美談∬Creator2

家を飛び出した私は、現実というものを嫌というほどに思い知らされた。


何処に行っても金、金、金。


嫌になる。


芸術品を作るには、金がいる事は理解していた。

しかしその問題は、生活を多少削れば何とかなると思っていた。だが、甘かった。


生活していくには、日々を無意味な作業に費やさなくてはならなかった。


そんな生活の中で、寝る時間を限界まで削り作り上げた最高傑作も、評価されずにただのゴミに成り下がる。


美しい物を作れている筈だ。


そう思い、何度も何度も作品作りを繰り返した。


しかし、誰にも評価されない。


抜け出せない泥の中にいる気分であった。


何故、多少名が通っているからといって、あんな作品が評価されるのだ。

何故、私の作品には見向きもしない。


私の作品を見ろ観ろ視ろ診ろ看ろ。


そんな日々を送り、何年も経ったある日。

とうとう私の作品が一つ、そこそこの値段で取引された。


しかし、私は打ちひしがれた。


何故ならその作品は・・・過去の偉人の絵画の“贋作”、つまり模写であったからだ。


私の作品ではない。私を見ていない。


しかし、生活の為に、同じ手段で金を稼ぐしかなかった。


そこでやめておけば良かった。

才能がないと思って、消えていれば良かった。


しかし、プライドが高かった私はその後・・・禁忌を犯した。

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