ?!」

その勢いでカイルは、背後の城壁まで吹き飛され、着ていた鎧兜ごと、壁にめり込んで吐血した。


「で、殿下ーっ!おのれぇ、ガルシア!」

カイルの様を見せられた、カイルの側近の兵士達。

十数人が、一気にガルシア一人に迫る。


「「「「「死ねーっ、ガルシア」」」」」

「お前らなど、雑魚ですら無いわ」


ブンッ

一振だった。

その、たった一振で、ガルシアに群がった十数人の兵士の首が、空に舞った。


「ガーハッハッハッ、何だ?わし一人でいくさが終わってしまうわ。興ざめだな」


つまらなそうにしたガルシア、背中を見せると、後ろに控えていたオーガ兵士達に手を振る。

すると、一気にオーガ兵士達が前進、次々とヒト族の兵士達を討ち取っていく。


もはや、いくさですら無く、一方的な狩り場と化した戦場は、ガルダ帝国の完全勝利になる事が確定した。

この城壁の向こう側は、無垢なオルデアン王国の民が住まう最後の王都。

間も無く、ヒト族完全奴隷化を宣言したガルダ帝国軍が、進軍を開始する。

ヒト族連合軍が敗れた今、オルデアン王国民の運命は決定した。


ガラガラガラッ

「ま、まだだ!まだ、オルデアン王の私がいるぞ」

城壁に打ち付けられたカイルが、瓦礫の中から、剣を杖にして、ふらふらと立ち上がる。


「グアハッハッ、オルデアン王、死に損ないに何が出来るか。そこで、お前の国が滅びるのを眺めているがいい」

それを見たガルシア、大笑いで腹をかかえ、言った。


「ガ、ガルシアーっ?!」


歯ぎしりをするカイル、だがカイルは、もはや一歩も歩けない。


そのカイルを無視し、無情にもガルダ兵士達が通り過ぎていく。

間も無くガルダ帝国兵士達の先端が、城壁に取りつこうとした時、突如、何者かの叫びが聞こえた。


「豪炎魔法、ファイアーストーム!」


ブワアアッ、ガガーンッ

「「「「「「ぎゃあああ!!?」」」」」」


「な、何だと?!」

ガルダの兵士達が、炎に巻き取られるように、吹き飛ばされた。

目を見開き、驚くガルシア。

慌てて、辺りを見回す。


そして声がした方を見ると、そこにはオーガ兵士と体躯たいくが遜色ない、デップリとした合体がたいの大きな鎧兵士が立っている。


「エリア▪リザレクション」


その鎧兵士は、さらに新たな呪文を唱えた。

その途端、戦場全体は温かな金色の光に包まれる。

すると、死んだはずの兵士達があっという間に息を吹き返したではないか。

それも敵味方全て。

戦場全体の死者だった者、全部だ。


あり得ない。

これは明らかに伝説の蘇生魔法。

それも戦場全体を包み込むような、強大な魔力だ。



ガルシアは、その鎧兵士を指差した。




「貴様ぁーっ、何者だ!?」


鎧兵士は、ガルシアから指差しされ、一瞬、ビクッと肩を震わせる。

だが、気を取り直して、なんかのポーズをとって言う。




「我こそは、怪傑鎧マン!ここに参上!」


チュドーンッ



そして何故か、その鎧男の背後で七色の爆発が起き、沢山の雪ウサギが可愛くイナバウアーで鎧男を応援していたのである。



果たして|彼?は何者なのか。


人間族の味方なのか。


この物語は本当に続くのか。


次回をお楽しみに!



え、続くの!?

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