第三話:天翔族

「獣人族が術師に向かないって事は、向いている種族もあるんですよね?」

「そうね。じゃあ次はその代表的な種族である天翔族てんしょうぞくについて話でもしましょうか」

「はい。お願いします!」

「天翔族といえば、特長はやはりこの翼ね」

「そうですね。フィリーネさんの翼、白くて凄いお綺麗ですもん」

「ふふ。ありがとう」

「そういえば、あまりフィリーネさんが飛んでいる姿を見てないんですけど、その翼で空を飛んだりは……」

「勿論できるわよ。でも実の所、天翔族はこの翼でそれ程長くは飛べないのよ」

「え? そうなんですか?」

「ええ。天翔族は主に険しい山岳地帯で暮らしているのも、そこに理由があるわ」

「え? 空を飛べるからその場所を選んでいるんじゃないんですか?」

「確かにそれもひとつあるわ。でも、飛び続けられないのと、魔力マナに恵まれている代わりに、身体能力は全種族の中でもかなり劣っているの。だからこそ、他種族に狙われにくく、術での守りにも向いた、高い山の絶壁などを棲み家に選んだのよ」

「へー。そんな理由からだったんですね」

「一説には『空に近い程、魔力マナが多いから魔力マナが高い』とも伺いましたが……」

「その辺は諸説あるわ。空気が薄い分、息を吸う時により多くの魔力マナを吸い込んできたからなんて話もあるし。ただ、そんな場所で暮らしたからこそ、天翔族は魔力マナに恵まれたと言われているわね」


───


魔力マナに恵まれていて、身体能力に劣るって事は、殆どの方は術師なんですか?」

「まあそうなるわね。とはいえ近年は近接と術を併用できる上位職も増えたし、術師なら自身に補助魔法を掛けて強化もできるから、上位職で魔術剣士や聖剣士を目指す者も随分増えたけれど」

「確かダラム王もその一人でございますよね」

「ええ。あの方は二職持ちなので厳密には違うけれど、あの方も剣士として戦えるだけの腕をお持ちね」

「えっと……ダラム王っていうのは……」

「あら。ごめんなさいね。ダラム王は私の故郷、マルヴァジア公国の国王で、天翔族なのよ」

「そういえば首都マルージュは山岳地帯から離れた森林地帯にございますが、天翔族が非常に多くいらっしゃいますね」

「そうね。建国者は人間だけれど、当時から魔誕の地下迷宮を封じる為に術師が多く必要で、天翔族も多く移住したから、今や多くの天翔族が住む魔導都市となったのよ」

「そういえば、天翔族は美男美女が生まれる種族としても有名にございますね」

「そうね。森霊族しんれいぞくと並んでそう言われるわね」

「何か理由があるんですか?」

「これも元々山岳地帯に住んでいて痩せていないと翼での移動もままならなくなるから、なんて話もあるけれど。まあ、はっきりとは分からないわね」

「でも、天翔族のフィリーネさんも、森霊族のアンナさんもお綺麗ですよね。私も将来こんな風になりたいなぁ」

「何を仰られますか。ミサキ様も十分可愛らしいですよ」

「そうよ。自信持ちなさい」

「え? そうですか?」

「勿論。カズトにそう言われたりしないの?」

「全然ですよ。そもそもお兄ちゃん昔はここまで愛想良くなかったですし、女の子に興味すらなさそうでしたもん」

「そうなのですか……」

「今は違うんですか?」

「まあ可愛いとか綺麗とか、褒めてはくれるけれど。異性としては中々意識してくれないかもしれないわね」

「確かに。それはございますね……」

「えっと……お二人共、それって……」

「……コホン。ごめんなさい。話が逸れたわね。次に移りましょう」

「え? あ、はい。わかりました」

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