第3話 ユートピアゾンビタウン

🏘荒廃した街🏘

片足を引きずりながら早歩きの男がゾンビから逃げている。男の顔は憔悴しょうすいしきっており余裕がない。


🧟「ヴーヴヴーヴ」🧟「アアアーア」🧟「ヴェヴェヴェ」


「はぁはぁ、もうだめだ、ゾンビに喰われる。あれだけいた仲間もみんなゾンビに喰われちまった。くそっ、せめて仲間のためにも、ラジオで流れていたユートピアってやつに辿り着かないと死んでも死にきれねぇ。うわっ」スッテンコロリン


「くそっはやく起き上がらないと」


🧟

「ア゛ア゛ア゛ーーー」ヨタヨタ


「もはやここまでか・・・すまん皆、やっぱりユートピアなんかなかったんだ。あの時俺が皆を誘わなければ・・・」ムネン


🧟(´・ω・`)

「もしもしそこのお兄さん。生きてまっか?」ヒョコ


「うわぁ!なんだなんだ、ゾンビが急に喋りかけてきた!」


🧟(´・ω・`)

「あぁスマンスマン、俺はゾンビやけどゾンビやないんよ。ここからすぐのトコにおってそこから喋りかけてるわけ。ってかお兄さん、良いリアクションするなぁ。初めて人助けした時の初心うぶな気持ち思い出したわ。あの時は俺も第一声どうしようかしばらく考え込んで・・・」ペチャクチャ


「・・・ゾンビが一人語りしている。えっというかアナタは誰ですか?生きているのですか」


🧟(´・ω・`)

「それからというもの・・・」ペチャクチャ「おっと、せやせや質問の前にそこいらにおるゾンビを捕縛せんとな。ちょっと待っとってや」テクテク


「ん、急にゾンビに抱きついて何してるんですか?」


🧟(´・ω・`)

「今やこの時代、ゾンビも貴重な資源なんや。こうやって抱きついてゾンビの手を後ろに回して結束バンドで拘束して、後は口に詰め物を・・・」


「資源?ゾンビが?」


🧟(´・ω・`)

「せやねん。まぁ詳しくは追々説明するとして、ちょっとこいつら全員拘束して持って帰るから待っててな」


「助かったのか?」


🏰ユートピアゾンビタウン🏰

オフィスビル街。以前の世界のように街は整備され清潔を保っている。大量のゾンビアーマーが闊歩し、その間を親子が歩きながら笑顔を振りまいている。この街には恐怖や緊迫が微塵も感じられない。


「・・・これは夢?幻?ドッキリ?天国?」


(´・ω・`)

「ハハハ、やっぱこれを初見で見る人のリアクションはいつ見てもオモロイな」


「ん?その声はさっき僕を助けてくれたゾンビの声の人ですか?」


(´・ω・`)

「ご明察。では改めてようこそユートピアゾンビタウンへ。お兄さんももしかしてラジオからの情報でここまで来たんか?」


「あっはいそうです。どこかの軍が避難情報でも流してないかなと思いましてラジオをいじくっていたんです。そしたらこの場所に現代のユートピアがあるって放送を聞きまして」


(´・ω・`)

「あれ俺の声やねん」テレッ「ちなみに発案も俺」テレッ「あれのお陰で何人もの人を助けることができたわ。そもそも弟があまり乗り気でなく・・・」ペチャクチャ


「あのー、因みにここは一体何なんですか?機械を纏ったゾンビが当たり前のように練り歩いてるし、街はキレイだし、衣食住何一つ困ってないように見えるんですけど」


(´・ω・`)

「おっ、そうかそうか。この街に新しく来た人には説明せなアカン決まりになっとうねん。ついてきてくれるか」テクテク


(´・ω・`)

「ここは俺の弟が長となってゾンビアーマーの性能向上や市民の暮らしの質や利便を高めるようなものを開発したり実験したりする所や。正直高度すぎて俺には訳がわからん」


(´・ω・`)

「ここは野菜や米を育ててるオフィスビルや。LEDと水耕栽培で育ててるから土と太陽は不要。ここは元々オフィス街やからビルは腐るほどあるし誰一人食べ物には困ってない。そのせいもあってか気がついたら俺も三段腹になってもうた」ゲラゲラ


(´・ω・`)

「ここは街の外で救助した人たちに職業訓練する場所や。まぁ主にゾンビアーマーの使い方になるねんけど。操作性が基準に達したらこの街の周囲に壁を建設中やからそれを手伝ってもらったり、壁の外に出かけてゾンビ捕獲したり色々してもらってる」


(´・ω・`)

「だいたいわかってくれたか?」


「すみません」クラクラ「あまりにも自分が住んでいた世界とはかけ離れすぎていて理解が追いつかないんです」


(´・ω・`)

「はははは」ワラワラ「初めはしゃーないよ。皆そうやしな。ゆっくりでいいから徐々に覚えていってな」


(。・・。)

「あっお兄ちゃん」


(´・ω・`)

「おっ、紹介するわ。こいつは俺の弟で、この街の基礎を作った張本人や」


(。・・。)

「こんにちは。はじめまして」ペコリ


「あ、こちらこそ、助けていただきありがとうございます」


(´・ω・`)

「うん?弟よ、隣に引き連れているゾンビアーマー、なんや見慣れん装備つけとんな」


(。・・。)

「さすがお兄ちゃんよく気がついたね。これはゾンビアーマーMark7、ヘルメット状のヘッドセットを装着することであらかじめインプットした命令に従うようになるんだ」


🧟⚙

キョロキョロ


(。・・。)

「このゾンビアーマーは僕の後ろをついて歩くように命令されている。今はまだ単純な命令しかインプットできないけどね。うまく行けば野菜やお米の管理、ゾンビの捕獲、壁の建設等、人の手を借りずにできるかもしれないんだ」


「あのー襲ったりはしないんですか?」


(。・・。)

「ゾンビは嗅覚で人を認識しているからその感覚を遮断、そして万が一に備えて噛みつくための歯も全て抜いているから安心してください」


「なるほどぉ。ここの住人の顔から安堵が窺える理由がわかった気がします」


(´・ω・`)

「せやろせやろ。まぁ長話はこれくらいにして早速ゾンビアーマーの講習に参加してもらえるか?」


「はい!喜んで!」タッタッタッタッター


(´・ω・`)

「走っていってもうた。怪我はどないしたんや・・・。ところで弟よ、アメリカからの返信はあったんか?」


(。・・。)

「うん。あっちは軍隊を中心に持ちこたえているみたいだけど、とてもギリギリの状態らしい。だからはやく僕達が助けにいかないと」


(´・ω・`)

「まぁそう慌てることはない。ろくに準備せずにいってみんなゾンビなってもうたら一巻の終わりや。ゾンビアーマーの操縦者に食料ももっと必要になってくる」


(。・・。)

「そりゃそうだけど」


(´・ω・`)

「こういう時はとにかく落ち着いて自分たちのできることを確実にやっていくんや。遠回りが近道になるから」


(。・・。)

「そうだよね。とにかく密に連絡はとってアメリカに行く準備は整えておくよ」


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