どうしたんだ⁈おれ‼︎

 オレの名前は、空。

 現在友達の修の妹穂乃果さんに片想い中だ。

 

 友達の妹さんは、ちょっとおっちょこちょ

 いで、それでいてかわいい。

 

 この間うっかり壁ドンしてしまったが、な

 ぜ自分がそんな行動に出てしまったのか後

 々考えてみると、実はずっと妹さんが気に

 なって仕方なかったのかもしれない。

 

 ただ一方的に修の家に行くとガン見されて

 いたのだと思っていたが、実はオレも気に

 なっていたのは、事実なのかもしれない。

 

 衝撃の事実‼︎

 壁ドンしてみて自分の心の中を再確認‼︎

 ってなわけだ。

 

 しかし、友達の妹さんだ。

 ほとんど接点がない…

 あぁぁぁぁあ

 どうやってお近づきになればいいんだろう。

 

 学校だって高校と中学だし…

 全く会う機会がなくね⁈

 

 修の家にとにかく遊びに行くしかなくね⁉︎

 でも、どんだけオレと遊びたいんだって思

 われないか⁇

 

 修のお母さんに暇ならバイトしろって言わ

 れんじゃね⁈

 ってか、それはないか…。

 ん?あるのか⁇

 いや、もうそれはどうでもいい…

 

 ‼︎   ‼︎   ‼︎

 

 見つかった‼︎

 修の家に毎日でも通える最高の理由。

 

 やっぱりオレ天才だわー。

 いやー、実に素晴らしい発想。

 

 さて、どんな発想かと言うと

 

 ジャジャーン


 ー家庭教師ー


 ん?

 なんで家庭教師かって。

 

 それは、オレが学年一の秀才だからです。

 フフン。

 なんて勝ち誇っている場合では、ない!

 

 脳内では、クスクスとざわめき出す小人達。

 小人たちよ、オレが秀才だと思ってないの

 か⁈

 よし!では。オレが秀才だと思っていない

 もの挙手を。

 

 続々と手を挙げる小人たち…

 

 クッ…

 オレが秀才になるためにどれだけ毎日コツ

 コツと青魚を食べていると思っているんだ。

 イヤイヤイヤ、毎日コツコツと勉強を積み

 重ねていくのが普通だろーとヤジを入れる

 小人たち。

 

 いいかい?小人たちよ。

 君たちは、オレの脳内に住み込んでいる。

 いわば、オレがあなた方を住まわせてあげ

 ているのです。

 

 ハッ⁉︎

 思わず脳内の小人たちと戯れてしまった。

 しかもいつのまにか放課後…

 

 チーン…

 ぼっち。

 脳内は、小人たちで溢れ返っていたのに…

 教室には、オレだけ…。

 ぼっち過ぎる。

 

 さ、帰ろっ。

 

 これから修の妹さんの家庭教師をするかも

 しれないのだから本屋に寄って行こう。

 そうだ!

 そうしよう。

 ぼっちのオレ。

 

 自分を励ます。

 

 本屋に行くと本がズラ〜っと並んでいる。

 改めて見るとすげ〜。

 本ばっかじゃん。

 なんてくだらない事で心を躍らせた。

 

 側から見たら、おめめキラキラ

 パァ〜状態だ。

 

 コホン。

 いかんいかん。

 オレは、クールボーイを目指しているので

 す。

 真面目な顔のフリをして参考書…を取るか

 取らないか…

 なんて一人でやっていた。

 そして、とる〜。

 

 ヒョイ…

 あー…⁉︎

 

 オレが目指していた本の先端にもう一本の

 手が伸びてきた。

 ン?

 

 慌てて手を目で追うと…

 その手の持ち主は、ほ、穂乃果ちゃん⁉︎

 

 まさかの修の妹。

 穂乃果ちゃんがいるじゃないっすか。

 

「あ、どうも…」

 

 夕方の際どい時間帯。

 こんにちはなのか、こんばんはなのか曖昧

 な時間…

 なので普通な、

 あ、どうもなんてセリフをはいてしまった。

 

 すると向こうも、

「あ、どうも」

 返しをしてきた。

 

 チャーンスターイム‼︎

 

 これは、ピンチよりチャンスですね。

 はい。いきなりのぼっちからの脱出。

 見事に決まりました。

 

 脳内アナウンサーが心地よいトーンでしゃ

 べりだした。

 

 空選手…パスをするのか、それともドリブ

 ルか⁉︎

 なんて脳内で遊んでいる場合では、ない‼︎

 

 

「あの、穂乃果さん…」

「はいっ」

 ビシッと真っ直ぐにピーンと手を挙げる穂

 乃果さん…。

 

 か、かわいい〜。

 先生に授業でさされたかのような緊張感。

 素晴らしい。

 

 オレは感動を覚えた。

 

 生徒みたいじゃないか。

 

 何を隠そう、実はオレは教師を目指してい

 るのであった。

 

 しかし、今はそれどころじゃない。

 恋の迷子なのだ。

 

「あ、穂乃果ちゃん今年受験だよね。」

 さっきの参考書を穂乃果ちゃんに渡した。

 

「先輩もこの参考書欲しいんですよね?わた

 し他をあたりますので」

 

 えっ…他をあたるって。

 

「待って‼︎」

 

 オレは思わず穂乃果ちゃんの手首あたりを

 掴んだ。

 

 うっわー。

 ほっせー。

 

「ごめん。いきなり掴んで…痛かったよね」

「いえ…手より心臓が」

「えっ、心臓⁈もしかして病気?」

「いえ、これは…きっと…」

 ごくり。

「きっと?何?」

 

「い、いえませぬ。」

 

 顔を赤らめる穂乃果ちゃん。

 

 ま、まさかオレに好意を⁉︎

 なわけないか。

 ま、でもいいチャンスだ。

 

「あのさ、穂乃果ちゃん」

「はい」

「オレさ、教師目指してるんだけどよかった

 ら、オレの一番最初の生徒になってくれま

 せんか?」

「えっ、一番…。な、なりたいです‼︎」

 

 と言う事で無事とんとん拍子に家庭教師が

 決定した。

 

 

 …オレは、なぜ自ら先生志望を語ってしま

 ったのであろう…

 しかも、一番最初の生徒なんて口走る始末。

 

 うーん。

 不思議だ。

 穂乃果ちゃんの前だと妙に変になるオレ…

 

 何かの魔法にでもかかったようだ。

 

 

 そうだよ。

 恋の魔法だよって脳内の隅っこのほうで小

 人たちは、言った。

 しかし…

 空は、今…上の空なのでありました。

 

 続く。

 

 

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