舞踏会へ
舞踏会当日、私は用意してもらったドレスに着替えた。
決して豪華ではない。
でも真っ白なそのドレスはまるでウエディングドレスのように見えた。
「まるでウエディングドレスのようね」
「フレイア、丈が少し短いだけで、ほぼウエディングドレスだよ」
「そ、そうなのね」
「それと、最初はフレイアが安く作りたいと言って、宝石を無しにした。でも、フレイアのドレスは、宝石が無いシンプルな白が一番似合うと思う。フレイアはきれいだから、フレイアを引き立たせるようにシンプルなドレスにしたんだ」
「さあ、魔道カーに乗ろう」
魔道カーに乗ると、クラフとの距離が近い。
あと少しでクラフの肩にあたる。
「少し間隔が狭いわね」
「丁度いいよ」
そう言ってクラフは私の唇にキスをした。
え?いきなり唇にキス!
しかし嫌ではなかった。
むしろ嬉しいくらい。
「ク、クラフ?」
「本当は蒸気機関計画が終わってから言うつもりだった。でも今言うよ。フレイア、好きだ」
私がクラフとこうなれると思っていなかった。
みんなにもからかわれているだけだと思っていた。
嬉しい。
クラフと一緒にいられたら、きっと幸せ。
「クラフ、そうね。私もす、好きよ」
クラフはもう一度私の唇にキスをした。
このキスは、1回目より激しい。
遠慮が無く、私を求めるように激しい。
「フレイア、舞踏会に行こう」
「そうね」
私とクラフの魔道カーを先頭にして、後ろから7台の魔道カーが後を追う様についてくる。
「今姉さんが、マリーと僕の婚約破棄の件は伝えているはずだよ。今ブラックローズ家の当主が倒れているから、政治的な思惑も混みでの姉さんの判断だよ」
当主が倒れた状態で婚約破棄をする事で、ブラックローズ家の弱体をアピールし、ブラックローズ家傘下の貴族を王家側の陣営に入れる目的だと思う。
「うまくいくかしら?」
マリーは自分の為なら裏でどんなことでもしてくるだろう。
不安を覚える。
「マリーがどう動くかは分からないし未来も分からない。でもね、出来る事はあるよ。今2人で舞踏会に向かっているのもそうだし、蒸気機関計画を進めて王家の経済力を上げることも王家を強くしてブラックローズ家の力を削ぐことにつながるんだ」
「私も協力するわ」
「2人で協力して生きていこう」
周囲の人が物珍しそうに魔道カーを見て声援を送ってくる。
周りが明るくなり、舞踏会の会場に近づく。
「さあ、入ろう」
「ええ、行きましょう」
夢のよう。
諦めた舞踏会に今向かっている。
おばあちゃんに楽をさせる事も出来た。
人に必要とされる喜びも感じている。
全部満たされて、私は彼に手を引かれて会場へと歩き出した。
【短編】【焼却炉の魔術師】と呼ばれ、バカにされながらもごみ焼却のバイトをこなしていたら、嫌がらせでバイトを首になり、何故か王子と仲良くなりパーティーに出席する事になった ぐうのすけ @GUUU
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