第13話・最終回 今後の選択によって…

 俺の名前は…というか、生前の名前か…紅蓮院 喬介という。

 年齢は29歳だった。

 父も母も日本人で、他には妹が3人いた。

 兄妹で言えば…テッドに似てるな。

 幼馴染の料理人の翔也と龍雅と共に店を開く準備をしてい為に、調味料研究会の脱退で…同僚と送別会を開いて貰ってから事故に遭った。

 まぁ…3人の夢だったので、それが断念するのはもう仕方がない。

 俺は新たな人生を進み始めているから…の筈なんだけど?


 「転生して12歳で前世の記憶に目覚めたと思っていたら、14歳で目的を達成出来ないと死ぬって…それも猶予が残り1年半…」


 何の罰ゲームだ?…これ?

 とはいえ…だ!

 死ぬ気なんてさらさらない!

 とは言っても、猶予もそれ程残されていない。

 なので、これから何をすれば良いかを考えた結果…ある1つの可能性を見出した。

 それは…?

 今はまだ話すのは止そう。

 さて…冒険者ギルドとやらに顔を出すとするか。


 「それで冒険者ギルドとやらに来た!…は良いのだが。」


 冒険者ギルド内では、皆があたふたと動いていた。

 そして俺を見るなり、大勢の人間が押し寄せて来た。


 「おい、テッド! お前って奴はとんでもない事をしでかしたな⁉」

 「魔王の幹部だけじゃなく、天災級の討伐に成功するなんて…」

 「もう…英雄の枠を超えているぞ‼」


 はて?

 俺は昨日、何をしたんだ⁉

 俺はテッドの記憶を遡る事にした。

 すると、魔王の幹部のベヒーモスという…角の生えた巨大な牛の様な奴を倒した後に、巨大なサイと戦っている姿を見た。

 …というか、このテッドという少年は…強いな!

 っていうか、俺か!

 なるほど…これは問題だよな?

 起きてしまった事は仕方ないので、俺は皆と話を合わせる事に…


 「別にあの程度の事…大した事は無いだろ?」


 しないで、合わせなかった。

 すると冒険者達は大きな溜息を吐いた。


 「そんな事を言えるのはお前位だよ…」

 「英雄の次は何になるつもりだ?」

 「っていうか、今日は口調おかしくないか?」


 …と、まずい!

 俺は今12歳の子供だったな…?


 「すいません、気持ちが高ぶっていて…つい生意気な口を。」

 「いや、俺も疑って悪かった。」


 …これで誤魔化せたか?

 俺は受付のカウンターに行った。

 

 「テッド君、君って子は本当にとんでもない事をしたわね。 あの後に家から出て行ったと思ったら…」

 「魔王の幹部は出くわしただけですよ。 魔王の幹部が倒せるのなら、キングディライノスも倒せるかと思いまして…2匹とも同じ大きさでしたしね。」


 言葉…変じゃないよな?

 この女…ライラだっけか?

 何か黙っているから、言葉遣いがおかしいと思ったが…?


 「もう…テッド君が勇者を名乗っていても驚かないわ!」

 「勇者ですか? そんな大層な物はいりませんよ!」


 俺は昨日のキングディライノス討伐の報酬で、白金貨5枚を受け取った。

 これで…仮にレベルが100になれなくて死んだとしても、妹達の生活費は間に合うだろうな?

 まぁ、死ぬ気も無いけどな!


 「それと、ギルマスがテッド君に用事があるって言われたんだけど。」

 「それは強制ですか? そうでなのならパスしたいのですが…」

 「わかりました、では今度お願いね!」


 ギルマスか…?

 もしも俺が万が一…の時は妹達の事を頼むというのもあるし、次に会うとしよう。

 今はそれよりも…試したい事があるのでね。

 俺は街の外に出た。

 そして森に来て、ホーンラビットという魔物で試してみたい事があったのだ。


 俺の持っている…元はテッドのだが、マジックバックは生きている物は入らない。

 なら、気を失っている物は入るのか…?

 それの検証だった。

 マジックバッグの中は、物が入ると時間が停止するという物らしいので、これが有効なら…

 レベル上げは大分捗るという事になる。


 「ホーンラビットの巣が…あるな!」


 俺は予め…食材召喚で大麻を召喚した。

 食材召喚は、食材全てが召喚出来る訳では無く…あくまでも調味料がベースの物になるらしい。

 なので卵も調味料の類に入るらしいという。

 まぁ、実際に…卵を使う調味料も数多く存在するからな。


 「大麻を自分用に…ではないぞ! あくまでも麻酔として使うだけだからな!」


 俺以外誰もいないが、一応報告した。

 大麻に濃度上昇と調味料種類分けで作ったオイルをオリーブオイルに変化させてから、大麻に垂らして火を付ける。

 それをそのままホーンラビットの巣に放り込み、入り口を空気穴程度に開けておいてから封鎖する。

 すると、大麻の煙にやられてホーンラビットは気絶するだろうから、しばらくしてから穴を掘ってホーンラビットを捕まえる。


 「よしよし、気を失っているな…」


 その気絶しているホーンラビットにマジックバックの入り口を押し当てて収納…出来た!

