リサイクルの神獣~ギルドを追放されたゴミ処理冒険者に神獣の子育てを押し付けられてしまったのですべてリサイクルで済ませようと思う~

紙村 滝

第1話 発端

「遅ぉい!さっさと片付けろ、ガーベッジ!」


「すいません!ただ今!」


「おまえが居ていい場所じゃないんだよ”ゴミ取り”!」


冒険者ギルドが仕事終わりの冒険者たちで大盛況の夜、俺、レン・ガーベッジは彼らがそこら中に捨てていくごみを拾い集めていた。背中にギルドマスターの怒声を背負い鼠のように駆け回る。


「こんな仕事やめてやる、、」


「口動かす暇があるんだったら手ぇ動かせぇ!」


 俺は腹の中から湧き出してきた退職願の音声を喉奥で打ち返して、


「すいません、すいません、、」


 と、もはや形だけとなった謝罪を整列させていた。


「解体場、回収終わりました!」


「次バーの店内!」


 そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか。


 バーへ向かうと嗅ぎ慣れた酒と油の濃厚なにおいがまとわりついてくる。

俺は冒険者ギルドで冒険者として働いている。はずだった。


 齢12歳にしてその後の”天職”が決められるこの世において唯一転職ができるのが俺ら冒険者だ。天職に飽きた、名誉が得たい、金が欲しい。

様々な希望を持った者が集い、町の防衛からダンジョン開拓までこなす誰でも頑張りしだいで富貴になれる職業。


 そんな夢のような職だと思っていた。しかしふたを開けてみれば俺のような職業の者たちに回ってくるのは依頼という名の本職と何一つ変わらない仕事のみ。給料だって一日黒パン3つがせいぜい買える程度。


 割に合わない。


 そのくせ仕事量は多いし辞めようと思っても辞職費とかいう意味わからない金が必要なため辞められない。


「まだ半分も終わってねぇぞ!ボケっとするな!」


 またギルドマスターの声が刺さる。俺を貫通したその声が冒険者たちの嘲笑の弾幕の誘導弾となって俺の存在を一層みじめなものにしようとしているようだ。


 不満を顔をしかめるだけにとどめて、軽く百人はいるだろう人ゴミの中を足を踏まれ、膝を蹴られ、悪態をつかれながら駆け回り割れた酒瓶や紙くず、鏡をゴミ箱から取り出し、


「ん?鏡?」


 思わず腕に下げた回収袋から取り出す。


 上質な木材と金で装飾されていてまるで宮殿を縮小したかのような豪華な鏡で、とてもゴミとは思えない。よく磨かれた鏡面に映る顔にもはてなマークが刻まれていた。落とし物かと周りを見渡すが、大騒ぎしているだけで誰も何かを探している様子はない。


 なら落とし物か、とギルドマスターに届けようとバーの奥に向かおうとした矢先、


「おぉ~っと、手が滑った~」


 悪意濃縮100パーセントの声と共に俺の頭に降ってきたのはキンキンに冷えた液体だった。


スゥ…


 まず落ち着け、怒るなよ。息を吸い込んだ拍子に口に入った雫で頭の中で何かが弾けた。


酒じゃんこれ…


──────────────────────────────────────

カクヨムコンに向けて新作を投稿してます。ぜひそちらもお読みください!


タイトルは「魔道整備士のアップデート~研究所の実験動物にされた俺は『自動更新』で成り上がる~」です!


URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330649688753719/episodes/16817330649728710012

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る