第28話 核融合反応炉がついに完成!?

「!! た、大変だ!」


 竜一りゅういちがスマホを使って気まぐれにSFワードを使って検索をしていてた時、とあるページがヒットし彼は飛び起きるように竜也たつやの部屋へとなだれ込んだ。


「竜也! これを見てくれ! つ、ついに核融合反応炉が出来るらしいぞ!」

「ああ、伯父おじさんそのニュースか。核融合反応炉が出来るって言うけどまだ実験段階で、作られる反応炉も実証実験用で商用じゃないって聞いてるけど?」

「でも核融合反応炉が出来るって事には間違いはないだろ!? スゲェじゃねえか! SFの世界が現実になろうとするんだぞ!?」


 竜一はおいの竜也にたしなめられるがそれでもテンション爆上げ状態だ。




 核融合反応炉……太陽内部で起こっている「核融合反応」を人工的に行う反応炉で、SFの世界では当然のようにあるものだが諸問題あって2023年現在では実験段階の領域を出ないものだ。

 もしこれが実用化されたら日本は石油エネルギーや天然ガスを使った火力発電、核分裂反応炉による原子力発電よりも地球にやさしく、

 それでいて安全なエネルギー機関となるためエネルギー分野に革命が起きると思われるものだ。


 何よりエネルギー資源に乏しい日本でも海水からほぼ無尽蔵にとれる「原料」で何の問題もなく発電ができるとなると、海外からの輸入に頼っている石油や天然ガス、原子力資源への依存度や悪影響の被害を大幅に下げられるのがでかい。まさに未来のエネルギーとして特にSFファンからは熱い注目を浴びているのだ。


「いやーまた一つSFの世界が現実のものになるとはなー。いやぁースゲェな2023年は! さすが2018年が舞台のバックトゥザフューチャー2よりも5年も未来なだけあるなー!」


 ついにSFの世界にしかなかった核融合反応炉が実証実験用とはいえ実用化されたことに竜一は上機嫌だ。

 これ以外にも次々とSFの世界にしかなかったもの、あるいはSFの世界でも無かったハイテクノロジーなガジェットがある現代日本に大いなる喜びを感じていた。


「それにしても核融合反応炉って言っても、火力発電や原子力発電みたいに熱で蒸気を沸かしてタービンを回すんだな。その辺はどうもSFっぽくないんだよなぁ。

 もっと熱を直接別のエネルギー源に変えたりできないのか? とは思うんだが……ハァ」

「ハハッ、伯父さんらしいと言えば伯父さんらしいね。確かにその辺はSFっぽくないといえばそうだね」


 核融合発電と聞くと一見凄そうに聞こえるが、実際に発電する際には火力発電や原子力発電でもやってるのと同様に熱で水を蒸気に変えて、それでタービンを回して発電するらしい。

 古来の蒸気機関車より脈々と受け継がれている動力機関だ。こう書くとSFっぽさはかなり無くなるので竜一はずいぶんと残念がっていた。


「兄貴、どうした? また何か見つけたのか?」


 竜也の部屋で騒いでいる竜一の大声を聞いて竜二りゅうじが部屋にやってくる。


「おお、竜二! SFでよく出てくるあの核融合反応炉がついに現実の物になるそうなんだよ! スゲェだろ!?」

「あーそうかそうか。兄貴がびっくりするのもうなづけるわな」

「ずいぶんと冷めた反応だな……っていうか竜二も竜也も未来に対して何かワクワクするような躍動感が無いなぁ。そんなに未来が不安なのか? 俺にはさっぱり分からないんだが」


 竜一は2人の明らかな温度差に文句をつける。なぜそこまで冷ややかなのかと、ニヒリズムじゃないんだし。


「1993年の2月に死んだって事ばバブルが崩壊するギリギリ前の話か。そりゃ将来を楽観視してるのは当然と言えば当然だろうとは思うがな。

 兄貴、お前は「未来がよくなる」って無自覚に思ってるのは幸運だろうな」

「え? 違うの?」

「最近はすっかり景気が悪くなって「失われた30年」とか言い出す奴もいて、みんなしぼんじまったんだよ」

「ふーん。その辺は分からないなー。なんでみんな将来を悲観しているのか俺にはさっぱり分からないんだが」

「まぁわかんない方が幸せかもな。そのうち嫌というほどわかると思うから俺の口からは言わないようにしとくよ」

「へぇ、そういうもんか? まぁいいや」


「今が一番いい時代で、未来は今よりもっと良くなる」という、バブルの頃の価値観を受け継いでいた竜一には今一つピンと来ない話であったという。




【次回予告】

 今の自動車には「自動運転機能」が付いている。さすがに目的地を入力すれば全自動で目的地まで運転してくれる、とまではいかないが

 それでも緊急時や特定の状況下では自動で運転してくれるもので、竜一が衝撃を受けるには十分だった。


 第29話 「自動運転車はSF」

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