高圧的な彼女は不意の出来事には弱いらしい

しゅーめい

第1話 出会い

 帰り道、友達と別れた俺はふと幼いころのよく遊んでいた神社に立ち寄った。普段は気にもかけないのだが、今日はどうしてか自然とこちらの方に足が進んだ。ほかの友達は用があるとかなんとかで珍しく一人で歩いていたからだろうか。でもそれはきっと後付けの理由とやつだ。何か不思議な引力にひかれて俺は今日神社の階段を上ってきた気がする。


 特にお賽銭なんて必要ない。なぜかって?これといった願い事などないからだ。平々凡々高校生活を楽しんでいる。イツメンの健也と日葵は先ほども言った通り用事があるといってついさっき別れたばかりだ。あいつらといれば楽しい。俺にはそれだけで十分であった。だから彼女なんて欲しいと強く願っているわけでもないのだ。


「そこの君、ちょっといいかしら」


 そう。この得体のしれない釣り目で儚げな雰囲気と俺の通う高校の制服をまとった先輩に会うまでは………


「私の名前は、三石美玲。よろしくね」


 彼女はそう言って微笑んだ。


 その笑顔は今まで見たことがないほど朗らかで大人っぽく美しくて、俺の心臓が思わずドキリといった。これは恋か?なんて妄想がふと頭の中をよぎった。


 赤い夕焼け、それに照らされまぶしく光る屋根の装飾。そんな幻想的な雰囲気の中で先ほどから何か運命的な出来事でもこのまま起きてくれないかな?なんて思っていたせいだろう。


 そして彼女が俺の目の前に現れたときから、この物語は始まったのだった。


 *


「ん?俺のことか?」


 俺は素直な疑問をぶつけることにした。俺は警戒した様子を隠し、自然な声で質問する。俺はそんなにバカではない。ママに知らない人に声をかけられてもすぐに返事しちゃダメって言われてるからね!あっ、もう答えちゃってるね。


「君以外に誰がいると思うの?私が妖怪と話しているとでも思ったのかしら。失礼な人ね」


 凛とした声にややとがった態度。前言撤回しよう。俺はこんな奴に恋などしていない。なんだこの女は。初対面の相手にこんな態度をとる人なんて初めて知った。あー、やっぱりそんなに現実は甘くないよな。


 俺の高まっていた心は一瞬にして冷めてしまうのであった。


「勝手に話しかけて勝手に思い込んで勝手に侮辱するな!どっちが失礼だか」


 目には目を歯には歯を。失礼には失礼を返そうではないか。別に本当にキレているわけではないが、精一杯の怒りを表現する。


 これはいわゆる俺なりのツッコミのかましかただ。何なら拗ねて見せた。こういった掛け合いはよく健也とするものだ。


 あいつとのやり取りを思い出し少し気持ちが楽になった気がした。


「ごめんなさい。悪気はなかったわ。ただ私はあなたに興味があるだけよ。あなた名前は?」


 この人は本当に悪いことをしたと思っているらしい。罪悪感が伝わってくる丁寧な謝罪であった。


「和也だ。そんなに謝らないでくれ。ちょっと悪ふざけをしただけだ。本当に怒っているように見えたのなら悪かった。いつもの癖が出ただけだから」


 つい健也との会話しているつもりで返してした。あいつならもっと悪ノリして見せただろうし、心からの謝罪なんてまずしない。そんな肩透かしにあった状態で俺は違和感を感じた。しかし、それは悪い意味ではない。新鮮という奴だ。


「そうなの?それならいいのだけれど………」


 まだ完全には信じていないようだ。彼女の表情や弱々しくなった声音から俺の罪悪感が徐々に顔を覗かせる。


 なんなんだ。第一印象が定まらない………。俺はそれを振り払うように話を変えた。


「そういえばあんた俺に興味があるって言ってたよな?」


「ええ、そう言ったけど」


「どんな興味だよ。まさか一目惚れとか言うんじゃないだろうな?」


 やっぱり冗談半分で聞いてみた。ここ最近は健也たちとばかりいるので、ほかの接し方がとっさに浮かばない。


 すると、彼女は急に真っ赤になってそっぽを向いてしまった。あれ?意外と脈ありなのかな。


「ちっ違う!それと!あんたってよぶのやめなさい!気に食わないわ!」


 怒った彼女はそれはそれでかわいいと思った。焦った彼女はキリッと俺をにらみつける。


「いや、んな突然話しかけてきて、突然そんな怒らなくてもいいじゃないか……」


 今度は立場が逆転してしまった。でもこれはガチっぽいな………


 こんなに焦るということはやはり脈ありということなのだろうか。しかし、望みは捨てたくない。俺だって少しくらいはモテたいという感情はある。もっとも、彼女となるとなんだか難しいような気がしてしまうが。いやいや、俺は彼女なんて必要ないのである。


 正直に言って信じられないという気持ちが強い。というのも、俺はイケメンではない。別に特出した才能があるわけでもない。先ほども言ったとおりそこら辺の高校生にすぎない。周りからの俺の容姿についての意見としては一番良くて中の上。上の下といわれないという時点でいろいろお察しである。


「わかった。じゃあ何て呼べばいいんだ?」


「美鈴。呼び捨てでいいわ。和也」


「いきなり呼び捨てかよ………で、その………興味ってなんだ?」


「さあ?なんのことかしら?」


 先ほどの凛とした声に硬さが増している。どうやら完全に機嫌を損ねてしまったらしい。美鈴は文字どおり俺を置き去りに神社の鳥居をくぐり階段を下りて行ってしまうのだった。


 やっぱり俺は彼女のことをうまくつかみきれなかった。


 なんだったんだよ………




 こんばんは。しゅーめいです。読んでいただきありがとうございます。しばらくぶりの投稿となんですよね。久しぶりすぎていまいち話がまとまってないかもです………GW中に毎日投稿して、何とか完結までもっていきたいと思っています。明日の7時に投稿できればとかんがえております。よければ明日も読んでいただければ幸いです。

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