暴かれる罪

「なあ、旬よ。そろそろ解決編に行こうじゃないか」

何を口走ってんだ?こいつは。

「は?」

思わず口に出てしまった。一樹を亡くしたショックで頭がおかしくなったのか?

「おや?このままグダグダ続けさせはしないよ。これ以上続けるとなると作者の技量では限界だからね。この次はエピローグだ」

あきらめたように首をすくめる。何を言っているのだ?頭でも打ってしまったのか?クエスチョンマークを使ってばっかりだ。やめてくれ、俺が馬鹿に見えてしまうじゃないか。

「おいおい、知らないとは言わせないよ」

かまをかけようとでもしてるのか?まさか俺が犯人と気づいたわけじゃないだろ

「あれ?焦ってるじゃん。汗、にじんでるよ」

何とも言えない、楽しそうに問いかけてくる。

「何がだよ」

少々語気が荒くなってしまった。わかるはずがない。こいつに、こいつなんかにわかるはずがないだろうが!

「まあ、知らなかったわけじゃないんだ。」

なんだと

「知ってたけど僕らに実害がないから放置してただけだがね。一樹は知らなかったけどね」

はかなく笑う竜星に問う。

「じゃあなんでだよ」

「ん、なにが?」

「なんで今になって言うんだよ」

「あ?」

怒ったように奴は言ってくる。竜星は普段感情が読めないだけにこんな表情は初めて見た。

「自覚ねぇのかよ。」

見下したようにこちらを睨む。

「一樹の仇だ

「君は死ぬことを恐れない。

「だから考えた

「死ぬよりもこたえることを考えた

「殺すことだよ、君の神

「徹底的に叩き潰し、プライドをへし折る

「それが一番つらいことだろ?」

なんてことだよ。そこまで考えたうえで俺の前に立ってやがんのかよ……

「ちなみにこれ、覚えてる?」

そう言ってスマホの画面を見せてきた。

【p9e,:3sxy】

「なんだ、これは?」

「やっぱり覚えてないよね。これは一樹が死ぬ直前に送ってきたやつだ」

そういえばどーでもいいと放っておいた記憶がある。

「これ、簡単なメッセージになってんだよねー」

「は?」

「これさー、PCのキーボードのひらがな表記なんだよ」

「【p0e,:3sxy】これをひらがなに置き換えると」

「【せわいねけあとさん】これじゃあ意味不明だろ?こいつを二つ後ろにずらすんだ」

まさか一樹がここまで考えていたとは、しかもあの短時間で。

「【しゆんにきをつけろ】ってなるわけだ」

なんて記憶力だよ。そんな俺の心を読んだかのように話しかけてくる。

「ほんとすごい記憶力だよね。しかもパニックに陥っていたあの時にね」

俺の負けだ。なんて奴だ、こいつは。

「まあ言ったように、警察に突き出す気はない。ただ、これでわかったろ。お前は大したことはないってことが」

肩で息をすることしかできない。

「一樹を殺したから、それが敗因だよ。旬君」

くだらねぇ、こんな負け方なんて。なあ、は間違っていたのかよ。おい、返事をしろよ。そんな風に帰ってこない返事を待ち続けた。

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