第13話 聖剣グランマルスと魔剣シーズニング・前編

 翌日…僕とリットは普段着のまま居間にいた。

 その理由は、ルットとロットが装備を作ってくれたので渡してくれるという物だった。


 「お兄ちゃん、お姉ちゃんこれが装備だよ!」

 「ルットありがとう! 早速着てみるよ!」


 僕は下地の黒のインナースーツを着てから、厚めの革の服を着た。

 そしてレザーガントレットとブーツを履いて腕や足を動かしてみた。


 「驚いたな…凄く軽い! それに動きやすい…」

 「私も…体にピッタリだし、動きやすいわ!」

 「とーぜん! あれだけの機材と素材で中途半端な物は作れないわよ! それとお兄ちゃんにはこれも…」

 

 僕はリボンが付いている袋を開けると、中には憧れのマントが入っていた。

 いつか…金を貯めて装備してみたいと思っていた物だったので凄く嬉しかった。


 「ルット…ありがとう! 大事に使うよ!」

 「うん…それと、お兄ちゃん誕生日おめでとう!」

 「あ…このマントはプレゼントだったのか⁉」


 自分の誕生日をすっかり忘れていた。

 そうか、僕は今日で12歳になるんだったな。

 僕はマントを羽織ってみた。

 すると…英雄に相応しい姿になった…と思う。


 「私からはこれね。」


 ロットが渡してくれたのは、新しいブレスレットだった。

 以前と違うのは、ブレスレットに魔石が埋め込まれていたのだった。

 そしてリットには、ブレスレットとリボンだった。

 リットのブレスレットも僕と同じ物で、リボンにも魔石が付けられていた。

 リットは腰迄ある髪をリボンで固定した。


 「「ルット、ロットありがとう!」」

 

 僕とリットは、ルットとロットを抱きしめた。

 2人共嬉しそうな顔をしていたが、作業が辛かったのか眠そうな顔をしていた。


 「今日までに完成させようとして結構無理したから眠い…」

 「私も…お兄ちゃん達が出て行ったら寝るね。」

 「あぁ、本当にありがとう! 早めに帰ってくるからな!」

 「戸締りの問題は大丈夫だとは思うけど、くれぐれも注意してね。」


 僕は妹達に気を使って家を出る事にした。

 

 「行ってくるな!」

 「行って来ます!」

 「「いってらっしゃい、お兄ちゃん、お姉ちゃん…」」


 僕とリットは家から出発して、冒険者ギルドに向かっていた。

 するとリットは僕に言った。


 「お兄ちゃん…本当の冒険者っていう感じでカッコいいよ!」

 「リットだって、リボンで纏めた髪…凄く可愛いよ!」

 「そう? えへへ…」


 はたから見ていたら、僕達は少し痛いバカップルに見えるだろう。

 僕等はそんな話をしながら冒険者ギルドに着いた。

 そして依頼ボードで討伐依頼を探していた。


 「お兄ちゃん…今日は何を狩る予定?」

 「特に決めていないけど、草原で大型の魔物を狩ろうと思っている。 これなんか良いかな?」


 僕が手に取った討伐依頼は、バディホーンブルという2対が一緒に行動するバッファロー型の魔物の討伐だった。

 

 「討伐証明は、ブルの角か…」

 「じゃあ、それ以外は持ち帰りOKだね?」


 今迄、ボアやラビットの肉は食べていたが、ブルの肉は初めてだった。

 なので密かに楽しみでもあった。

 僕はその依頼書をライラさんに見せに行った。


 「これをお願いします。」

 「あら? テッド君にリットちゃん! これってバディホーンブル討伐って…うん、2人なら大丈夫そうね? これ、本当はBランクのパーティー用なんだけど…」

  

 本来なら、Cランクパーティーでは断る案件なのだが、魔獣殺しで魔剣を携えた英雄と聖剣を携えた剣聖だと、断る理由は無かった。


 「くれぐれも気を付けてね。 決して油断しちゃだめよ!」

 「「はい!」」

 「それと、パーティーのやり方を教えるわね。」


 ライラさんは、パーティーの組み方を教えてくれた。

 これをしてないと、討伐した魔物の経験値の分配が出来ないという物だった。


 「よし! では行って来ますね!」

 「行って来ますね!」

 「頑張っていらっしゃい!」


 僕とリットは、冒険者ギルドを出ると…街の外に出て草原を目指した。

 その途中、ワイルドボアという魔物が5匹遭遇したので、実験をしてみる事にした。

 

 「この大きな奴は僕がやるから、リットは周りの小さいのを…できる?」

 「問題無いよ、倒して来るね!」


 リットは戦いに緊張している節は無かった。

 寧ろ高揚感を感じている…という感じだった。

 これが剣聖というジョブの特性なんだろうか?

