第14話 お節介なおばあさま
「正式な女王就任の儀式として、大々的に行うわ」
そのような話は初耳なのですけど!
そもそもが正式な女王とは何ですの?
ニブルヘイムを治めるのに正式も何もないですわ。
何者もいない。
生きていけない。
そのような場所に偶々、わたし達が追放されてきただけ。
そして、わたしの力がこの地でもっとも強いだけ。
ただ、それだけですわ。
それなのに正式な儀式を行うのはなぜかしら?
大人になったので儀礼を行う。
これには異論ありませんのよ?
仕方ないですもの。
「あなたの為に選りすぐりの勇者を選んでおいたわ」
「は、はい?」
さらなる衝撃的な一言が聞こえたのですけど。
勇者? 選りすぐり?
頭の中にたくさんの疑問符が浮かんでは消えていきましてよ。
「あなたと同じくらいの年代の子が多いわ。嬉しいでしょ?」
「え、えぇ。嬉しいですわ」
同年代の子が儀式の為にこのニブルヘイムにやって来る。
普通なら、喜ぶべきところでしょうけど、わたしが素直に喜べないのには理由がありますの。
まず、わたしの周囲に同年代の者はいません。
強いて言うのでしたら、イズンやアグネス達が近いですけれど、同年代というよりもどちらかと言えば、姉に近いですわね。
そして、圧倒的に同性が多いのですわ!
異性と言えば、
それからは儀式の打ち合わせという名の苦行の開始でしてよ。
ですけれども、特別にわたしが覚えないといけない難しいことがあるのではなく、単純に自由な時間を削られているだけなのですけど。
覚えなくてはいけないことは、儀式の為に浸かる泉までの道順くらいかしら?
儀式とは銘打っているものの単なるデモンストレーションですもの。
儀式を以って、わたしがニブルヘイムの女王――冥界の女神になる。
それを全世界に知らしめる。
ただ、それだけ。
政治的な意味合いが非常に強いですわ。
「姫様。あの……」
「どうしましたの?」
泉への道をお手製の地図で説明していたスカージが非常に複雑な表情をしてますの。
苦渋の色が浮かんでいるのとも違いますわ。
何かしら?
そうですわ。
とても酸っぱいものを口に入れた時につい無意識でとるあの表情に似てましてよ。
スカージは言動がはっきりしている人ですから、言い淀むのも珍しいですし……。
「泉に入る際は一切の……」
「え? 装身具も?」
「一切です……」
「まさか、服もですの?」
無言で頷くスカージにわたしも絶句するしか、ありませんわ。
そんな話、聞いてないのですけど!
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