 俺はまた取り出してから、始末をして血抜きをしてから再びしまった。


 「さて、これで殺さなくても入る事が解ったので…次の段階に移行しよう。」


 俺は一度家に戻ってから、再び妹達を連れて今度は草原に来た。

 俺の事情は、昨日ギルマスから聞かされていたので、妹達も協力的だった。

 今回俺のやろうとしている事は、1日では家には帰れない。

 なので、野宿を覚悟してもらうという物だったのだが、妹達は初めての野外なので嬉しそうだった。

 俺達は色々な場所を巡ってから、9日後に俺の目的は達成した。

 そして事に当たろうと考えたのだが…久々に街の近くにいたので、一度家に帰って休んでからにするのだった。

 マジックバッグに入っている魔獣は、取り出さない限り目を醒ます事は無い。

 なので、休息してから英気を養うというのも1つの手だった。


 そして俺のやろうとしている事…それは、【蠱毒】を作る事だった。

 …と言っても、別に強力な毒が欲しいという訳ではない。

 あ、ちなみに蠱毒というのは…?

 壺の中に毒性の強い昆虫や爬虫類を入れて戦わせて、最後に生き残った物が最強の毒を持つという事になるという…戦国時代に暗殺者がやった手法だ。

 それで俺のやりたい事は…地面に大きな穴を入れてから、捕えて来た魔獣達を穴の中に入れて戦わせてから最後の1匹になる迄行うという物だった。

 この世界の魔物は、強くなるためには他の生物を犠牲にして成長するという物らしい。

 なので、蠱毒のやり方は適しているやり方である…のだが、1つだけ問題がある。

 最後の1匹になった時、他の全ての魔獣の力を見に宿す為に…強力な魔獣になっているという物なのだ。

 

 「まぁ…これ位やらないと、大きなレベルアップは望めないからな…」


 魔王軍の幹部が呼んで来るのなら問題ないが、3匹目を倒した後だと向こうも警戒をしているだろうから、別な手を打ったのだ。

 家に帰ってから2日後…

 野宿の疲れがすっかりなくなったルットとロットにお願いをした。


 「ルット、この地面に大きくて深い穴を開けてくれ! それとロット、念の為に結界を張っておいてくれ。」

 「それがお兄ちゃんを救う事になるんだね? わかった!」


 ルットの爆発系の魔法で、地面に大きな穴が開いた。

 その中に捕えて来た7匹の魔獣を放り込んでから、ニンニク、タイム、ナツメグ、大麻、ハバネロを固めて乾燥させた球に火をつけて穴の底に放り込んだ。

 ハバネロでは無かったが、古代ローマの時代に闘技場で戦う闘士達が興奮剤に用いた物である。

 そして煙が充満すると…魔獣達は起き始めて戦いを始めたのだった。

 ロットは穴に蓋をする様に結界を張ったのだった


 ・・・・・・・・・3時間経過・・・・・・・・・


 穴の底を見ると、1匹だけ生き残った奴がいた。

 それは、魔獣を捕まえる為に旅していた時に、一番捕獲が厄介な獅子の魔獣だった。

 

 「お兄ちゃん、アレを眠らせたらいいの?」

 「いや、興奮剤で気持ちが高ぶっているから、睡眠魔法は多分効果が薄い。 倒して来るから待っていて。」


 俺は穴の底に行くと、獅子の魔獣は傷だらけだったが、かろうじて生きているという感じだった。

 だが、俺が目の前に現れると血走った眼を向けながら威嚇している様だった。


 「すまないな…俺の為に実験に付き合わせて。 だが、俺もまだ死にたくないんでな…」

 

 俺は獅子の魔獣にそう言うと、魔剣シーズニングのテクニカルセイバーを発動して接近した。

 獅子の魔獣は当然、歯向かって来た。

  

 「楽に逝かせてやるからな…紅蓮院流剣術・祖之太刀弐式…桜花紅血閃!」


 俺は百撃の連撃を繰り出して、獅子の魔獣から飛び散った血が桜の花びらを思わせる様な鮮血を散らした。

 ふむ…?

 体は変わっても、記憶通りに体は動くんだな。

 紅蓮院流剣術…それは、俺の生前の家が剣術の道場だった。

 そこで死ぬほど鍛えられて体に染みついた物だった。


 「まぁ…家を継がないで料理の道を進むと言ったら、親父と大喧嘩になったんだっけな! 家は多分…飛鳥が継いでいるだろう。」


 すると、俺のレベルは80→94まで上がったのだった。

 そして魔獣達をマジックバッグに入れると、穴を登って地上に出た。

 

 「お兄ちゃん、倒した魔獣以外の魔獣もバッグに入れていたけど、何に使うの?」

 「魔獣は懸賞金が掛かっているからな! 資金源にするんだよ。」


 俺達は帰りに冒険者ギルドに寄り、魔獣7匹をギルドに置いてから家に帰った。

 というのも、これだけまとまった数では査定に時間が掛かるそうだからだ。


 「さてと、あとレベルは6つか…? どうやって上げるかだな…」


 この島にいる魔獣のほとんどが今回のレベル上げに使用していた。

 なので、これ以上の魔獣となると他所の地に赴く事になるのだが…?

 次章の初っ端に、魔王軍幹部の4人目が登場するのだった。


 「そういえば、魔王軍の幹部の4人目って海獣という話だったが? 海獣って…トドか? それとも、アシカ?」


 魔王軍の最後の幹部の姿は…次章で明らかになるのだった。


 ・・・・・・・・・第二章・完・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・次の第三章に続く・・・・・・・・・

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スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料を駆使して戦う! アノマロカリス @keinmaster

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