 僕はボア系に有効な戦法を頭の中でイメージした。

 すると、魔剣シーズニングがカタカタと震えていたので抜いてみた…が、相変わらず刀身が無かった。


 「戦いになったら刀身が現れるかと思ったんだけど…?」

 

 すると、頭の中に声が響いてきた。


 【イメージにビネガーを確認! 構えて叫べ、ビネガーセイバー!】

 

 僕は言われた通りに「ビネガーセイバー」と叫ぶと、黄色い刀身が現れたのだった。

 

 「これは…? それにあの声は何だったんだ?」


 そんな事を考えていると、ワイルドボアは僕の方に向かって来た。

 僕は鼻を狙ってシーズニングで斬ると、鋭い切れ味と共に刀身から何かが飛び散った。

 ワイルドボアは、地面に鼻を擦り付けて苦しそうに悶えていた。

 僕はすかさず攻撃をしようと、頭の中に塩をイメージした…すると?


 【イメージに塩を確認! 構えて叫べ、ソルトセイバー!】

 

 僕はソルトセイバーと叫ぶと、黄色い刀身が消えて、白い刀身が現れた。

 その状態でワイルドボアの背中や脇腹を斬りつけると、鋭い切れ味と共に傷口から白い粉が見えた。


 「やっぱり…斬ったと同時に塩が刀身から飛び出るのか…?」

 

 僕は油をイメージしてワイルドボアに放った。

 すると、手から放たれた油がボアにぶっ掛った。

 もしかして、形状変化って…?

 僕は形状変化を発動して、油の球をイメージして放った。

 すると油の球は、ワイルドボアに当たると同時に弾けて掛かった。

 

 「そうか! 形状変化ってこういう使い方が出来るのか!」


 油を掛けた迄は良かったが、火が無かった。

 火をどうするかな?

 マジックバックの中には、この間買っておいたマッチがあるが…今は取りだす事が出来ない。

 すると、またあの声がしたのだった。


 【イメージに油を確認! 構えて叫べ、ラードセイバー!】

 

 僕は言われた通りにラードセイバーと唱えると、刀身が油に変化した。

 すると、またあの声が聞こえて来た。


 【イメージに炎を確認! トリガーを握れ、フレイムセイバー!】

 

 僕は言われた通りに、鍔の近くにある何かの金属に触れた。


 「これかな? トリガーって…?」


 僕はトリガーを掴むと、「カチッ!」という音と共に油の刀身に火がついて炎の剣になった。

 その剣でワイルドボアを切り裂くと、ワイルドボアに掛かっていた油が引火して燃え上がっていた。

 僕はトリガーから指を離すと、炎は消えていた。

 またトリガーを握ると、刀身に炎が纏っていた。

 …と、ワイルドボアを見ていると、炎の中で暴れまわっていた。

 そしてしばらくすると、大きい音を立てて倒れたのだった。

 

 「魔剣シーズニング…こういう性能の剣だったのか⁉」

 

 まだまだ完全に把握している訳ではないが、ある程度の使い方は解った。

 そんな感じで燃えているワイルドボアを見ていると、リットが他のボアを討伐して戻って来た。


 「お兄ちゃん…ワイルドボアを倒してきたんだけど、この状態は何?」

 「魔剣シーズニングを試したら、こうなった!」

 「このままの状態だと、食べられる部分が全部焦げちゃうよ?」

 「あ…あぁ⁉」


 僕はエクストラ調味料の水で消火作業をして、火を消すと…中までこんがりと焼けていた。

 僕とリットはまず、リットが倒したのワイルドボアを解体してからマジックバックに収納すると、僕が相手をしたワイルドボアを解体したのだった。

 すると、良く焼けていたので少しはその場で食べてから、残りはマジックバッグに閉まったのだった。


 「そういえば、聖剣グランマルスの使い勝手はどうだった?」

 「この聖剣、凄い切れ味で…大体を一撃で仕留められたよ。 お兄ちゃんの魔剣は?」

 「御覧の通り…まだ完全に解ってない部分もあるけど、切れ味や追加効果が凄い。」


 僕とリットは、再び草原を歩き回った。

 魔物を見付けては討伐してから証明部位と肉を回収して行き…遂にバディホーンブルを見付ける事が出来た!…のだけど?

 

 魔獣では無いのだが、少し厄介な敵に出遭ってしまった。

 その敵とは…?

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