第35話 改めて見るとスマホってスゲェよ

「いやぁ~スマホってこんなに進んでるんだ。スゲェよなぁ」


 竜一りゅういちは4月初めにスマホを手に入れて3ヶ月ほどが経つが、その高性能ぶりに今でも惚れ惚れほれぼれとしてた。


「どうしたの竜一君、今頃になって」


 その様子を見て咲夜さくやは彼に声をかけてきたのだが、それに竜一が答えてきた。


「いやスマホって本当にスゲェよ。何せ電話帳には連絡先が全部中に入ってるんだぜ? 昔は電話番号をメモしたメモ帳を持ち歩くか、頭の中に記憶しないといけなかったんですよ?

 で、せっかくメモしたのに電話をかけようとする肝心な時に限ってどこにメモ帳があるのか分からなくなるくせに、

 用事が終わった後にメモ帳が突然思いもしなかった場所から出てくる、ってのも昔のお約束ですわ」


 竜一が生きていた1980年代から90年代初頭はまだ携帯電話も一般的ではなかった時代、今では「固定電話」と呼ばれる電話機が一般的だった頃の「良くある話」を竜一は語っていた。

 そう言えばそんなこともあったっけ。と咲夜ははるか昔を思い出していた。


「それに、携帯電話にカメラを付けよう。っていう発想だけでもスケールのでかさでスゲェのに撮った写真はすぐその場で映り具合が見れるってのも、とんでもなくスゲェ事なんですよ?

 昔のカメラや使い捨てカメラで撮った写真は現像されるまでどうなってるかわからなかったのに、今ではすぐどう映っているかが確認できるんですよ?

 こんなのSF作家でも想像もつかなかったとんでもない進歩ですよ」


 竜一の時代のカメラは、写真は撮った後現像げんぞうするまでどうなっているかは分からないし、そもそもフィルムを使い切るまでは現像に出さなかったため、

 写真という形で目に見えるようになるまでかなりの時間差があったのだ。

 今では当たり前となった、写真を撮った後すぐSNSにアップロードするのがごく普通にできる。だなんて30年前の昔では到底信じられるものではなかった。




「しかもだよ? しかもその上にメールも完備されているんですよ?

 夏休み期間中の友達とのやり取りには手紙が使われていて、返事が来るまで数日はかかっていたのに今はメールですぐ伝わるんですよ?

 とんでもなく画期的でスゲェ事ですよ。メールを書いたその日のうちに返信が来るだなんて! それが現実の世の中でも当たり前になるだなんてSF作家でも考えが付かない世の中ですよ!」


 30年昔に、離れた誰かにメッセージを送るには物理的な手紙を書くくらいしかなかった。届くのに数日かかり、返信が来るにはさらに数日……というのが当たり前だった。

 それがメールの登場で全て吹き飛んだ。今では場合によってはメッセージを送って1時間もせずに返事が返ってくることなど昔では「ありえない」事だった。


「あと忘れちゃいけないのがバッテリー、バッテリーもスゲェ事ですよ。昔は予備の乾電池を持ち歩いていたのに、今では充電さえしとけばいいってのがスゲェ進歩してますよ。

 まぁたまにバッテリーへの充電を忘れてえらい事になる時があるけど、電気が尽きてきた乾電池を少しでも使い切るために無理やり使う必要が無い。ってのも十分進歩してるって言えますよ」


 今でこそ電子機器はバッテリーによる「充電式」が当たり前になっているが、昔はポケベルやゲーム機は電池式で、出かける際には電気が切れた時のため予備の電池を持っていくことも多かった。

 特に電池が使えなくなるギリギリまで使いたいという欲求もあったため、いつ電池が切れてもいいように予備を用意しているのも当時の常識だった。

 今ではどれもバッテリー内蔵で充電し忘れさえしなければOKというのは考えもつかなかったことだ。


「おまけにアプリで自由にカスタマイズできる、ってのもスゲェ事ですよ。俺が入れてるのは天気予報のアプリなんですけどこれがまたスゲェ事。

 昔は天気予報なんてニュース番組を見なきゃ分からなかったのに、今じゃいつでもどこでも好きな時に見れるんですよ!?

 しかもTV番組では3時間ごとの天気しか分からないのにアプリでは1時間ごとの天気の変化が見れるんだ! もうお天気コーナーは見なくてもいい位に進歩してるんだぜ!? スゲェ事でしょ!?」


 スマホのストアからダウンロードできるアプリも竜一からしたらとんでもなく凄いものだ。

 例を挙げれば天気予報アプリも入れられて、しかも明日~数日先の天気まで1時間単位で丸わかり。

 昔はニュース番組の気象コーナーを見るしかなかった上に3時間ごとの移り変わりがせいぜいだったのだがそれを大きく超えてきたことが竜一にとっては斬新だった。




「ふぅ。一方的にしゃべっちゃったけどやっぱりスマホはスゲェわ。ドラえもんのひみつ道具にもこんなの出てこないよ。とんでもなくスゲェ未来のガジェットだなぁ」

「やっぱり30年後の世界ではスマホってSFに出てくるようなものだったりするの?」

「いやいや違いますよ。どんな高尚なSF作家ですら『誰も考えつかなかった』画期的な道具ですよ。とんでもなくスゲェ道具ですよ。

 30年前の人間に「30年後の未来はこれが当たり前のように普及している」なんて言っても信じちゃくれないと思いますよ」

「へぇそうなんだ。まぁ「電話が携帯できる」ってだけでも凄いって言ってたから、今のスマホはとんでもなく凄く見えてもおかしくないわね」

「そりゃあそうですよ! 携帯電話ですらSFのガジェットだったのにそのさらに1世代上なんですから! これ作れた人はノーベル賞級の天才ですよ!」


 アップルのスティーブ・ジョブスがノーベル賞物の発明をした。と竜一は力強く言っていたが彼が開発したスマホはそれもうなづけるような画期的要素だった。

 咲夜は騒ぐ竜一を温かい目で見守っていた。




【次回予告】

 咲夜と竜一が押入れの整理をしていたら、竜也たつやが幼稚園児時代の頃使ってたものが出てきた。どうやら新幹線がお気に入りだったらしい。


 第36話 「新幹線はSF」

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